DAYS 8:スクールビギン(後編)
これから始まる学校生活に美月は胸を踊らせるのでした。物理的に。
クラス確認を終えた美月達は中等部に向かう陽と別れた後、昇降口の前で更に二組に分かれた。A~C組とD~E組では靴箱の場所が違うのである。太郎と静音も後半組だったらしく、あれだけたくさんいたメンバーが校舎に入った時には気付けば美月と旭のふたりだけになっていた。
二年生の教室は三階にあり、美月は旭に誘導されて階段を上っていく。途中すれ違う生徒達に彼は次々と声をかけられていった。旭は顔が広いらしい。
「おお……!」
教室に入った直後、彼女は思わず感嘆の声を漏らした。地元、長崎で通っていた学校とは様子が違うからであった。そこに並んでいたのは一般的な教室机ではなく、ディスプレイが埋め込まれた独特な物であった。
「な……何? パソコン室?」
「パソコン……まあパソコンだけど、何? 前の学校じゃこんなんじゃなかったの?」
呆然としている美月の問いに旭が返した。彼の方は彼女がこの光景に驚いている事に驚いている様だ。
「ESC……だったっけ……教育補助コンピューター」
「ES……何それ、何か凄そう」
「そーかそーか。んじゃ使い方教えてやるよ」
電子黒板(黒板がデジタルなのにも驚いた)に表示された座席表に従い美月が自分の席に腰を下ろすと、旭はその隣に立った。ちなみに彼女の出席番号は一番。窓際の最前列である。
「んーと、んじゃーまずは学生証を……」
話の途中で旭は口を止めた。
「はいはい学生証ね……? どうしたの」
「……いや、凄い眺めだなあと思って」
彼の瞳は無意識の内に机上に降臨していた胸部を捉えていた。気が付いた美月は赤面しながら両手で胸を隠す様に押さえる。
「叶君っていっつもそんな事ばっかり考えてるの……?」
「いや、それやると持ち上がってむしろ逆効果……あーごめん謝るから手は出さないで」
美月が右手を振り上げた所で旭は視線をディスプレイに移す。レクチャーが始まった。まったくもう……美月も手を下ろす。
「ここに電源ボタンがあるからまず起動して……で、ここに挿入口があるだろ? ここに学生証を入れる」
旭の指示通り彼女はコンピューターを立ち上げた後ICカードの学生証を差し込んだ。画面の真ん中に小さな丸がくるくると円を描く様に動き、少し経つとメニューが表示された。
「これでお前のアカウントでログイン完了だ。このはじっこにある『出席届け』押してみ……そうそう」
彼が指差したボタンをタッチする。再びロードし始め、その後「出席を確認しました」というメッセージが浮かび上がってきた。
「これで出席完了。登校したら毎日真っ先にこれやる事だな。8時15分にチャイムが鳴るから、それまでに出席を届け出てないと欠席扱いになるから気を付けろよ。訂正は後から出来んだけど処理がめんどいらしい」
「すっ……すごーい! 何このハイテク感! さすが福岡!」
「他にも、学校行事とか簡易的な連絡とかはこっちで閲覧出来るし、ネットも使えるから検索程度なら出来る様になってる」
「へー、便利だなあ」
それから彼女はESCの一通りの機能と使い方を教えてもらった。教科によっては問題が配信されているらしく、授業で時折こちらを使う場合があったり、生徒によっては自主学習に活用したりしているそうだ。
「んじゃ~ま、とりあえずこんなもんかな。校内は追々案内してきゃいいだろ」
小さく溜め息をつきながら旭は美月の隣の席に着いた。
「俺ここだから、何かわかんない事あったら聞いていいぜ」
「……」
「ん? どうした?」
「何か、悉く近いね」
