魔界事変40 『千里眼』
・・・パンデモニウムって事は・・・ここから東か!
東の方角へ目線を向け、遠くに、遠くに意識を集中させると、視界にはパンデモニウムのある巨大な島が飛び込んできた。流石に町中までは見ることが出来ない。熱感知もこれだけ人口の多い場所では何の意味もなさないから、沿岸部を探してみる。しかしどこにも人の反応はそこには無い。
だがここで諦める私ではない。シェラはそう意気込んで、今度は少しずつ索敵範囲を縮めながら条件にあった存在を探し始めた。
―いない。いない。ここにもいない。
視界はついにカレキの森の外部の方まで戻ってきてしまった。
顔を前後左右、東西南北に動かしながら、懇切丁寧に、じっくりと周囲を探索する。どこにもいない、そう諦めかけた瞬間―
・・・いた!!緑がかった黒髪に片方の欠けた二本角!
場所はカレキ・・の森の・・外辺・・・の・・・川辺・・・
・・・こりゃひどい・・・状態だ。身ぐるみは全部はがされていて、全身には深い傷・・・特に脇腹の損傷がひどい・・・それになんだ、この全身を覆う真っ黒な痣は?
―・・・おい!大・・・か!?―
―・・・をして・・・ぞ!―
・・・体を激しく揺さぶられ、千里眼が解けてしまった。しかし、結果的にそれは自分の命を救うことになった。
激しい咳込みとともに、集中させていた意識が元の状態に戻った。
「・・・はぁっ・・・はあっ・・・」
『大丈夫カお前!息ハちゃんとしろヨ!』
叱りつけるような語調で、背中をさすってきた。この紫色の髪のやつはそれほど悪いやつじゃないのかも知れない。
「す・・・すいません・・・さっき教えてくれた見た目の人を見つけました・・・」
『どこダ!?どこニいる!?』
「・・・この方角から少し先・・・この森を出た先にある川辺です・・・」
シェラは息絶え絶えになりながら、そのウィレムの姿のあった方角を指差した。
『お前ニ感謝するゾ、一ツ目。ありがとう。』
感謝の言葉を口にしているが、目線は先程指差した方向をまっすぐ見据えている。
「あっ・・・でも彼は・・
そう言いかけたが、続きは言わなかった。言えなかった。ジーナはそれを全く気にせず、川辺の方へ走り出した。




