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 今日も、ステラに癒されながら憩いのひと時を過ごしていたのに、途中でソニアの邪魔が入って、オマケに気持ち悪い事を言われた。


 ソニアの兄と二人で食事とか、冗談じゃない。


 私よりも四つ年上の従兄は、私が13歳になった辺りから気持ち悪い視線を向けてくるようになった。


 思い出しただけでも寒気がする。


 しかも、ステラまで変な所に誘わないで欲しい。


 アリソンがステラを守るように牽制してくれたけど、ソニアの行動にも注視しなければならないようだった。


 ダミアン王子は自己責任で勝手にすればいいけど、純粋なステラが変な事に巻き込まれないように。


 私達の不穏な空気に挟まれて、ステラがオロオロしてたから申し訳ないとは思っていた。


 でも翌日になれば、彼女も気にしてない様子だったので安心した。


 さすがに試験が行われた数日は、ソニアも殿下も大人しいもので、私の心が不穏になる事はなかった。


 試験が終わったその日の放課後、中庭のベンチに座ってしなければならない事を頭の中でまとめていると、ステラが二冊の本を大切そうに抱いて私の所にやってきた。


 ニコニコしてて、その表情は、とっておきの宝物を持ってきたって顔をしている。


 可愛い。


 癒される。


「すっかり遅くなってしまいましたが、以前にお話したもので、この本をよければどうぞ」


 私に差し出したのは、とても大切にしているもののようだった。


「子供の頃に、大好きな親戚のお兄様からいただいたもので、失くしたと思っていたらカバンの中に入っていて、エステルさんにもぜひ読んでもらいたかったものです。子供の頃はわかりにくかった話も、今読むと、また違った解釈ができて、とても楽しめます」


 その本について話すステラは、生き生きとしていた。


「ありがとう。大事に読ませてもらうね」


 貸してもらった本は、見た目はシンプルであっても、装丁を見る限り随分と高価な様子で、最後のページには金字で“ステラへ”と描かれていた。


 すべてタリスライトの言葉で書かれてあって、読み応えがありそうだ。


「こんな感じのタリスライトの物語って初めてよ」


 少し遅れてやってきたアリソンにも、もう一冊が渡されていた。


 これはどうやら上下巻のようだ。


「大切な本をありがとう」


 本をじっと眺めるアリソンが何を考えていたのかはわからないけど、珍しくちゃんとした受け答えをしていた。




 それからまた数日後。


 ステラが手首を見て、表情を次々に変えている事に気付いた。


 よく見れば、ブレスレットを見つめていて、


「あら、ステラのそのブレスレット。可愛いわね」


 声をかけると、ステラの表情が、緊張したものになっていた。


 何か聞いてはいけない事だったかなと思ったけど、何の事はなかった。


 どうやら気になる男性から贈られたもので、どう反応すればいいのか、どう説明すればいいのか困っていたようだ。


 その反応も、ステラがすれば可愛らしいもので、だからつい、からかいたくなってしまう。


 恥ずかしがってみたり、照れてみたり、どうしたらいいのかって困ってみたり、ステラは何でも顔に出るから、随分とその贈り主の男性の事を意識しているようだった。


 初恋だったりするのかなぁ。


 初々しい。


 お返しがまだって言うから、それは是非協力したい。


 後日、ステラと買い物に出かける約束をしたのだけど、ステラとの買い物は姉妹で出掛けているようで、とてもくすぐったくて、私の方が初デートを経験する少女みたいになってた。


 ステラにカフスボタンのお店を案内してあげると、棚を真剣に見てて、その表情がまた次々に変化してて、ああ、意中の人を思い出しているんだなって事がよくわかった。


 うつむいて真っ赤になってプルプル震えてる時は、いったい何をされたのか心配したけど……


「あら、黒曜石のカフスボタン?」


「はい。どうでしょうか」 


 ステラが手に取ったのは、意外にも黒いカフスボタンだった。


「デザインは素敵なものよ。黒でいいの?アンバーとか、貴女の瞳に近いものもあるけど」


「はい。これに決めたいと思います」


 少し不思議には思ったけど、ステラがとても良い顔をしていたから、それ以上は私も何も言わなかった。


 彼女が満足していればそれでいいのだと。


「貴女から贈られた物なら、喜んでくれるはずよ」


「だといいですが」


 ステラは少しだけ顔を赤らめながら、手の中にある箱を見つめていた。


 最重要の買い物が終わると安心感があって、小腹が空くのは自然な事だった。


「串焼き!ステラ、一緒に食べない?」


 通りにある屋台を指差すと、ステラは顔を強ばらせていた。


「あ、嫌いだった?正直に言って大丈夫よ?屋台は他にたくさんあるから」


「串焼き……好きですが……上手く食べられなくて……」


「ああ、気にしないで。私と貴女しかいないのだから、どんな食べ方したっていいのよ?」


 小さな串焼きが五本、カップに入ったものを二人分買うと、ステラは驚いてそれを見ていた。


「小さくて食べやすそう」


「もしかして、いつも大きいサイズの食べてたの?それは確かに食べにくいわね」


「……小さいのがあるって知らなくて」


「私の知り合いも大きな串焼きを買いたがるのよ。でも、私はこのサイズの方が好きよ。ね?安心して食べられるでしょ?」


 ステラがとても幸せそうに私が買った串焼きのお肉を頬張っていたから、大きな串焼きを食べる姿も見てみたかったなって、ちょっとだけ思ったものだ。




 途中編入してきたとは思えないくらい、ステラの存在が当たり前の日常になってて、私もアリソンもうっかりしていた事があった。


 学園の創立記念パーティーの話をするのを忘れてて、だから焦ったものの、誰かが彼女の準備を手伝ってくれたみたいで胸を撫で下ろしていた。


 でも、その手助けしたと思われる人物を見て私は驚かされる事になる。


 去年はこのパーティーに付き添ってくれたディランが、今年は都合が悪いと言うから、面倒だから他には誰も声をかけなかったのだけど、パーティー会場に一人でいるのが不安で、必然的に誰かと適当に踊っていると、視界の端にその二人の姿が映った。


 意外だと思いながらも、妙に納得する部分もあった。


 紫色の宝石が散りばめられたブレスレット。


 あれって、ディランがステラに贈った物なのか。


 そして、今日着ている素敵なドレスも。


 その日はとんでもない事が起きて、ディランに話を聞く事ができなかったけど、パーティーの騒動が終息した数日後にディランに偶然会う機会はあった。


 特別に王宮の植物園を見せてもらいに行った日、王太子殿下の執務室にディランは現れた。


 植物園を管理する魔法使いさんを連れて。


 シリルが途端に不機嫌になってピリピリしだしたけど、もうそれは言っても無駄だと思っていた。


 この拗れまくってしまったものは、ステラが戻ってこない限り解消しないもので、その時はもう一生訪れない。


 王太子殿下にどうにかこの場を制御してもらいたかったけど、私にできた事は魔法使いさんに謝る事だけだった。


 結局、ディランとまともに会話ができなくて、翌日約束を取り付けたのだけど……


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