33 騎士団長の息子は公爵子息(兄)に会う
お兄さんターン
「ライト様、ペター様がいらっしゃいました」
「はい、通してください」
しばらく話しているとようやく来てくれた攻略対象だが、正直弟くんがメインになってしまったので若干どうでもよくなってきた。いや、もちろんアリスの害にならないようにするつもりはあるけど、それよりもライトくんとの友好的な関係を築けたことで目的はある程度完了してしまったのだ。そうして部屋に入ってきたのはいかにもチャラそうな兄貴。見覚えのあるイケメンな攻略対象の一人のペター・シャルルその人だ。
「・・・何か用かよ、ライト」
「兄さんにお客様だよ。と言っても兄さん遅いからすっかり話し込んじゃったけど」
「客だと?」
その言葉で俺を視線にとらえると目を丸くしてから、怒りに目を細めてから俺に掴みかかってきた。
「テメェ!よくも顔だせたな!」
「久しぶり、元気そうで何よりです」
止めようとこちらに近づいてくる使用人とライトくんを抑えてから俺は微笑んで言った。
「随分と大人しいですね、てっきり出会い頭に一発くらい殴るかと思いましたよ」
「お前が裏切ったせいで、マリアと俺が不幸になったんだぞ!」
「それはどうでしょうね、少なくともマリアは今そこまで不幸ではないでしょう」
「何を根拠に!」
「それは毎日学校で会ってればそう判断しますよ」
その言葉に眉を寄せるのを見て、彼が現状をあまり知らないことを察したので俺は簡単に説明する。
「彼女には私の婚約者のアリスの侍女になってもらいました。現在は好きな男もできて順風満帆、これ以上の幸せはそうないでしょう」
「な・・・そんなバカな!マリアは俺のことを愛してるはずだ!それにあの不細工の侍女だとそんなの認められるはずーーー」
と、そんな言葉を言いきる前に俺は彼が掴む手を少しだけ力を込めて微笑んで言った。
「何を考えても自由だけど、言葉は選ばないと。それ以上その穢れた口でアリスのことを口にしたらこのまま手を砕いても構わないんだよ?」
「ひぃ・・・」
その言葉と俺の力に耐えかねて腰を抜かしそうななる彼。なんとも脆弱な心に感心しつつも俺は掴まれていた襟をただして言った。
「さて、異論があれば聞きますが、アリスのことを貶したりした場合命の保証はできません。剣がなくとも今の私なら片手であなたの頭蓋を砕いてこの世とさよならさせることも可能ですから」
「エクスさん、それ脅迫では・・・」
「ライトくん、時にはこのような行いも必要なのです、特にプライドが高いだけのボンクラにはね」
権力者の子供というのはよっぽどの人格者でない限り、ボンクラになる可能性が高い。ライトくんがむしろここまで真っ当に育ったことに俺は奇跡を感じるくらいだ。
「そういうものですか」
「そういうものです、プライドは必要ですがそれにしがみつくだけのボンクラには全く価値はありません」
「そうですか、勉強になります」
自分の兄をボンクラ呼ばわりされてもこの態度なのは、結構凄いと思う。将来的に大物になれる器があるね。うん。
「さて、で?あなたはいつまでそこで倒れているのですか?」
その言葉にびくんと反応する彼に俺はゆっくり近づいて言った。
「先ほどまでの虚勢は偽りですか?」
「く、くるな・・・!」
「まさかこの程度の威嚇でびびったのですか?流石にそれは脆すぎですよー」
「うるさい化け物!貴様が裏切ったせいで、俺とマリアは・・・」
「はぁ・・・あの、その妄想を話すのは構いませんが、そんな未来は永遠にきません。早い話、あなたはマリアに利用されて捨てられておしまい。それが真実です」
俺は懐から髪留めを取り出すとそれを彼に放り投げた。
「マリアの伝言です。『不要になったから返す』だそうです」
「そんな・・・」
「その髪留めあなたが買ってあげたものなんだそうですね。親の金で」
「だ、だったらなんだ」
「趣味が悪いとマリアが笑ってたの知ってましたか?」
まあ、半分くらい実話なのでマイルドに話す。その言葉に顔面を蒼白にしてからうなだれる彼はポツリと呟いた。
「どこで間違ったのだろう・・・」
「最初からですね、そもそもマリアにはあなたは眼中になかったですから」
「そんなこと・・・」
「ないと否定できますか?」
その言葉に黙りこむ彼に俺は笑って言った。
「結局、あなたのことを真に理解してくれる可愛い女なんていませんよ。いくら親の金や権力で集まってくる女の子がいても、それは光につられてきただけの蛾と同じです」
「・・・お前は俺を馬鹿にしにきたのか?」
「とんでもない、むしろ、逆ですよ」
「逆だと?」
「ええ、あなたは凄く傲慢で面倒な人間ですがプライドが高い見栄っ張りなところは使えなくないです」
その言葉にポカーンとする彼に俺はそのまま続けて言った。
「つまりは、あなたは傀儡として丁度いいのです。頭が空っぽで、すぐ心が挫ける面倒な人間だが、それらをカバーして取り繕う傲慢さを持っている。だから言います。私の傀儡になりませんか?」
そうして彼に手を伸ばす。これからの人生を俺の操り人形になれという無茶な注文に折れそうな心の彼を引き込むのはえらく簡単に思えた。まあ、使い道がなさそうな道具でもキープしておくことにこしたことはないだろうからね。




