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休んでいたわけでもないに、学園に来るのが久しぶりのような感覚になりました。
そっと教室を覗くと、ソニアさんの姿はありません。
伯爵家に捜査が入った事はまだ公にはされていませんので、教室内にも特に混乱などは見られません。
彼女は今、どうしているのか。
残る懸念は、魔女の存在と関与しているであろう召喚魔法。それと、ドルティエル王国の動向。
魔女ジェネヴィーブの行方はジェレミー様自らが監視されるとの事で、少しだけ安心できます。
ダニエル様の胸ポケットに使い魔がいるのを確認して、私は今まで通りの学園生活を送ります。
大きな問題は残っていますが、でも、きっと、もう間も無くこの学園生活も終わるのだろうと思っていました。
もう、私がここにいる必要が無くなるからと、そんな気がしていました。
教室に入って机に鞄をかけると、前方のドアからアリソン様が入ってくるのが見えました。
「アリソン様!おはようございます!」
自然とアリソン様が近付いて来てくれたので、それだけでも気持ちが弾みます。
「あら。すっかり気の抜けた顔になっているわね」
「はい!ありがとうございました」
「別に、お礼を言われるような事はしていませんわ」
ちょっとだけ声のトーンを落として、その事を伝えました。
「えっと、あの、アリソン様にどこまで説明すればいいのか上手く話せませんが、お姉様とはちゃんと会う事ができました」
「そう。今度ゆっくりその話を聞きましょうかね」
アリソン様は、それは別に特別な事ではないといった様子でご自分の席に行かれました。
私も椅子に座って、先生が教室に訪れるのを待ちます。
それからお昼休みになるまでは普段通りに過ごしていましたが、お姉様に会えなかったので、早く会いたくて、お昼の鐘が鳴ったと同時にアリソン様と食堂のテラスまで移動しました。
そこに、お姉様は少し遅れてやってきました。
会えて嬉しかったのですが、どうしたのか、改めてというように私の顔をまじまじと見つめています。
魔法がかけられていて見た目が違うので、違和感はありますよね。
「……思えば、貴女ってまだ16歳になったばかりなのに、二年生に編入しなければならなかっただなんて」
私が思っていた事とは少し違ったようです。
「まぁ!お子様だとは思っていたけど、本当にお子様でしたのね」
「あ、あの、一歳ちょっとしか変わりませんが……」
「私と貴女を一緒にしないでくださる?」
「確かに、アリソン様もお姉様もとても大人っぽいですが」
「ずっと関係を曖昧にされていたけど、つい最近まで15歳だった子相手なら、ディランも言葉を濁すのは仕方のない事ね」
「え、あの、そこでどうしてディランさんの名前が」
「王国の騎士が未成年者を誑し込んで犯罪者にはなりたくはないでしょうし。でもわたくしは、あの方はいざという時に踏み込めないただのヘタレだと思っていますけど」
「ああ、仕方なかったとは言え、ディランはあんな事をしてしまったからまだしばらくは進展はないわね」
「え、え、あの、お姉様?」
目の前では、訳知り顔のお二人が、うんうんと頷いています。
「まぁ、そのままの貴女でいればいいと思うわよ」
「そうですわね」
何か腑に落ちませんが、この話はこれで終わりのようで、カウンターに行ってランチプレートを受け取ると、それからは食事とお喋りを楽しんでいました。
そのまま学園での一日は平穏に終えましたが、今日は、まだ、お姉様に大切な事をお伝えしなければなりません。
放課後にお姉様達と学園で別れると、営舎の部屋に置かれている日記を持って、今度はミナージュ家のタウンハウスに来ていました。
その場を借りて、お姉様に日記をお渡しするつもりです。
そこではまずディランさんが出迎えてくれて、お姉様もすでに待ってくれていました。
客間のソファーに隣り合って座ると、私が男爵家を初めて訪れたあの日から、魔女に遭遇した事、ディランさんと森で会ったことや、その後に魔法士団でお世話になった事をかいつまんで話しました。
私が話している時、向かい側には見守るようにディランさんが座っていました。
途中、お姉様の表情が怒りに満ちていたりもしましたが、話を遮られる事はありませんでした。
「これが、オードリー様の日記です」
お姉様に、革表紙の日記を渡しました。
「ありがとう。大切に持っていてくれたのね」
「日記は、オードリー様から、お姉様への言葉が遺されていましたから……勝手に読んで、ごめんなさい」
「いいのよ。貴女一人で背負って、今まで辛かったでしょう?」
「いえ……もう、大丈夫なので」
お姉様もディランさんもそばにいてくれる状況で、もう、思い悩むのはやめます。
「うん。ディラン。これを読む間、ステラのそばにいてくれる?」
「わかった」
お姉様が場所を移るのかと思っていると、ディランさんが移動してきて、私はお二人に挟まれた状態でそこに座ることになりました。
真横でお姉様は日記をペラペラとめくっていきます。
そして、お姉様も短時間で全てのページを読み終えていました。
「ステラ。これはやっぱり親達の責任よ。改めてそれがわかった。それに、私は貴女と血縁関係がちゃんとあるの。ちゃんと調べてもらった事よ」
「それじゃあ……」
「あの男と血が繋がっていて残念ながらと言いたいわ。でも、貴女と姉妹なのは本当に嬉しい。これから、今まで離れていた時間を取り戻していきましょう。でも、血縁関係がなくたって、貴女は私の妹なの。それは絶対に変わらない」
「はい」
「これでまた一つ、心配事が減ったな」
私はそうですが、お姉様は少しだけ悲しげな表情をしていました。
オードリー様の事を思うと、複雑な心境になるのも当然の事です。
隣に座るお姉様の手をギュッと両手で握ると、お姉様も握り返してくれました。
「とりあえずは大丈夫か?俺はこれから城に戻るから、二人はゆっくりしていけ。屋敷の者に頼んでおくから」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
ディランさんが部屋から出て行くのを見送ると、お言葉に甘えて、お姉様と今まであった事をお互いに話していきました。
お姉様が言った通りに、離ればなれの時を取り戻すように。




