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ようこそ!異世界カフェへ! ~迷える彼女たちの居場所探し~  作者: はひなひは


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1/7

ようこそ!異世界カフェへ!

 俺の名前は堂本誠。

 コーヒーが好きな俺は、都内某所で夢だった喫茶店を開店した。

 しかし、現実は甘くなかった。落ち着いた雰囲気にうまいコーヒーだけでは客入りも少なく、赤字続きで経営は火の車だった。

(このままじゃ、来月の家賃で限界か……)

 店のカウンターで突っ伏していた俺に、妹のメイが話しかけてきた。


「お兄ちゃん。諦める前に、私の企画をやってみない?」


 そう言って、一枚の企画書を渡してきた。

 妹のメイは、本当に俺と同じ遺伝子なのかと疑うくらいの美少女だったりする。サラ艶な黒髪ロングにつぶらな黒い瞳、まるで何かのヒロインみたいなビジュアルだ。


「いやいやいや、お前なぁ。現実は甘くないんだぞ」


 ちなみに俺は、極道の人と間違われるくらいの強面だった。同じ黒髪でも天然のパンチパーマ、つり目の上に、眉間にシワを寄せるのが癖で、眼光が鋭くなってしまうのだ。


「まあまあまあ、とりあえず見てみてよ! 見るだけ!」


 ウインクをして指差してくる姿は、まるでラノベのキャラクターみたいだ。


「見るだけだぞ。ちょっと今は、余裕がないからな」


 そうぼやきつつも、メイの企画書を読んでみる。


「…………」「…………」


 内容を見て驚いた俺は、メイを見て、


「本気?」


「マジマジ。ちなみに、知り合いの可愛い子を、四人押さえてあるよ」


「本気かよ……」


「あとは、お兄ちゃんの覚悟だけだよ!」


 この時の俺は、まだ知らなかった。

 メイの企画を通した先に、あんな波乱の毎日が待っているなんて――



 そして、数か月後……。

 経営は好転した。今では、連日にぎわうカフェになっている。



 都内某所、雑居ビルの中にある、ちょっと変わったカフェ。

 その扉を開けると――


「「「「「ようこそ!異世界カフェへ!」」」」」


 個性的な美少女達が、”異世界”をイメージしたコンセプトカフェで、今日も元気に働いています。



☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆


 俺の店『異世界カフェ』は、”異世界”をイメージしたコンセプトカフェだ。

 “今月“のテーマは『エルフ』。

 森をイメージした空間造り、緑を基調にした妖精のような衣装、エルフ耳のカチューシャ、エルフっぽいドリンク&フードメニュー。

 うちの店は、毎月テーマを変えるという離れ業をやり、お客様が飽きない仕様にしている。月替わり戦略ってやつだ。

 恐らくこれが、SNSでの拡散率の増加や、リピート率の増加に寄与しているのは疑いようがないと思っている。

 しかし――

 この前の『企画会議』を思い出し、ため息が出てしまう。


(身体が重い。動くのが辛い。まさかカフェの中で、〇〇〇になるなんて……)


 ――どうしてこうなった?



☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆


 先月末に遡る――

 毎月恒例の『企画会議』が始まった。

 いつも会議は、チーフであるメイが司会・進行を行っている。


「みなさんお疲れ様です! それでは毎月恒例、来月のテーマは何にする? 会議を始めます!」


「はいっ!」


「はい、レンちゃん!」


「お腹が空きました!」


「我慢しなさい!」


「ぶぅ~」


(ほっぺを膨らまして、怒る子が実在してるううう!)