「そうね……運命って奴? 前世で何かしら縁があったとか?」
「なっ!」
途端にまた顔が赤くなる美月。
「いや、あの、冗談だから」
やがてぞくぞくとクラスメイト達の入室が続き、チャイムが鳴るとすぐに担任の男性教師が現れた。彼の簡単な挨拶の最中、これから一年間共にする仲間の顔を彼女は教室をぐるりと見回して確認するのだった。
始業式と自己紹介を終え、正午過ぎには放課後を迎えた。旭に誘われ美月は学生食堂で昼食を取る事にした。早苗には彼から食事不要のメールを送るとの事であった。作ってもらっていた分は今夜にでも食べればいいだろう。陽を誘ってみたが彼は既に下校しているそうだった。
食事時故に食堂内は学生で賑わっていた。これから部活動に臨む前の腹ごなしをしている生徒が多いのだろう。職員の姿もちらほらと見える。
「みんなももう帰ってるのかな」
美月はタレのかかった大根おろしの乗るカツを一口、パクリと摘まむ。高カロリーだが記念すべき初日くらいいいかと和風おろしトンカツ定食にしたのだった。
「多分な。乙女はどうせ帰って執筆するだろうし……あ、萌々華は部活があるからそっち行ってんじゃねーのかな」
「部活……何の部活してるの?」
「ん? ……じゃあ暇なら部室棟に見学にでも行ってみるか?」
「そうだね……部活か……ついでにどんなのあるのか見てみたいし、ちょうどいいかも」
「よしきた」
旭は味噌汁をずずーと飲み干した。
その後、ふたりは校舎から少し離れた位置にある部室棟の前へと足を運んでいた。部室棟は隣接するふたつの建物から成り、それぞれ文化系、運動系に分かれて部が入っている様だ。旭が部室棟正面から見て左側の建物を指差す。文化系の方だ。
「えーっと、萌々華はこっちだな……ん?」
「いっちにっ、いっちにっ、いっちにっ……」
そこへちょうど右側の運動部室棟からランニングを始めたラグビー部員達がやってきた。
「おー旭」
部員のひとりが群れから抜け出しふたりの前で足踏みに切り替えた。他の部員達は彼を無視し規則正しい掛け声と共にグラウンドへと向かっていく。彼はある程度の自由が許されている身分らしい。
「おっす滝川」
「どうした? お前がこんなとこに来るなんて珍しいな」
旭は部活に入っていないのだ。彼は美月を親指で指す。
「こっちが見学にね」
「お? ……おおっ……!」
筋骨隆々のラグビー部員と美月は目が合った。瞬間。
「ムフーッ!」
ラグビー部員の男子の鼻息が突然荒くなる。彼女は身の危険を感じ反射的に旭の後ろに隠れた。
「な……何か変な気を感じるんだけど……」
「あ、こ、これは失礼! ど、どーぞラグビー部ならただいま絶賛練習中ですので是非見ていって下さい! そしてあわよくばマネージャーに……!」
旭の背中から顔を覗かせていた美月にラグビー部員は蒸気機関の様に鼻を鳴らしながらぐいと顔を近付けてくる。冷や汗を垂らしながら彼女はとっさに反対側に顔を移すが、彼もその動きに付いてくる。
「あ、あの、近いです」
首をひょこひょこ左右に動かしながら苦言を呈する美月。
「ムフッ! よろしくお願いします! 男臭い所ですが!」
人の話を聞いちゃいねえ。彼も動きを合わせてくる。
「いや、あの、わ、悪いけどラグビーには興味無いので……」
サッ。サッ。サッ。
「いえいえ! マネージャーにラグビーの知識なんて必要ありませんから(んな訳あるか)!」
サッ。サッ。サッ。
「人を挟んで遊ばないでくれるかな」
「う~……運動部には入る気ありません‼」
サッ。サッ。サッ。
「ムフッ!? そんなっ!?」
サッ。サッ。カチーン!
