10 騎士団長の息子はお昼を食べます
イチャイチャしながらのお昼
「あ、エクス!」
リンスとの話が終わり、教室に戻るといまだに囲まれているアリスが俺に気づいて近付いてきた。その仕草があまりにも可愛いので俺は近付いてきたアリスの手を引いて俺の胸へと誘った。つまり抱き締めた。
「え、エクス!?な、なにを・・・」
「ごめん。あまりにも可愛いからついね」
あっちこっちで黄色い悲鳴があがる。「きゃー!みてみて抱き合ってる!」「あのアリス様がお顔を赤くして・・・」「なんてラブラブなんでしょう!」俺がアリスを抱き締める光景に皆思い思いの言葉で話しているようだが、俺はそれを全く気にせずに言った。
「嫌なら離すけど・・・どうかな?」
「うぅ~!い、嫌じゃないですけど、恥ずかしいです~!」
「ならやめる?」
「・・・こ、このまま抱き締めてください」
「よろこんで」
そうして強く抱き締めるとアリスは恥ずかしそうに俺の胸へと顔を押し付けるのだった。そのアリスの態度の可愛さと、胸にかかるアリスの温かさに思わず悶えそうになったのは言うまでもないだろう。
「アリス・・・そろそろ機嫌直してほしいな」
お昼を食べながら俺は隣のアリスにそう言う。先ほど教室で牽制をかねての俺の女アピールをしてから、いかにも怒ってますよーというようにツンとしているアリスに内心微笑ましく思いつつ俺はアリスの頭を撫でて言った。
「アリス。さっきはごめんね。どうしても我慢できなくてね」
「別に怒っていません・・・でも、いきなりその、あんなことされると私も心の準備が・・・」
後半小声になるが聞こえてきた言葉に俺は微笑んで言った。
「ごめんね。代わりになんでも言うこと聞くから許してくれないかな?」
「・・・ほ、本当になんでもですか?」
「もちろん。何でも言ってよ」
「でしたらその・・・あ、『あーん』というのをしてください」
その言葉に思わずポカンとしてからクスリと笑ってしまう。
「な、なんですか?」
「いや、可愛い要求だから嬉しくなってね。てっきりアリスはそういうのはあまり興味ないと思ってたから」
「わ、私だって、興味くらいあります!淑女の前に女の子ですから・・・」
「ああ、アリスは可愛い女の子だからね。ちなみに他にはどんな要求があるのかな?」
そう聞くとアリスはしばらく考えてからポツリと言った。
「その・・・手を繋いで歩きたいです」
「よし、後でやろう。他には?」
「膝枕というのをやってみたいです」
「それじゃあ、やってくれたらお礼に俺もしてあげるよ。あとは?」
「その・・・今度は後ろから抱き締めて欲しいです」
「うんうん」
「あと・・・お、お姫様抱っこなんてダメですか・・・?」
「うん、是非やろう」
そう言うと嬉しそうに微笑むアリス。少しは機嫌が直ってきたようなので俺はとりあえず最初の要求を叶えることにした。スプーンで柔らかそうな野菜を掬うとそれをアリスに向けて差し出した。
「はい、あーん」
「あ、あーん・・・」
恥ずかしそうに俺のスプーンから野菜を食べるアリス。しばらくゆっくり味わってからアリスはこくりと頷いて言った。
「お、美味しいです・・・」
「それはよかった。じゃあ、俺にも食べさせてくれないかな?」
「え?」
きょとんとするアリスに俺は笑顔で言った。
「アリスから食べさせてもらったほうが美味しく感じそうだからね」
「わ、わかりました」
そう言ってからアリスも震える手でスプーンを出してくる。俺はそれをとくに気負わずに食べてから頷いて言った。
「うん、やっぱりアリスから食べさせてもらったものが一番美味しいね」
「そ、そうですか?」
「えへへ・・・」と笑うアリス。その可愛さに俺は思わず立ち上がってから後ろに回ってアリスを抱き締めていた。
「え、エクス!?なにを・・・」
「ごめん。我慢できなくてね。それにアリスがさっき可愛いお願いをしていたのを思い出してやったんだけど・・・どうかな?」
「しょ、食事中ですよ?」
「そうだね。だからすぐに戻るけど・・・少しだけ、今日だけこうしてちゃダメかな?」
そう言うとアリスはしばらく迷ってから小さくこくりと頷いて言った。
「き、今日だけですよ・・・エクス」
「ありがとうアリス」
そんな風にして二人で過ごす昼というのはなんとも楽しいことこの上ない。こんな時間が永遠に続いて欲しいが、やはりそうはいかないのが世の常だ。だから俺はアリスともっとこんな時間を過ごせるようにこれから頑張るつもりだ。
例えどんな障害がこの先に待ち構えていようと絶対に負けない。アリスを守り抜く。もし仮に世界がアリスを拒絶するようなら世界とだって戦ってやる。乙女ゲーム?悪役令嬢?知ったことじゃない。アリスはアリスだ。たった一人の俺の可愛い婚約者だ。この笑顔を守るためならどんなこともする。綺麗なことでも汚いことでも。アリスと一緒にいられるならそうする。世間的に見れば重くて面倒くさい男だという自覚はあるが、それでもアリスを守れるならそれでいい。いやそれがいい。
ま、結局はアリスが好きすぎるだろうなぁ俺は。そんなことを考えてしまう午後の一時だった。




