ナイフ検証結果
今左手には元々枝だった串を持ち、右手に『切り出し小刀』を持っている。
今の俺を客観的に見たら、死んだ魚のような目をしているのではないだろうか。
こうなったのは試し切りにとばかりに、枝を串にしようと考えたのだが原因だ。
今までの苦労は何だったのかと問いただしたいくらいに簡単に切れるのだ。
果物ナイフで黙々と切り出していた半分にも満たない時間で、角のない綺麗な串に切り出せたのだ。
発火装置の作成前に検証するべきだったと心の底から思う。
これから木材を削ることがあれば、『切り出し小刀』で決定だろう。
それに斧でも思ったのだが、自分の技術以上の結果が出ている。
果物ナイフで削り出した、自分の靴や発火装置を見れば一目瞭然だろう。
ハッキリ言って歪な形をしている。
串と一緒に並べて、同じ人物が作ったと言われて俺なら信じない。
恐らく技術力が向上する何かがあるのだろう。
ますます不気味な刃物である。
あと検証するべきことは、遠距離での出し入れか。
とりあえず、果物ナイフを出現させる。
試しに、竈の近くに置いて離れてみる。
距離にして10mと行ったところだろう。ナイフがある場所が日にあたっているのか光が反射しているのが視える。
ついでなので、砂浜での検証結果の裏付けもしてみる。
『ナイフ消えろ』声には出さずに考えてみる。
やはりというか、消えない。
これが成功してくれれば、俺の黒歴史が増えなくなるはずだったのだが世の中は甘くないようだ。
仕方ないと諦め、次を確かめよう。
「ナイフよ、消えろ」
竈付近の光の反射がなくなる。
これだと消えるようだ。
ここまでは、今まで通りだろう。
もう一度検証の為にと、ナイフを同じ位置に出そうとした。
「ナイフよ、出ろ……あれ?」
金属の甲高い音が足元から鳴っている。
結果として右手付近にナイフが出現し、キャッチする間もなく地面に落ちたのだ。
遠距離でも出せるだろうと考えていたので油断をしていた。
よくよく考えれば今まで一度も遠距離に出したことないというのに。
消せるなら出せると思い込んでいたようだ。
仕方ないのでナイフを手に取る。
もう一度試す為に竈付近に近寄り、地面にナイフを置く。
今度は更に距離を開けてみる。大体15メートル程だと思う。
さっきよりも竈が小さく見えるが、相変わらずナイフは光を反射している。
今度は言葉に出すのと、考えるのを一緒にしてみる。
「ナイフ」
『消えろ』を考えるだけにして、『ナイフ』だけを言葉に出してみた。
結果は何も変わらず。
最後のパターンである。
今行った事の単語を逆にするだけだ。
「消えろ」
言葉に出しながらも、頭では『ナイフ』のことを考える。
結果は……。
「……よしっ!」
成功である。
このあとも、火を付けることも忘れて日が暮れる寸前まで検証をしてしまう。
追加で分かったことは3点だ。
1つ目は、対象を考えずに『消えろ』と発現しただけでは消えることはないようだ。
2つ目は、距離は20メートル以上は確認をしていないが問題なく消える。
流石に獣の危険性もある為そこまで離れることはしたくない為。
ここまでにした。
3つ目は、消すために目視する必要はないようだ。
これは竈と反対側を向いて試してみたが問題なく消える。
もしかしたら距離の範囲内なら問題ないのかもしれない。
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次回話もよろしくお願いします。




