揺動
一つの質問をきっかけにして二人は価値観の違いで正面衝突した二人。
彼女は悠太のことを拒絶し、金輪際関わるなと言い放ち教室を出て行った。
帰り道。
駅前のコンビニに寄る。
自分を「崩せる」場所がない悠太にとっては唯一の癒しの場所とも言ってもいい。
いつも通りの流れ。
いつも通りのはずだった。
店に入った瞬間、少しだけ空気が違うことに気づいた。
レジの前で、誰かが立ち止まっている。
背中に見覚えがあった。
佐藤だ。
「え、あの…」
小さな声。
店員と、うまく噛み合っていない。
「袋はご利用ですか?」
「えっと……その…」
言葉が途切れる。
沈黙。
後ろに並んでいる人が、けげんな顔をしている。
正直昨日の出来事のせいで彼女に対していらだっている自分がいる。
このまま無視してあいつが勝手に困ってればいいのだと、そう思った。
ただ、それでも…。
「袋いらないです。あとこれ、温めお願いします」
気づいたときには、声が出ていた。
自然に、横に入る。
佐藤の持っている商品を軽く見て、店員に伝える。
「…あ、はい」
店員はしばらくの間戸惑っていたが、時々こちらのことをちらちら見ながら対応を始めた。
佐藤は固まったまま、動かない。
こっちを見てもいない。
会計が終わり袋を受け取るとそのまま外に出た。
佐藤も、少し遅れて出てきた。
彼女との間に流れる沈黙。
夕方の音だけが流れる。
車の音。人の声。
「なんで…。」
佐藤が、先に口を開いた。
小さい声。
振り返ると、目を逸らされたままだった。
それ以上、彼女は何も言わない。
また沈黙。
気まずい。気まずすぎる。
「……助けなくてよかったのに」
ぽつりと落ちる。
聞こえるかどうかくらいの声。
「詰まってたから助けたまでだよ」
おおむね事実だ。決して間違ったことは言ってはいない。
「……だからって」
言葉が続かず、途中で止まる。
発表でもそうだった。
昨日もそうだ。
こいつは人と話すのが苦手なんだ。
「別に、気にすんな」
それだけ言う。
それ以上踏み込む気はなかった。
少しの沈黙。
それから。
「……ありがと」
返ってきたのは小さな声だった。
ほとんど聞こえないくらい。
佐藤は、いまだに俯いていて僕の目を見ていなかった。
こういうものなんだろうなと思い「また明日。」と言って歩き出そうとすると、
「また、明日。あっ、えっと、…岡本君?」
彼女が急に目を合わせて名前を呼んできた。
(……なんだよ、それ)
自分の頬が少しだけ熱くなるのを感じた。
崩せないのは、変わらない。
今も、ずっと。
僕は、仮装したまま前に立つ。
あいつは、固まりながらそこにいる。
佐藤と僕は「真逆」だ。
最初から、ずっと。
でも、もしかしたら。
同じ場所にいるのかもしれない。




