騎士団長のため息
執務室の窓辺に立ち、下を見下ろす。
騎士団の訓練場では、ギデオンとディランの模擬戦が行われている様子がよく見えた。
どちらも子供の頃から知っているが、頼もしく育ったものだ。
だが、巨大な火柱が何度も見えるのは、もはや模擬戦の域を超えている気がする。
「元気だねぇ。知ってる?あれって、女の子とのデート権を得るための決闘なんだよ」
同じように窓の外を見て、呑気に呟いているのは魔法士団長。
その口調に苛立ちが募る。
「貴様は呑気だな。今にも戦争が起きようとしているのに」
「そうは言ってもね。私達がイライラしたところで、現状は変わらないよ」
「部下の事が心配ではないのか」
「ふふっ。騎士団長の君からそんな言葉が出るのも、何だかおかしな話だね」
「甘い考えの持ち主で悪かったな。いつも、家族のもとへちゃんと帰してあげたいと願い、送り出しているんだ。団長として正しいとは……思っていない」
「帰る家、帰りたい家があるなら、帰してあげたいとも思うだろうね。待っている人もいるだろうし、否定はしないよ。でも、うちの子たちは、みんな行く当てがない子たちばかりだったから。特別な魔法が使えても、幸せとは限らないものだね。家族の為じゃないなら、あの子達は何のために命をかけてくれるのかな。ましてや、自分の生まれでもない国で」
「………………」
「みんな、自分の誕生日に頓着しないんだ。生まれた日に何の感慨もないって、何がそうさせたんだろうね。彼らに、守りたいものが存在している事を願うよ」
「俺は、昔から貴様のことが嫌いだ」
「気があうね。私も、君のことがあまり好きじゃないよ」
それを聞いて、ため息が出るのを隠す事もしなかった。
ジェレミー・オーラムという男があまり好きじゃないと言う事は、気に入っていると言っているのと同義なのだ。
それは昔から変わらない。
「話の続きだ……」
この男の言葉遊びに付き合ってやる必要はない。
執務机の前に座り、自分の役割を思い出し、しなければならない事に取り掛かる。




