竜
申し訳ありません。
投稿ミスをしてしまいました。
ブックマークずれてしまうかもしれません。
耳を澄ませてみれば、先程見た方向から何やら音がした。
地図では、青い点が此方に向かっている。それを追うように赤い点が此方に向かっている……。
ーーあぁ、これはヤバイんじゃないか?
脳裏には、何とも言えない焦燥感。
「ちより!センを起こして石板の所まで下がれッ!
何か来るぞッ!」
「っえ!?あ、は、はい!」
ちよりの隣を横断して発した俺の叫びに、驚愕するも確りと認識出来たようだ。慌ててセンを起こしに向かうのを横目で見送り、赤い点--獣の進行方向に向けて走る。
後ろを振り返れば、約30メートル程の距離にある石板にセンとちよりが移動しているのが見えた。確りと退避出来たようだ。安全な
位置とは言えないが、危なくなればセンが逃がしてくれるだろう。
ちより達はこれでよしと判断し、前を向こうとした瞬間--身体が吹き飛ばされた。
宙を浮く身体--視線の先には自分が先程まで立っていた草原。草花が一方向に靡く様が目に入る。
宙を浮く身体--身体は回転し視線は山道の先に。目に入るは、天地逆転の人と獣……獣?
獣の定義とは何だ。
毛が生えている。四本歩行である。人間ではない。
あぁ、それならばアレは確かに獣だろう。
だが感情が警鐘を鳴らす。アレは獣なんてチャチなモノではない。
海獣・鳥獣・百獣・猛獣・野獣……あぁ、そうか。
『怪獣』--これ以上にピタリと当てはまる名称はないだろう。
人の身長の二倍はあろうかという、大きな口。開かれた口内には夥しい数の牙が覗く。
頭部はワニの様な形をしており鱗の様なものが浮き出ている。その一対の目は鋭く己が絶対的な捕食者であることを理解している。
頭部を支える巨大な胴体の先に続く尻尾。そして体を支える四肢には、余りにも鋭すぎる爪。
体全体に浮き出ている鱗から、お伽噺に出てくる竜が脳裏を過る。
宙を浮く身体--更に回転し、視線は石板に。目に入るのは倒れ込む姿勢で宙に止まる、センとちより。
宙に止まる。それはおかしい。
良く見れば、僅かながらに地面に向けて動いている。
ーーなんだこの現象は。
世界が停滞しているのか。いや違う。なら何故だ。
ーー身体は動くか。
握りこぶしを作る。結果は宙で傾きながらも指が僅かに動くだけ。
ーー視線はどうだ。
更に身体が傾き、指が更に閉じられる。視線は僅かにずれるのみ。
ーーこの現象は何だ。
記憶に覚えはない。知識を探る。探る。探る。
走馬灯、死に際、記憶の再現、一瞬、『脳の加速』。
思考速度の加速による、擬似的スローモーション。
考えが纏まる間も身体は傾き続けている。
思考速度が上がった所で、時間が止まることなど不可能。
ーー何故宙にいる。
分からない。『怪獣』。大きな口を開けていた。叫び。衝撃波。分からない。確認方法不明。
ーーこのままだとどうなる。
地面に激突。落ち所が悪ければ死ぬ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。ならどうする。
ーー地面に激突しなければいい。
瞬間。
世界の動きが速まる。否、元に戻ったと言うべきか。
手元に喚び出したのは、勝手したるジャベリン。
視界が廻る。いや、身体が回転している。
重力に導かれるままに全ての力をジャベリンに込め、地面に突き刺す。手元からミシリと嫌な音がした。
ついで、僅かな衝撃と共に地面に転がる身体。衝撃を無くす事は出来なかったが身体に問題はない。
起き上がり前を見れば、すぐ側にちよりとセン。どうやら石板まで飛ばされたようだ。
振り返れば、持ち手部分が折れたジャベリンが端から消えていく。
その先には、倒れた人--青年に向けて口を開く『怪獣』。
鮮血が舞う。青年の下半身が『怪獣』の口内で噛み締められた。青年の叫ぶ声が辺りに響き渡る。
それも束の間、上半身も口内へと追いやられてしまう。
最後に見えたのは、涙にまみれたぐちゃぐちゃの表情であった。
ーー瞬間、景色が変わった。
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なんでこんな事になったんだろう。
僕は竜の様な化物に追われながらも考える。
途中まで隣を歩いていた彼は竜との遭遇時何も出来ずに竜の口に消えていった。
僕は周囲に頭身大の空気人形をばら蒔くことで、必死に山頂まで逃げる事が出来た。だけどその瞬間大きな音が後ろから響いて吹き飛ばされた。
後ろを見れば先程の竜が口を開けていた。直ぐ様向き直り逃げようとすると、何故か口から叫び声を上げていた。
熱い、痛い、逃げなきゃ、動かない。
手を前に伸ばし少しでも前に……、人がいた。
助けて。
『生存者が揃いました。転送します』
その場には一匹の竜。そして石板の周囲では青白い燐光が妖しく揺らめいていた。
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