王子、ついに魔法を習う
上級戦闘術の授業で絞られた俺達は休み時間に少し喋った。
ソウとシャナは見た目がガチな戦士タイプで友達になれなそうと思っていたが、話してみると歳相応のいい奴らだった。
「いやぁ、俺は剣の国の出身なんだけど、ここまで太刀打ちできなかったのは初めてだ。正直少しへこんだよ。」
ソウはトレードマークの坊主を撫でながら笑っている。
「ウチも獣族の戦士の家系で自信あったんだけどな。
ただウチはどっちかというとリックスの強さの方が、、、」
少し露出が多い布地の服を着たシャナは明らかに悔しそうだった。
女性免疫を鬼に奪われた俺は少し目のやりどころに困るのでシャナのことは出来るだけ見ないようにしている。
俺たちはまたこのクラスでの再会を誓ってそれぞれ別の授業に向かった。
次の授業は俺は初級魔術、ソウは集団戦術初級、シャナは算術。
カイルはなんと上級魔術だ。
やはりこの男はエリートだった。
初級魔術の授業は一年生で溢れかえっていた。
この授業は魔法の基礎を教える。
そして中級と上級になるとそれぞれの属性専門の応用の授業となる。
なので初級魔術の授業は全属性がいるのでとにかく人が多い。
ぐるっと一周見回すと、薔薇組にいた真っ黒のゴーグルの神経質そうな坊ちゃん刈りがいた。
話しかけるなオーラを出されている気がするが、さっきのソウとシャナの件もあったし、人は見かけによらぬものだ。話かけてみよう。
「君、薔薇組だよね?」
「そうだけど、今はあまり人と関わりたくないのだよ。悪いね。」
なんかこいつやっぱりヤバイな、、、
「そっか。話すのとか苦手かな?邪魔したね!」
「あぁ、すまんのだよ。」
こんな感じで坊ちゃん刈りとの気まずい関係が始まった。
少し待っていると初級の授業が始まった。
担当は見たことない先生でメガネでパーマをかけた中年の太った女性だ。
パスタを作るのが上手そうだ。
「みなさん。まずは魔法の種類を学びましょう。
みんなが憧れる凄腕魔法使いまでには学ぶことがいっぱいよ」
彼女は高い声で説明を続けた。
使える魔法は生まれながらにしてほぼ決まっているとのこと。
まず、詠唱型と無詠唱型で生まれつき適性が決まっており、基本的に両方は使えない。
詠唱型は詠唱内容を覚えられれば低威力から高威力の物まで、得意属性から不得意属性まで幅広く魔法を使えるが、発動まで時間がかかる。
無詠唱型は魔法を覚えるために感覚に頼るところが大きい。なので複雑な魔法は取得すら難しい。
基本は得意属性のみで戦う。
しかし発動までが早いので戦士向きと言われている。
それ以外にも距離で適性が決まっている。
射程が短いが魔力消費が少ない循環型。
射程が長く連射が得意だが中級以上の高威力が出にくい銃撃型。
高威力の魔法をつかえるが、連発ができない放出型。
そして魔法自体は
攻撃魔法
支援魔法
回復魔法に分かれる。
「我が国タイガルドでは小さい時に適性検査があるから、ほとんどの人は自分の適性が分かってるはずよ。
もし地方から来てて適正が分からない人は後で授業が終わったら私の所に来てちょうだい。」
その後すぐに授業が終わったので俺は適性を見てもらう為に先生の所に行った。
「今回はあなただけなのね。そこに立って。」
彼女は魔石が上に乗っている望遠鏡のようなもので俺を見ている。
「あなたは、、、循環型ね。
そして魔力の色からして無詠唱。
それにしても凄い魔力量ね。
じゃあ、次はこれを持って思いっきり力を入れてみて。
得意属性が分かるわよ。」
言われた通り渡された魔石を力を込めて握った。
すると手の隙間から黒い煙のような物が立ち昇った。
「えっ、、、初めて見たわ。
これは闇属性ね。
ユニークマジックの一種よ。本当に珍しい。
この道長いけど教え子で初めてよ。」
すると後ろからドタドタと坊ちゃん刈りのあいつが走って来てゴーグルを額まで上げてこっちを眺めて来た。彼の目は緑色に輝いている。
「面白い。闇属性の循環型。
そして魔力は量も柔軟性も申し分ない。」
ゴーグルを掛け直すと彼は俺の肩を持って詰め寄って来た。
「さっきはすまなかった。
あのホームルームの後、何百通りも計算したがファルス先生にはどうしても勝てなくてイライラしていたのだよ。
今は彼を倒す宿題しか興味なくてね。
単位の取りやすい初級ばかり履修していたところだったのだよ。
しかしやりたいことが見つかった。
僕と組んでファルス先生を倒そう。
さぁ、刺激的な学園生活になるのだよ。」
俺に変わった友達ができた。
彼はピーター=ファシウス。
魔眼を持った変わった奴だった。




