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4日目開始

「えっ!なんでっ!?」

 朝日が登る中、草原の中に女性の声が響き渡る。


 その音に反応し、起き上がると石板の前にセンがいるのが分かった。

 先程の声は、センから発生したものだろう。

 横を見れば鹿の毛皮に横たわるちよりの姿がある。ちよりも今の声で目が覚めたようで、目元を擦っていた。

 俺もいつの間にか寝ていたようだ。いつ寝たのかと昨夜の事を思い返す。



 昨夜は作製した竈で食事を済ませ、二人を先に寝かせた。

 俺は二人が寝た後、ステータスや地図を確認して警戒をしていた筈だ。

 未解放を上から順番に見ては、地図の赤い点が近寄って来ないかと交互に見ていたのは覚えている。山を昇った疲れが出たのか眠気と闘っている最中にセンと交替したのだろうか。眠気でイマイチ記憶が曖昧だがそんな気がする。


 ちよりが湖に顔を洗いに行くのを見送って、俺は声の発生源であるセンに近付き顔色を窺う。

 やはり俺と途中で代わったせいだろうか、顔色はあまり良くない。恐らくは睡眠不足だろう。やはり途中で交替したで正解のようだ。


「悪いセン、途中で交替したから眠いだろ?

 明るくなっちまったけど少し寝てくるといいよ」

 正直俺もまだ眠気はあるがセンよりは寝ていると思う為、交替を提案する。


 そんな俺の提案に対してセンは

「いや、寝てる場合じゃないって!」

 ほら!っと石板……いや宙にある地図向けて指指している。


 ほらって、どれだ?

 と疑問に思いながらも地図を覗いてみると、森の赤い点を指指しているようだ。だが特に異常らしきものは確認出来なかった。


「赤い点が多数集まってるだけで特に変わりがないんだけど……?」

「……ここに昨日は青い点があったんだよ」

 はっとしてもう一度地図を確認してみる。川を挟んで左側にあった青い点が消えていた。周辺を見るも影も形もない。……つまりは死。


 地図を見る限り獣に襲われたのだと思う。ウサギ、鹿、熊、俺が会った獣達も攻撃的だった。ウサギなんて小動物ですら、殺傷力が有るのだ。集団で襲われでもしたら命なんて幾らあっても足りない。

 そう考えると俺達は運が良かったのだろう。ここまで一匹ずつしか遭遇しなかったのだから……。


「おはようございます。

 どうかしたんですか?………あれ?」


 顔を洗いに行っていたちよりが戻って来たようだ。センも俺も地図の前から動かない為に不思議に思ったのだろう。

 俺達に向けて疑問を投げ掛けながらも、地図を覗き見てしまった。

 恐らく人が死んだことに気付いてしまったのだろう。


「この森の青い点、ここに向かっていませんか?」

 違ったようだ。

 ちよりは、川を挟んで右側の青い点を指している。確かに徐々に登っているようだ。俺達が眠っている間に動いたのか、既に山の中腹辺りまで来ている。ただ、真っ直ぐ進んでいる訳ではないようで、川の反対側に少しずれている。このまま進めば、もう一つの青い点と合流しそうだ。


 現在の青い点は、全部で5個。このまま合流して山頂に登ってくれれば、石板の謎も分かるかも知れない。

『生存者を集え』この島に来て初めて人の手が入っている石板。恐らくは拉致したものと、関係がないとは言えないだろう。まぁ、また不思議現象が起こる可能性も否定出来ないが……。



 地図を眺めているだけでは、どうしようもないと判断し朝食を取る事にした。センも寝ないと言うので三人で竈を囲む。

 昨夜二人が採取してきた、人参、馬鈴薯、大根などの野菜と薫製肉でちよりにスープを調理してもらう。

 野菜類は果実と違い見た目と中身が違うという事もなかった。ちより曰く野生種であるからか、苦味が有るものもあるが、味が濃く美味しいとの事だ。

 ……ちなみに野菜の味見はちよりにさせた。もし毒性があった場合全滅では助ける事も出来ないからだ。と自分に言い訳を重ねる。


 昨夜仕方なく作った器にスープを淹れて貰い、木製のスプーンを器に添えて渡された。昨夜の食事の時に必要だとの事で急遽作った物だが、手触りも滑らかで10分程で作製したものとは思えない。

 彫刻刀が出せるように成ったお陰で、木材の加工が一段と早く正確になったのが原因だろう。


 スープを食した後、デザート代わりに桃モドキを渡された。

 黄色い皮を剥き、果実を口に含んだところで右斜めにいるセンが桃モドキをくわえて此方を見ている事に気付く。

 何を思ったのか妖艶と言う言葉が合う表情で、桃モドキから口を離し舌を這わせ始めるセン。


「ッ!ブォッ!」

「わっっ、汚いよ!!」

 噎せた。おまけに口に含んでいた桃モドキがセンに向かって飛んで行ったようだ。難無く横に避けて此方に文句を言ってくる。


「何やってるんですか、ジンさん!」

「俺は悪くないんだけど……」

「む、いきなり口に含んだ食べ物を吹いたのはジンさんですよね!

 食べ物で遊んではイケないって事も分からないんですか!」

 いや、本当に俺が悪いんじゃないんだ……と口に出すも怒りが収まらないちより。


 センを見やれば、ニヤニヤと口元を歪めながら此方を見ている。

 あぁ、コイツ確信犯だ……。吹いた理由をちよりに言えるはずもない。そんな男心を分かっているのか、笑うだけでフォローをする気もないようだ。仕方無いと諦め、甘んじて説教を受ける事にした。



 体感で30分程の説教も終わり、ちよりから逃げるように地図の前に移動した。

 山の中腹付近に青い点が二つあるのを確認できた。どうやら無事合流出来たようだ。少しずつ此方に向かって来ているようなので太陽が真上に登る頃には着くだろう。

 少しはのんびり出来そうだと思うと、眠気が出てくる。睡眠不足もあり、昼寝をする事にした。



 呑気に構えていたのが駄目だったのだろうか。問題が起きた。


 太陽も既に真上に登り、地上を照らしている。

 直日の眩しさで目覚め、毛皮に横倒していた体を起き上がらせ周囲を見やる。

 隣にセン。竈前にはちよりがいる。眼前で何か操作するように手を動かしているのでステータスだろう。


 そろそろ二人が来ても良い頃合いだろうと、湖と反対側を見るも人の気配は一切ない。

 地図を確認しに行くと大変な変化があった。

 山頂から僅かな距離に、大きな赤い点。そしてその側には青い点が一つ。


 また一人消えてしまった。

お読みいただきましてありがとうございます。

次回話もよろしくお願いします。

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