ナイフの謎更に深まる
森の中は、木漏れ日があり想像していたより、明るい。
俺の中で森というと、日の光も入らず暗いイメージが有っただけに少し驚いてしまった。
しかし見事に木ばかりだ。
いや、森だから当たり前なんだけども。
残念なことに、目に入る限り道らしきものはない。
やはり、ここら辺には人が居ないと考えて良さそうだ。
とりあえず、それに関しては諦めよう。
近くに水は無さそうなので、どんどんと奥に進んで行く事にした。
元の砂浜に戻る必要があるかも知れないし、一応時々木に傷を付けておく。
森の奥に向かって、体感では一時間位歩いただろうか。
見事なまでに水が見つからない……。
だが代わりに食料を見つけた!
今目の前に、繁っている木には黄色の果実が沢山なっている。
一つの房に何本モノ黄色の果実……そうバナナだ!
パッと見た感じ何十本とバナナの木があるのが分かるので、当分はバナナだけでも過ごせるかも知れない。
……正直飽きそうだけど。
まぁ、最低限の食料は見つけたから良しとしよう。
問題は水だよな……。
「あっ、もしかしたら……」
ふと思い出したのは、バナナの木を切り、切り株をボウル状にくり貫けば水が沸いてくるという映像だ。
確実だったかは怪しいが、試してみる価値はあるだろう。
ただ手元にあるのは、果物ナイフのみというのが残念過ぎるが。
有るものでどうにかするしかないだろう……。
本当に面倒だが……。
黙々と、バナナの木を切っている。正確には削っているの方が適切な表現だろう。
削っている最中に、ナイフから音が鳴った。鉄同士をぶつけた時のような甲高い音だった。
この音には、聞き覚えがある。簡易靴を作っている最中にも聞こえた音と同一のようだ。
2度も同じ現象が起きた為、偶々鳴った音ではない可能性がある。
果物ナイフを確認してみるが、やはりヒビがあるわけではないようだ。
共振か何かだったのだろうか。
何が原因かがイマイチ分からないので、続けて削る作業を進める。
「ぁぁあああ!もう!」
木の1/5程を削り終わるも、切れ味も悪い果物ナイフで、作業も進まずにストレスが溜まっていく。
「そもそも、なんで!果物ナイフ何だよっ!!」
苛立ちから、地面にナイフを思いっきり叩き付ける。
叩き付けた時、また音が鳴った。無視をする。
「あぁっ!くそっ!せめて今だけでも斧に変わらねーがわぁっ!!」
思いがけず変な声が出た。『がわぁっ』ってなんだよ……。
原因は、いきなり体のバランスが右側にずれたからだ。
正確には右手に握られている『斧』にだ……。
また、いきなり現れた。
謎ばかり増えていくのは気のせいだろうか。