「はぁ~、しょうがないわね。お兄ちゃん、お願い」


「ナポリタンで良いか?」


「店長のナポリタン好きですぅ~」


 茶色の瞳をキラキラさせながら、満面の笑顔になったこの子は『山田レン』。

 元々は”食べてみた”系の配信者だった子だ。明るめの茶髪のゆるふわウェーブを躍らせながら俺のナポリタンを待っている。


「ほらよ」


 俺の得意料理、ナポリタンを置く。喫茶店と言えばナポリタンという固定概念から、これだけは自信があった。


「ありがとうございますぅ~」


(美味しそうに食べてくれて、俺も嬉しいぜ)


「会議に戻るわ。というか始まってないわね」


(頑張れメイ)


「では、いつも通り来月のテーマから決めていきます!」


「いいかな?」手を挙げてスッと高身長の彼女が立ち上がる。


「はい!ミウさん!」


「わたしはお姫様が良いなと」「ダメです」


 発言の途中でズバッと切られて、固まっているこの子は『平野ミウ』。

 歌劇団で男役をしていたが辞め、その後に声だけの配信をしていた子だ。


「ミウさんは、女性受けが良いから”姫”とかダメです。それに異世界のコンセプトと違うでしょ!」


「そんな~」


 落ち込み、うつむく姿もイケメンだった。

 金髪ショートを掻き上げて、蒼い瞳が俺を捉える。


「店長は見たいですよね!? わたしの姫姿!」


(俺に振るんじゃない。メイの視線が怖いんだよ!)


「お兄ちゃん?」


「あ~。とても見てみたいが、今じゃないな!」


「っ! そうですか……」


(あぁ、落ち込んじゃったよ。いつか姫役を押してあげるから許してね)

 俺は心で手を合わせた。


「他に意見はありますか?」


「はい! は~い!!」


「はい! リオちゃん!」


「私の方が年上なのに、なんでいつも”ちゃん”付け?」


 桃色の瞳をうるうるさせて、桃色のロングツインテールを両手でいじりだした。


(あらら。あの様子はだいぶ気にしてるぞ?)


「私はチーフですから」(だってリオちゃん、ちっちゃいから!)


(本音を目で、語ってるううう!)


「そ、そうね。私たち、大人なビジネスパートナーだもんね。仕方ないよね!」


(気付かずに、大人な対応されたと喜んでいるううう!)


 このちっちゃい子、ゲフンゲフン。この子は『佐久間リオ』。

 元Vチューバーだ。合法ロリと、お客様が言っていたのを聞いたことがある……。


「それで、リオちゃんの意見は?」


「そう、そうよ! 私、思ったの。異世界といえば、お姫様じゃない!?」


(あ、ミウが復活して目を輝かせてる)


「チッ! 話を聞いてなかったの? リ・オ・ちゃん?」


「え? 舌打ちした? メイちゃん目が怖いんだけど、ゴメンて、怒らないで?」


(あぁ、もっと小さくなっちゃった。ミウの目も、また暗くなっちゃったよ)


「まずみんな、人の話を聞きましょう。サエちゃんは意見ない?」


「わたくし? わたくしは何にでもなれるし、何者にもなれないですから」


「え~と、つまり?」


 サエは艶のある白髪ストレートミディアムをファサーっと掻き上げ、「お任せしますわ」と一言。


「…………」


(メイがちょっとイラっとしている)


 この不思議な感じの子は『道枝サエ』。

 すごい当たるって噂になった、元占い配信者だ。吸い込まれそうな赤眼で神秘的な雰囲気を出している子だ。

 

 メイが連れて来た面々はみんな個性的だけど、メイも含めて、全員が超絶美少女だ。カフェが繁盛するもう一つの要因は、この子たちだろう。


「ハァ。じゃあみんな意見ないってことかな?」


 レンがナポリタンを頬張りながら、手を挙げる。

 ちょっと期待したメイが、レンを指す。


「お! レンちゃん何? 何かアイデア浮かんだ?」


 モグモグゴックン。 「おかわりください!」


「もうっ! いい加減にしてーーーー!!」



☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆


 ちょっとイライラを蓄積しすぎたメイを、別室で落ち着かせて会議室へ戻る。

 レンはおかわりを食べ終わり、満足そうにしていた。


「悪いな、待たせた」「途中でごめんね」


「大丈夫です店長、メイちゃん」


 ナポリタンをいっぱい食べたレンは、やる気に満ちていたようで、


「特に意見が出ないなら、今までで一番集客出来たテーマにしませんか?」


(レンがすごくマトモな意見を言っている……)

 俺は素直に感心した。


「そうね、そうね。メイちゃん、何の企画が一番良かったの?」


(リオがノリで、すぐに乗っかった!)