ラグビー部員の動きが止まった。
「今だ! 逃げよう叶君!」
旭の手を無理矢理引っ張り彼女は文化部室棟へとそそくさと逃げた。遠ざかっていくラグビー部員が悔しそうに歯を軋ませている。
「ああっ! 旭! お前女子と手を繋ぐとはあっ!!」
「いやこれ繋いでるんじゃなくて掴まれてるんだけどね」
「はあーっ、はあーっ、はあーっ、あ……危なかった……!」
「随分必死だな、お前」
「漫才研究会……?」
貼り紙を見て美月が呟き終えると同時に旭が勢いよくドアを開けた。叶荘とは違って滑らかな動きだ。
「ちわ~っす」
「!」
部室内にいた生徒達が彼の声に反応し、一斉にふたりの方に振り向く。最奥には萌々華の姿があった。ふたりと目が合ってから彼女は演技臭く声を上げる。
「何奴!」
「見学に来たぜ、萌々華」
「ええい、不法侵入者め! 者共、出会え出会え~!」
萌々華の可愛らしい号令で部員達はすぐに美月達を取り囲んだ。
「えっ……萌々華ちゃん何これ、何で時代劇……?」
「御用改めである! 引っ捕らえろおおっ!」
戸惑う美月を無視して演技を続ける萌々華。しかし時代劇風なのは確かだろうが、萌々華の台詞から彼女の設定が定まっていない様子が窺える。
「うおおおお」
ひとりの男子部員がわざとらしく叫びながら名札を持った手で旭に殴りかかる仕草を始めた。
「ん?」
旭は少しも動揺せずに「手」でその腕を「掴ん」だ。男子部員は摩訶不思議な現象に驚き目を丸くする。
「なっ……何だこれ……腕が全く動かねえ……!」
「はいカットカ~ット!」
すると演技をやめたのか、萌々華が突然手を叩く。一同は彼女に注目した。
「……」
彼女は数秒間目を閉じた後、
「何やねんこれ!」
くわっと見開き一喝した。
「どいつもこいつもただただ流れに任せて動くだけ! そないやったら何の笑いも生まれへんで‼」
「あの……萌々華ちゃん?」
「ええか!? 笑いっちゅうんはな、勝手に出てくるもんちゃうねん! 自分から動かへんとあかんねん! はい今大事な事言うたでー、テスト出るさかいなー」
部員達は次々とメモを取り始める。
「何でやねん! 今ツッコミ所いくつかあったやん! 何で時代劇やねんとか! 設定ふらふらやんとか!! それ刀やのーてたなかやんけとか!!! 自分らに言うとんのやで、旭! 美月!」
「は、はい……!?」
美月は思わず返事をする。
「や、で、でもちゃんとツッコんだじゃん、何で時代劇? って……」
「声が小っちゃいんや! ツッコミは勢いが命やねんで!? もっと声張りー! 生き残れへんで!」
「どこで……?」
「せやから声や!」
「……」
ふと先ほど旭に向かってきた部員が手に持つ名札を見た。「田中」と書かれていた。
「自分らも自分らや!」
萌々華は今度は部員達に顔を向ける。
「ボサボサしとらんと、ちゃんとボケをしーや! ボケがあらへんとツッコミが出来へんねんで! 自分らでしっかりとボケを作り出さな! ……田中はあの数秒でよーやったな」
「ありがとうございます萌々華様!」
田中は深々とお辞儀をする。
「萌々華様……?」
「萌々華の親衛隊だな、あいつ。要はファンクラブだよ」
不思議に思う美月に旭がすかさず耳打ちする。
「ファンクラブ……まあ確かに、怒る姿も可愛い……」
「ええか? ボケとツッコミは互いが互いを必要としてんねん。ツッコミがあらへんとボケが死ぬし、ボケがあらへんとツッコミは生きられへんねん。そういう思いやりから笑いは生まれるんやで……ふう……」
ホワイトボードの前をうろうろとしながら解説していた萌々華は表情を緩めてふたりに向き直った。
「で……どやった? 我が漫研の即興コント体験は」
「……凄いめんどくさかった……」
「……まあ初心者にはいきなりはキツかったな……ちゅう訳で見学やねんてな? 思う存分楽しませたるから遠慮無く見ていき? ……あれ」
萌々華が気付いた時、そこにはもうふたりの姿は無かった。
「よかったのか? すぐに出てきて」
