11 騎士団長の息子は陛下に謁見する
謁見
翌日、授業があるアリスを送ってから俺はリンスと一緒に王城を歩いていた。
「それで・・・先に陛下に謁見というのはなんでだ?」
「父上がどうしても君に会いたいと言うんだよ。理由はわからないけどね」
「陛下直々にか・・・」
なんとも嫌な予感がするがお呼びなら仕方ない。さっさと終わらせてアリスに会いにいこう。そう思って陛下のいる謁見の間に着くとリンスが立ち止まって言った。
「それじゃあ、ここで待ってるから終わったら呼んでよ」
「て、俺一人で行くのか?」
「同伴はダメらしい。それとも僕も側にいた方がいい?」
「そんな気色悪いことは言わないが、わかったよ」
そう言ってから俺は謁見の間に入る。えらく豪華な作りのそこに玉座に座るのはこの国の国王陛下であるデウス・ランドリー様だ。国王陛下は俺が部屋に入ると厳かな口調で言った。
「待っておったぞ。エクス・ロスト子爵子息・・・いや、その皮を被った別物か」
その言葉に俺は内心でため息をついてしまう。やはり見破られているようだ。だがそれを表に出すわけにはいかない。俺は臣下の礼を取って言った。
「陛下。この度はこのように拝謁の栄誉を賜り恐悦至極でごさいます」
「うむ」
「そして、先程の発言に関してですが、私はロスト子爵家のエクス・ロストですので、偽物呼ばわりはお止めください」
「ほう?」
面白そうに笑う陛下。わかっていて楽しむようなこの態度は頭にくるが目上の人間なので我慢して言った。
「私はロスト子爵家の次期当主として、誇りを持っております。いくら陛下とはいえそのような発言は容認しかねます」
「私に対してそこまで口が回る時点ですでに自白しているのと同じだとわかっておるのか?」
「陛下・・・私はミスティ公爵家のアリス・ミスティに叶わぬ恋慕を抱いておりました。それが叶って人として成長したとは考えられませんか?」
そう言うと陛下はくつくつと笑ってから言った。
「あの展開は私としても計算外だったが・・・面白いから許そう。貴様があのボンクラ息子から女を奪うというのは余興としては悪くなかった」
「お戯れを」
「まあ、あれを王位から降ろしてリンスを王太子にできたのは結果から言えば正解だったのだろうな。どのみちあの程度の小娘に絆されるような愚かな息子ではこの国の王は務まらんからな」
自分の息子に対してここまで言えるのは凄いが・・・この人はやはり国王としてはそれなりに優れているようだが一人の父親としてはあまり優れているとは言えなそうだ。まあ、これが貴族と言えばそれまでだが・・・
「そのようなことを仰るために私を召集されたのですか?」
「ほほ、なに。貴様が面白そうだから一度話をしてみたくてな。それにミスティ嬢と婚約できたということはミスティ公爵を説得できたということだろう?あの堅物をどのような手段を持って説き伏せたのか興味があってな」
どのような手段と言われても・・・斬られそうになっただけだけど、それをそのまま伝えても納得はしないだろう。さて、そうなるとどのような答えがベストか?
「私はアリスへの想いをミスティ公爵にお伝えしただけです。特別なことは何もしておりません」
「なるほど、熱烈な愛の告白をしたということか」
「間違いではありませんが誤解を生む発言はお控えください。私が愛しているのはアリスただ一人ですので」
さっきの文脈だと俺が公爵に愛を伝えたみたいに聞こえるからね。冗談じゃないよ。あんな堅物、アリスの父親じゃなければ関わるのはごめんだ。それにおれには同性愛の素質はまるでない。確かにこの世界には同性婚や近親婚の規制はないらしいが、それでも俺はノーマルなのでそちらの道にはいかない。それに俺が愛しているのはアリスだけだ。それは譲れない。
「まあ、冗談はさておき、貴様に頼みがあってな」
「頼みですか?」
「ああ。愚息をたぶらかした小娘にこの後会うのであろう?その時にリンスが少しでも危なかったら必ず守り抜け」
先程までと違い本気の表情をしている陛下。俺はそれに頷いてから聞いた。
「出来るだけのことはいたしますが、陛下はあの娘の処分をどうなさるおつもりですか?いえ、娘だけではなく、メイス様の処遇もどうさるのです?」
「決めかねてはいるが、娘は最悪処刑、良くてもこのまま軟禁であろうな。魅了魔法がもし本当にあるならあのまま放置はできぬからな。馬鹿息子も今は大人しいがいつあの娘と逃亡を計ってもおかしくはないからな。あやつはすでに王位継承権を剥奪した王族の中でも最底辺の存在だ。下手なことはしないと思いたいが、だからこそ油断は出来ぬ」
つまりこのまま行けばヒロイン様は最悪殺されるのか。良くても軟禁。まあ、魅了魔法なんてものがなければもう少し穏便に国外追放とかで済んだのかな?まあ、俺には関係ないけど、それにしても王子や他の攻略対象の動向も気がかりだな。ただヒロインを助けるだけならいいが下手に殺したりしたら、飛び火でアリスに被害がいきかねない。正直ヒロインの生死はどうでもいいが、アリスにとばっちりがいくのだけは許せないから俺がなんとかするしかないのか。
そこまで考えてから、ため息をつきながら俺は言った。
「わかりました。いざとなったらなんとしてでもリンス様は守りましょう。ただ、簡単に処刑はしないでください。その恨みが俺に向けられるのは構わないのですが、アリスにまで被害が及ぶとたまったものではありませんから」
「貴様ならそう言うと思っていた。頼んだぞ」
最初からこの人の手の内なのかと思うとため息がでるが俺は仕方ないと諦めて早く終わらせることにした。早くアリスに会いたい・・・