「ちょっと待って下さいね。え~と、エルフですね」


「おお、エルフ。あれはみんな神秘的で可愛かったね。じゃあ、わたしは今回、精霊女王役にしよ」「ダメです」


(ミウがまた撃沈した〜!)


 ミウが俺を見てくるが。俺はゴメンと手を合わせた。


「配役は、前回と一緒にします!」


 前回『エルフ』でやった時は、メイとレンがエルフの民、ミウが精霊騎士でリオが精霊女王、サエは占い師だった。

(サエだけエルフ関係無い気がしたけど、受けてたなぁ)


「ちょっと待って! 私またあんな可愛らしい服を着るの嫌なんですけど! 騎士がやりたいわ! 騎士!」


(あ、ミウが嬉しそうにしてるけど。答えは分かるだろうに……)


「却下に決まってるでしょうが! 誰がリオちゃんが着た小さいサイズ着れるのよ? 逆もそう、ミウさんとじゃサイズが違い過ぎるでしょ? 衣装は値段が高いんだから、無理です!」


 二人一緒に、うつむいてしまった。

(ドンマイ!)


「来月のテーマは『エルフ』。詳細を詰めていきましょう」


 サエがホワイトボードに、スラスラと書いていく。


(えっ! いつから書記をやってたの!?)

 俺はマジで驚いていた。


「ありがとうサエちゃん。衣装は良いし、内装や小道具も平気よね。あとは何かあるかしら?」


「ウィッグとかエルフ耳カチューシャもあるし。前と同じなら、何もいらない?」


「……同じテーマ。以前と変わらない。変化しないなんて、わたくしたちらしいのかしら?」


 サエの一言に、全員がハッとなる。


 俺はすかさず、

「あんまり金の余裕はねーぞ」


「分かってるよ、お兄ちゃん。でも、サエちゃんの言う通りだよ。私たちの強みは個性。そんな私たちが、前回と全部一緒なんて、あり得ない!」


 俺以外が、うんうんと頷いている。


「じゃあ、どうするぅ? メニューにナポリタンを足す?」


「それはレンちゃんが食べたいだけでしょ! エルフにナポリタンは無いでしょ!」


「残念ですぅ。じゃあ金色のパスタで、エルフ髪パスタ!」


「そんなの食べたくないよ!?」


「だよねぇ。あたしも想像したけど、食レポ無理って思った」


(なら言うなやっ!)


「いっその事、みんなエルフの姫にす」「諦めなさい」


(どれだけ姫がしたいんだ、ミウよ)


「はい! はーい!」「今度は何!? 真面目にやって!!」


 リオが涙目になる。

 俺はメイの肩を、「落ち着け」と言って叩く。


「ごめん、リオちゃん。何? 言ってみて」


「うぅ。店長にも、コスさせたらどうかな?」


「「「「……………」」」」


「「「それだっ!!」」」


(それだ! じゃねーし!!)



☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆


 そして冒頭へ戻り――


「店長〜、チェキ撮るから来て〜」 カシャ!


「店長〜、一緒に撮るよぉ」 カシャ!


「あそこで撮影すると……、明日運命の人に……会う確率が50%になる……」


(それは占いなのか? サエよ)


 今月の『エルフ』企画で最もチェキに写ったのは俺だった。まあ誰か他のスタッフと一緒だが。


「お兄。店長〜、チェキるから来て〜」


 俺はため息をついた後に、身体を持ち上げようと最大限の力を入れる。

(うおおおおお!!)

 ギシギシと身体が悲鳴を上げるが、何とか立ち上がって、ズンズンと移動する。

 周りのお客様も、おお〜と言って俺に注目する。


「店長!ナイスな“世界樹“だねっ!」


 そう、俺は“世界樹“にされていた。


(どうして! こうなった〜〜!!)


 俺は今日も『異世界カフェ』で立派な“世界樹“をしています――



 これは、俺と彼女たちが、この『異世界カフェ』を自分たちの居場所だと、

 そう思えるようになるまでの物語――



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