朝ごはん食べるでしゅ
ぱちぱちと火がはぜる音がする。
「ん~」
朝早く、ぼんやりと目を覚ますとなんかいい匂いがする。
耳にはぐつぐつという鍋の音。お鍋で何か煮炊きをしてる音だ。
そういえば、昨日綺麗なお兄さんを助けたんだった。
それを思い出してがばっと起きると、目に入ったのは勢いよく燃えてる焚火とお鍋。
「起きたか、ぼうず」
銀色の髪のカッコいいお兄さんが鍋を前に何か調理してた。
改めてその人をまじまじと見つめてしまった。
灰色がかった青い切れ長の目。形のいい口元に、流れるような銀色の髪を後ろで一つにくくっている。
背はとても高くて、しっかりと筋肉のある引き締まった体格。
うおお、かっこいいな!
お兄さんに見惚れて、ぼーっとしていると、彼の明るい声が聞こえる。
「ほら、ぼうず。朝飯だ」
「ごはん!」
温かい朝ごはん。とっても嬉しいよ。涙がこぼれそう・・・
「鍋は借りたぞ」
そう言って、彼が目の前に置いてくれたのは、何やらお粥のようなもの。
「・・・これ、何でしゅか?」
多分、怪訝な声が出てたと思う。
零れそうになってた涙が急に引っ込んだ。
なんていうか、見た目がオートミールっぽくて、なんか思ってたのと違う。
「カラスムギだ」
やっぱりオートミールだ。
一口食べて驚いた。オートミールを水で煮ただけ。 塩すら入ってない。
カサカサしててざらざらしてて口当たりも悪い。
不味・・・作ってくれた人に悪いので口には出さなかったけど、控えめに言っても、これが食べ物とは思えない。
ねえ、これって美味しいの?
多分、変な顔をしていたんだと思う。
「なんだ、食べないのか?」
お兄さんは不思議そうな顔をしてこちらを見ながら、普通にそれを口に運んでいた。
異世界の人って味覚が違うの? エルマおばあちゃんの味覚は別に普通だったよねえ。
「えっと・・・」
せっかく作ってくれたものを、まずいとは言えない。
「えっと、果物も食べるでしゅ。あとパンも!」
ちょっと話を逸らすようにして、マンゴもどきを切り出して、エルマおばあちゃんのパンも熊さんリュックから出す。
「どうじょ。これも食べるでしゅ」
そう言ってお兄さんと一緒の朝ごはん。
食べ終わると、お茶まで入れてくれた。
「それで・・・だ。ぼうず、どうしてこんな所にいる?」
来たよ。そう聞かれると思った。もうこの洞窟にいる以上、嘘はつけないし、なんとなくこの人なら本当のことを離しても大丈夫な気がする。
でも「ぼうず」じゃないんだけどな、と思いながらも、そこはあえて訂正しないで会話を続ける。
「えと、わかんないでしゅ」
そう言って頭の後ろにある大きなタンコブを見せた。
お兄さんは髪の毛をかき分けて、それを丁寧に見てくれた。
「あー、頭を打ったか」
「あい」
「名前は憶えてるか?」
心配そうに聞くお兄さんに、とりあえずそこは胸を張って言った。
とりあえず、名前だけは憶えているからね!
「エリスでしゅ。エリスって言いましゅ」
「そうか、エリスか」
「お兄さんのお名前はなんでしゅか?」
「俺はルーファスっていう。よろしくな」
「るーふぁしゅ」
「そうだな」
まだ上手に発音できないみたいで、お兄さん、もといルーファスは苦笑いしていた。
一緒にお茶をすすりながら、一通りの身の上話をルーファスにした。
気がついたら洞窟にいたこと。
一人でご飯(果物)を食べ、水を入手したこと。
エルマおばあちゃんのこと。
そして、ずーっと待ってたのに誰も迎えに来なかったこと。
ルーファスは自分の話をずっと聞きつつ、一言も言葉を遮らずにじっと聞いていてくれた。
そして拙い言葉で一通り説明が終わってからも、ルーファスは何も言わずに少し何か考えているようだった。
「なあ、ぼうず」
「エリスでしゅ」
ぼうずじゃないんだけどなーと思いながらもじっとルーファスを見ると、彼はこの洞窟で一人でいるには限界があることを話し、冬が来た時には幼児一人ではここで暮らせないだろうとも言った。
「エリス。俺と一緒に来るか?」
本当にいいのだろか?
こんな幼児を連れていってくれるのだろうか?
そんな疑問が顔に出ていたのだろう。
「心配するな。俺が全部面倒を見てやる」
朴訥な話し方だったけど、信頼できるとなんとなく思ってしまった。
「本当にいいでしゅか?本当に?」
おずおずと顔色を伺うように言えば、ルーファスの形のいい口元にふと笑みがこぼれた。
その笑顔が素敵すぎてまぶしい。
「俺にまかせろ。悪いようにはしない」
ルーファスが何をしてる人なのか、どんな人なのかはわからないけど、どんっと構えたような物言いがとても頼りになりそう。この人なら本当に悪いようにはしないはずだ。
「うん・・・いや、はい。お願いしましゅ」
そう言って差し出した手をルーファスは握って握手してくれた。
「よし、そうと決まればここを出発だ」
この近くに宿を借りているとルーファスはいう。
体調も昨日よりは少し良くなっているみたいで、顔色も少しましになっていた。
こうやって私の洞窟生活は終わりを告げたのである。
ちなみにオートミールは半分残しました(涙




