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襲撃

「隊長! 前方距離1000程に何かいます! 此方に向かって来てます!」

 御者をしている、アンとレイリィのうち、アンと思われる叫ぶような声が聞こえる。

 アンに関しては、兜を外さずに御者席に行ってしまい容姿はわからないが、高いソプラノのような声から女性だと推測する。



「馬車を止めろ! 魔獣の気配だ、対処するぞ!」

 横で寝ていた筈のガイが起き上がり、大きな声を張り上げた。

 程なく、馬車は止まり三人は外へと出ていった。

 慌てて俺も外へと出ていくと、背が高い葉の草原のようだ。

 今まで人が踏みしめて来たからなのか、馬車二つ分程の道には土しかない。


 馬車の前面に行くと、全員鎧兜を被っており、手にはランスと盾を装備している。

 その後ろ姿を見ていると、ガイが持っていたランスと盾が風景と同化して行くように消えていく。

 手をブラブラと振っているのを見ると、見えなくなったというよりは消えたのか?


「ふむ、どうやら見えるのは小型魔獣の狼系のようだな……」

「うえぇ、狼系ってことは群れですかー? あいつら数は多いし、連携してくるから面倒なんですけどー」

「そうっすねー」

 ガイの言葉に反応するように、レイルが愚痴を吐く。

 それに合わせるように、バリーも適当に返している。


「仕事だ仕事。って訳でレイルとバリーは俺と一緒に前衛だ。

 レイリィと、アンはジンの警護を頼む。

 ジン、馬車内に予備の武器があるから一応使ってくれ」

 ガイは言い終えるとレイルとバリーを連れて走りだした。

 まだ、姿形がよく見えない影に向かって行ったようだ。


「えーと……、隊長達が取りこぼした魔獣が此方に来る可能性があるので、武器だけは装備した方がいいと思うんですけど。

 何か心得はあったりしますか?」

 レイリィと思われる鎧姿が此方を向いて、話かけてきた。

 さて、これはどう答えたものだろうか。

 一応武器ならばスピアがあるのだが、呼び出すのを見せて良いものか判断が付かない。


 ガイは、王国に地球人が他にもいるとは言っていたが、物を出し入れすることに関しては言及していなかった。

 国賓扱いされていると言っていたので、国の上の奴らは知ってそうではある。

 そうであるならば、騎士達に知られた所で問題はないのか。


「いや、武器はあるから気にしないでくれ」

「……? 武器はあると言われても何も持ってはいないようですが……」

 レイリィが怪訝な表情で此方を見てくるのを横目に、ぽつりと小さく出ろの一言を呟く。


「これが俺の武器だ」

 右手に現れたスピアを見せると、鎧姿の二人から驚いたような声が漏れた。


「転移術ですか?」

「いえ、転移術は時間が掛かる筈です。珍しいですが、隊長と同じ不可視化の類いでしょうか」

 アンとレイリィが俺には分からない事を言っている。

 不可視化と言っているのは、先程ガイの武器が消えた現象の事だろう。


「悪いけど詮索はしないで貰えると助かる」

「ぇ、あ、はい。分かりました。

 それに今は警戒が先ですね。

 私は隊長と違って気配までは、わからないので周囲を警戒しましょう」

「えぇー、私は気になります!絶対後で聞きますからね!」

 レイリィは引き下がってくれたが、アンは引いてはくれないようだ。


 そんなアンの言葉は無視して、ガイ達が走り去った方向に視線を移す。

 およそ200m程先にガイ達と争う大きな黒い狼の姿が見える。

 見ていると三匹が此方に向かって来たのが分かった。

 どうやら二人も気付いたようで、二人は俺の前に立つ。


「危ないので、ジンさんは後ろにいてください」

 レイリィがそう言うと同時にアンが狼に向かって突撃していった。


 アンは、すぐ側まで寄ってきていた一匹目を盾で殴り付け、怯んだ所をランスで狼の頭を指し貫いた。

 アンが一匹目の対処を終えると、今度は二匹同時に襲いかかってくる。一匹は盾で殴り付けることに成功したが、もう一匹はアンの横をすり抜け、こちらに向かってくる。


 すり抜けてきた狼にランスを向けるレイリィは、一言呟く。


「ファイアボルト!」

 その一言と共に、ランスの先から炎の塊が狼に向け飛び出した。

 炎の塊は狼に当たるも、物理的に威力はないらしく、当たると同時に火の粉となり飛び散った。

 だが、火力はあったのだろう。狼は火傷を負ったようで、その場から動かずにもがき苦しんでいる。


「はぁっ!」

 そこに、二匹目の狼を倒したアンがやって来てランスでとどめを差した。


 二人であっという間に三匹を制圧してしまった。

 時間にして1分も掛かっていないだろう。

 二人が守ってくれたいるのなら、スピアを出す必要は無かったのかもしれない。


 そんな事を思っていたからだろうか。

 両脇の草むらが動き、狼達が現れた。数にして11匹。


「なっ!多すぎますよ!隊長達は何してるんですかぁ!」

「いえ、これは別動隊ですね。隊長達の方は囮かもしれません!」


 言葉が終わると同時に、狼達が襲ってきた。


 11匹の狼が全て俺に向かって。


「ふざけんな!あの自称神クソババアっ!!」


もしかしたら次回は土日になるかもしれません。

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