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魔道師長のまかない係 ~身寄りのない幼児だけどがんばって美味しいご飯つくりましゅ!~  作者: 中村まり


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9/9

朝ごはん食べるでしゅ

ぱちぱちと火がはぜる音がする。

「ん~」


朝早く、ぼんやりと目を覚ますとなんかいい匂いがする。

耳にはぐつぐつという鍋の音。お鍋で何か煮炊きをしてる音だ。

そういえば、昨日綺麗なお兄さんを助けたんだった。


それを思い出してがばっと起きると、目に入ったのは勢いよく燃えてる焚火とお鍋。


「起きたか、ぼうず」


銀色の髪のカッコいいお兄さんが鍋を前に何か調理してた。

改めてその人をまじまじと見つめてしまった。


灰色がかった青い切れ長の目。形のいい口元に、流れるような銀色の髪を後ろで一つにくくっている。

背はとても高くて、しっかりと筋肉のある引き締まった体格。


うおお、かっこいいな!


お兄さんに見惚れて、ぼーっとしていると、彼の明るい声が聞こえる。


「ほら、ぼうず。朝飯だ」

「ごはん!」


温かい朝ごはん。とっても嬉しいよ。涙がこぼれそう・・・


「鍋は借りたぞ」


そう言って、彼が目の前に置いてくれたのは、何やらお粥のようなもの。


「・・・これ、何でしゅか?」


多分、怪訝な声が出てたと思う。

(こぼ)れそうになってた涙が急に引っ込んだ。


なんていうか、見た目がオートミールっぽくて、なんか思ってたのと違う。


「カラスムギだ」


やっぱりオートミールだ。

一口食べて驚いた。オートミールを水で煮ただけ。 塩すら入ってない。

カサカサしててざらざらしてて口当たりも悪い。


不味(まず)・・・作ってくれた人に悪いので口には出さなかったけど、控えめに言っても、これが食べ物とは思えない。


ねえ、これって美味しいの?

多分、変な顔をしていたんだと思う。


「なんだ、食べないのか?」


お兄さんは不思議そうな顔をしてこちらを見ながら、普通にそれを口に運んでいた。

異世界の人って味覚が違うの? エルマおばあちゃんの味覚は別に普通だったよねえ。


「えっと・・・」


せっかく作ってくれたものを、まずいとは言えない。


「えっと、果物も食べるでしゅ。あとパンも!」


ちょっと話を逸らすようにして、マンゴもどきを切り出して、エルマおばあちゃんのパンも熊さんリュックから出す。


「どうじょ。これも食べるでしゅ」


そう言ってお兄さんと一緒の朝ごはん。

食べ終わると、お茶まで入れてくれた。


「それで・・・だ。ぼうず、どうしてこんな所にいる?」


来たよ。そう聞かれると思った。もうこの洞窟にいる以上、嘘はつけないし、なんとなくこの人なら本当のことを離しても大丈夫な気がする。


でも「ぼうず」じゃないんだけどな、と思いながらも、そこはあえて訂正しないで会話を続ける。


「えと、わかんないでしゅ」


そう言って頭の後ろにある大きなタンコブを見せた。

お兄さんは髪の毛をかき分けて、それを丁寧に見てくれた。


「あー、頭を打ったか」

「あい」

「名前は憶えてるか?」


心配そうに聞くお兄さんに、とりあえずそこは胸を張って言った。

とりあえず、名前だけは憶えているからね!


「エリスでしゅ。エリスって言いましゅ」

「そうか、エリスか」

「お兄さんのお名前はなんでしゅか?」

「俺はルーファスっていう。よろしくな」

「るーふぁしゅ」

「そうだな」


まだ上手に発音できないみたいで、お兄さん、もといルーファスは苦笑いしていた。


一緒にお茶をすすりながら、一通りの身の上話をルーファスにした。


気がついたら洞窟にいたこと。

一人でご飯(果物)を食べ、水を入手したこと。

エルマおばあちゃんのこと。

そして、ずーっと待ってたのに誰も迎えに来なかったこと。


ルーファスは自分の話をずっと聞きつつ、一言も言葉を遮らずにじっと聞いていてくれた。

そして拙い言葉で一通り説明が終わってからも、ルーファスは何も言わずに少し何か考えているようだった。


「なあ、ぼうず」

「エリスでしゅ」


ぼうずじゃないんだけどなーと思いながらもじっとルーファスを見ると、彼はこの洞窟で一人でいるには限界があることを話し、冬が来た時には幼児一人ではここで暮らせないだろうとも言った。


「エリス。俺と一緒に来るか?」


本当にいいのだろか? 

こんな幼児を連れていってくれるのだろうか?


そんな疑問が顔に出ていたのだろう。


「心配するな。俺が全部面倒を見てやる」


朴訥(ぼくとつ)な話し方だったけど、信頼できるとなんとなく思ってしまった。


「本当にいいでしゅか?本当に?」


おずおずと顔色を伺うように言えば、ルーファスの形のいい口元にふと笑みがこぼれた。

その笑顔が素敵すぎてまぶしい。


「俺にまかせろ。悪いようにはしない」


ルーファスが何をしてる人なのか、どんな人なのかはわからないけど、どんっと構えたような物言いがとても頼りになりそう。この人なら本当に悪いようにはしないはずだ。


「うん・・・いや、はい。お願いしましゅ」


そう言って差し出した手をルーファスは握って握手してくれた。


「よし、そうと決まればここを出発だ」


この近くに宿を借りているとルーファスはいう。

体調も昨日よりは少し良くなっているみたいで、顔色も少しましになっていた。


こうやって私の洞窟生活は終わりを告げたのである。


ちなみにオートミールは半分残しました(涙




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