「あ、うん……すっごい疲れたから……」
美月と旭は既に部室棟から立ち去り、帰路に就いていた。部活見学はまた今度でいいや……先ほどの即興コントを思い出し、美月は浅く息を吐く。気力がかなり持っていかれた……。
「にしても、今更だけどありがとなー、ウチに住んでくれてさ」
「え? ああ、うん……約束したし」
状況は状況であったが。
「いやあほんと助かったわ。トーゴ先輩といろは先輩が今年で卒業だからさー、来年はいよいよヤベーなって思ってたんだよ」
「ヤバいって……何が?」
そこで彼女は彼から共同住宅補助条例の話を聞いた。
「あー、なるほど……人数の都合で補助金が打ち切られるかもしれなかったと」
「そ。これでふたりが抜けても当面は大丈夫だ。いやー助かった助かった」
「……ねえ、叶君のご両親、どうしたの」
彼と出会ってからずっと気にはなっていたのだが、なかなか聞けずにいた事を美月は今この場で聞いてみた。
「死んだよ。地震で」
「地震……もしかして首都直下……?」
2088年1月11日、0時16分。元首都東京を襲った未曾有の大災害。首都移転のきっかけとなった歴史的震災。
「そ。俺ひとりだけ助かった。じっちゃんが命懸けで助けてくれたみたい」
……という事は叶君は、生後間も無い頃に両親を亡くしたのか……記憶なんてある訳無いだろう。普段はこんな明るい人だけど、私が経験した事の無い深い悲しみを味わっているのだ。
「父ちゃんが福岡で不動産賃貸しててさ、じっちゃんはそれを引き継ぐためにこっちに来たんだよ。父ちゃんの家族ももう誰もいなかったみたいだし……あ、じっちゃんは母ちゃんの父ちゃんね……ほんとは俺が諸々の権利は持ってるみたいなんだけど、とりあえず俺が成人するまではじっちゃんが代わりにあれこれやるんだって」
「じゃあ、叶君は将来玄さんからお仕事引き継ぐの?」
「うん、そのつもりだな。今もたまーーーに手伝いはしてるんだよ。お前らと初めて会ったの、あれ部屋の鍵を無くした人ん所にじっちゃんの代わりに鳥栖まで合い鍵を届けに行ってたんだ」
「へえ……だからあんなとこにいたのか……」
今思えば、あそこで出会った事が全ての始まりだった訳である。
「……叶荘は、父ちゃんと母ちゃんが残してくれたものだからさ……俺赤ん坊の時からあそこで色んな人達と暮らしてさ……だからあそこだけは、何が何でも守りたいんだよな……」
「……」
「だからさ、ほんとお前らには感謝してるよ。ありがとな」
へへ、と彼は屈託の無い笑顔を美月に向ける。それを見せられた彼女は何だか恥ずかしくなってつい顔を反らした。
「……だったら変な事するのやめてくれませんかね」
「いやー、そう言われてもわざとじゃねーし……」
「くっ……」
悪意が無いのがまた憎たらしい……。
「ん? お金……? はっ!」
旭の話がきっかけとなり重要な事を思い出した美月は足を止めた。
「どうした?」
「そ、そういえばバイトしろって言われてたんだった……! ぶ、部活はとりあえず後回しだ……!」
「ありゃりゃ」
叶荘に帰宅したのは午後二時過ぎだった。誰かの話し声が聞こえたのでふたりが食堂へ行ってみると、美月の知らない少女が座っていた。
「あら」
少女は早苗と玄十郎との談笑を中断し、現れた美月達に目をやる。幼さを感じさせるボブカットの髪が印象的だが、顔付きはどこか大人びて見えた。
「初めまして」
「あ……初めまして」
「おっ、お帰りいろは先輩」
「いろは先輩? この人が?」
「何? もしかして新しい人?」
「あっ、201に引っ越してきた浅倉美月です。よろしくお願いします」
「お~っ、じゃああなたが陽君が言ってたお姉ちゃん……後輩ちゃんか~……おうふっ!」
いろははどことは言わないが美月の胸部を見て絶句する。
「こ、後輩ちゃんか……」
白目を剥いて復唱した。
「……まったく不敬な胸だな」
ぽつりとこぼした旭にとりあえずビンタ。いろはは咳払いして仕切り直す。
「ごほんっ。あたしは中西いろは。よろしくね美月ちゃん」
