ジャベリン強化
先程休憩を取ったばかりだが、ステータス確認がしたい為二人に休憩を申し出てみた。
二人とも了承してくれた為、俺は川辺で座り込む。
ちよりには駄目元で、黒熊の解体を頼んでみると嫌々ながらもやってくれる事になった。きっと先程ルビーを渡したのが良かったのだろう。
センはといえば、ちよりのお手伝いと称して解体の見学をするそうだ。
「開示」ステータスの解放済を確認する。
ソート機能で、最新順にしていくと先程見つけていた名前が並んでいく。音を聞いた記憶が無いが、恐らくは黒熊に投げている時にでも解放されたのだろう。
『スピアⅠ』
『ウォーサイスⅠ』
『フレイムジャベリンⅠ』
全てレベル付きだった。ジャベリンもレベルが上がることで強化されていたのでこれらも同じだと思う。
しかし、スピアとジャベリンは特に違いが分からないな。
試しに『スピアⅠ』の詳細を確認してみる。
表示されている画像は、ジャベリンと変わらないように見えた。よく見れば刃の反対側に円錐形の鉄が付いている。これは石突き部分だろう。
『特徴:切れ味上昇・動作性上昇・貫通能力上昇』
特徴を見るも、投擲能力上昇が無い事以外はまんまジャベリンであった……。
『動作性上昇:近接時最適な動作が行える』
特徴も確認していくと、思わぬ結果が出てきた。近接限定のようだ。
もしかしたらと思い、ジャベリンも確認してみると
『動作性上昇Ⅴ:投擲時最適な動作が行える』
此方は投擲限定だった。
同じ名称でも効果が違う事もあるようだ。何とも判りづらい。
『ウォーサイスⅠ』は、長めの棒の先に十字架のように剣先が飛び出ている。片方の刃は、内側に曲線を描くように伸びていた。画像の為ハッキリとした大きさは確認出来ないが、棒の長さから大鎌という物に分類されるだろう。
『特徴:切れ味上昇Ⅲ・動作性上昇』
特徴では、切れ味が初期からⅢとなっている以外は特筆すべき事も無かった。
一番の謎である『フレイムジャベリンⅠ』。
俺の知識では、この様な名称の武器は存在していないと訴えかけてくる。ジャベリンと記述されている為投げ槍の一種だと思う。
詳細を見るも表示されている画像はジャベリンと変わらない。
『特徴:切れ味上昇・動作性上昇・投擲能力上昇・炎熱化・炎熱無効』
『炎熱化:思考操作により刃の温度を上昇させることが可能』
『炎熱無効:外部からの炎熱に関する干渉を受けない』
……とんでもない特徴だった。
炎熱化は、内部に発火装置でも付いていると説明できるが。炎熱無効の干渉を受けないと云うのは物理法則にケンカを売っている。
直接的な炎はともかく、炎によって発生する上昇気流も無効化するのだろか?
メリットは槍が燃えない事くらいだし問題は無いか……。
ゲージは特に変化がないが、その下には今までにない記述があった。
『統合可能:統合先>ジャベリンⅤ』
統合?一つになるのか?試しに統合可能を押してみる。
押下すると新しい板が前面に出てきた。
『統合を開始します』
「なっ!確認表示もなしかよ!」
唐突に開始されてしまい焦ってしまう。
現代社会の知識では、確認画面が出てくるものだろうと判断していた。だが結果は使用者に優しくない設定だったようだ……。
『統合が完了しました』の文字に変化し、詳細画面が『ジャベリン Ⅴ』に切り替わった。
特徴に『炎熱化』『炎熱無効』が増えている。オマケにゲージが出現していた。これは再度レベルを上げれるようになったみたいだ。
特徴が移り、レベルが上げれるようになる。単純に考えてメリットしかないだろう。後々デメリットが出ないことを祈る。
調べる事はこれくらいかと、ステータスを閉じる直前に思い出す。
未解放を確認していなかった。
ソート機能で条件が解放されているもの順にして見ていく。
解放条件に『ジャベリンⅤ以上』の記述が増えているのを確認してステータスを閉じる。
数が多く面倒な為に、全てを見るのは暇な時にする事にした。
さて解体はどうなったのかと、ちよりに目を向けると以前見た薫製器が目に入ってきた。
どうやら長い間ステータスに没頭していたようだ。
隣ではセンが、ピアノ線を操り黒熊の残骸を手繰り寄せていた。
「何をやってるんだ?」
センに近付き声をかける。
「このまま放置するのは可愛そうだから、埋めてあげようと思って集めてるのー」
あぁ、失念していた。死体蹴りまでしてしまった罪悪感もあり手伝うことにした。
シャベルを呼び出し、森の付近にある土を掘る。センがピアノ線を巧みに操り穴の中に埋めていく。上から土を掛けると、黒熊の体積分盛り上がっているが確りと埋める事が出来た。
センと二人、川で手を洗う。横顔を覗いてみるが変化はない。恐らくは俺と同じ様に割り切れているのだろう。
世の中は弱肉強食。生きる為には奪わなければいけない。
現代人としては、ちよりの様の忌避感の方が勝るだろう。肉を食べているのに、屠殺は嫌だなんて大多数に登る。
だが現状ではそんな事を言ってれば死が先にある。
飢えて死ぬか、強者に食われるかの差はあるだろうが……結果は同じだ。
センはもちろん。環境に適応しようと、包丁を握るちよりも深層意識では理解をしているのだろう。
まぁ、当の本人は包丁を越えて現在薫製器を使用している辺り、適応力が早すぎる気もするが……。
それからさほど時間も掛からずに薫製が出来た為、薫製肉をセンのピアノ線で運んでもらい先を急ぐことにした。
数時間脚を動かし続けている内に、気付けば日が暮れてきてしまう。
「セン、まだ着かないのか?」
「あともう少しだよ!」
「それ、さっきも聞きましたよ……」
ここに来るまで何度も行った受け答えに、ちよりは泣きそうな声を上げている。
だが、ちよりに泣き言を言う資格はないと思う。現在進行形で俺の背中におんぶ状態のちよりには……。
身長が低いのが原因か、年齢が低く体力がないのが原因かは分からないが歩く速度が合わない為に疲れるのが早いのだ。
センのピアノ線で運んで貰いたかったが、薫製肉で場所が埋まっている為に仕方なく俺が背負っている。
「いやいや、今度は本当にもう少しだよ!
ほら、あそこまで行けば頂上だよ!」
進行方向に人差し指を向けるセン。
進行方向を見上げると、坂道が途切れていた。恐らくはそこが目的地なのだろう。
あと少しと云う事もあり、少々足早に歩みを続ける三人(一人は歩いていないが……)。
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