「はい、よろしくお願いします」
「ふあ~あ……」
そこに欠伸をかきながら桐悟が入ってきた。今起床したのだろうか。長い髪は垂らしっ放しでボサボサだ。
「おはよーさん」
「せっ、先輩……まさか今起きたんですか?」
「ん? 1時間くらい前に起きてごろごろしてた」
「へーえ……随分とお早いお目覚めね」
突如機嫌が悪い口ぶりで嫌味そうにいろはが言った。
「げっ……いろは! お前今日帰ってきてたのか……!」
居心地が悪くなったのか、くるりと踵を返そうとする桐悟を彼女は即座に呼び止める。
「待ちなさい!」
「はいっ!」
桐悟の背筋がピンと伸びた。
「あんたねえ……! 去年出席日数ギリギリで進級危なかったの忘れたの!?」
「なっ! 忘れる訳ねえだろ! おかげでギリギリ卒業出来る日数がわかったんだから今年はちゃんと計画的にサボってんだよ!!」
ディス・イズ・逆ギレ。
「サボるなあっ! そこに居直りなさい!!」
机をバンと叩いて彼女は立ち上がった。ギシギシと軋む音が鳴る。
「あの先輩、古いんであんまり乱暴に扱わないで下さい」
旭の言葉など聞こえずにいろはは桐悟の元へ行き、説教を始めた。桐悟はその場に正座し黙って俯くしか出来ないのだった。
「ガミガミガミガミ!」
「……仲悪いの、このふたり……?」
「いやいや、むしろその逆だよ」
「ははあ……」
美月は改めてふたりを見た。完全に子を叱りつける親である。
「ガミガミガミガミ!」
「いろは先輩はみんなのまとめ役だからな」
何となく気まずいので、ふたりはそろりと食堂を出た。
その夜、入浴を終えた美月は脱衣場でハンカチを見付けた。いろはと入れ違いだったのでもしかしたら彼女の物かもしれないと思い彼女の部屋を訪ねる事にした。大阪の土産のお菓子も貰ったし、改めてお礼を言ってもいいだろう。
206号室の前に着き、扉をノックするが返事は無い。
「いろはせんぱ~い」
今度は呼び掛けてみるがまたしても反応は無かった。
「……あれ? 開いてる……」
ノブに手をかけ引いてみると扉はぎいと音を立てて開いた。隙間から覗き込んでみる。
「いろはせんぱ~い……います? ……!?」
「イヤーッ!! ジョーく~ん!!」
いろはは法被を羽織って甲高い声を上げていた。額には鉢巻きを巻き、両手にはスティックが握られている。テレビに熱中している様だった。
「キャ~ッ!! こっち! こっち向いて~~~!!」
「あ、あの、先輩……」
まだ美月に気付かない。
「L! O! V! E! トッキメキ~~!!」
彼女は一生懸命画面に声援を送っていた。どうやらコンサートの映像を見ているらしい。
「先輩……? せんぱ~い……!」
「ジョー君! こっち! こっちにも手え振ってえ~~!! ……ん? っ!!!」
ようやくこちらを向き、夢中になっている様を見られていた事を理解したいろはは蛇に睨まれた蛙の様に固まった。
「あ、あの、ハンカチが脱衣場に忘れてあったからもしかしたら……って」
「あ、うん、それあたしの……そ、そこら辺置いといて……」
「は、はい」
「……………………見た?」
「は……はい」
「………………」
「………………」
「その、こ、これ、コンサート会場限定のビデオ・ディスクで……今回の大阪逃したら手に入らなくなっちゃう所だったんだ……」
「……」
美月は旭との会話を思い出していた。
『先輩は今遠征で留守にしてんだ』
『遠征? 部活の?』
『んー……まあ、そんな所かな』
遠征って……そういう事か……!
「あの、コンクールは……」
「もっ! もちろん出たわよ! コンサートがちょうど日程近かったから!!」
「……」
「……」
中西いろは。誠心学園高等部三年。演劇部員。そして……アイドルオタク。
Life goes on…next DAYS.
漫研はもう少しやるつもりだったんですけど、萌々華の話聞いてると思ったよりも疲れたので予定を変更して切り上げました。入浴シーン……そう簡単には見せません。




