発見文書 No.060
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発見文書 No.060
種別:編集者作業日誌
記録者:浅川静
日付:2025年8月1日〜8月12日
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【注:8月の日誌は、黒インクと赤インクの区別が7月より困難になっている。また、別案件や日常生活への言及がほぼ消えている】
2025年8月1日(火)
今日から8月。
2000年の阿部記者が施設に通い始めた日と同じ日付。
エアコンの温度表示を見た。ふつうの室温。
ただ、今日は妙に暑い気がした。34.2度——という数字が頭から離れない。山口百合子が書いた数字。
窓は閉まっている。エアコンは動いている。
それでも暑かった。
2025年8月3日(木)
第三部(自分の日誌)の校正を始めた。自分が書いたものを自分で読む。
6月の日誌に「わかっています」という覚えのない一行を読んだ。
あれを書いた記憶が今もない。でも読んでいて、「そうだ、わかっていた」という感じがした。
何を分かっていたのかは分からない。
ゲラの中、6月24日の「わかっています」の箇所に、見覚えのない赤字が加わっていた。
《わかっていました 最初から》
2025年8月6日(土)
阿部記者のノート(8月6日)を校正していた。旧祢古小学校跡地で「影が」と言いかけて映像が途切れる日。
窓の外の自分の影を確認した。あった。ふつうの向きで。
——確認するようになったのは、いつからだろう。
自然にやっていた。阿部も同じだった。
2025年8月7日(月)
事務所のトイレで水を流したとき、一瞬だけ水の色が変わって見えた。赤く。
次の瞬間にはふつうの水だった。
ノートに「気のせいだと思う」と書いて、消して、「気のせいであってほしい」と書き直した。
最初は「気のせいだ」と確信していた。今は「そうであってほしい」に変わっている。
——阿部の軌跡と同じだ。「見間違いだった——と記録しておく」から「見間違いだった」の確信が抜けて「記録しておく」だけが残る。
2025年8月10日(水)
今日が何日か、確認した。カレンダーを見た。10日。確認しなければ分からなかった。
これまでそんなことはなかった。
右手の人差し指に小さな切り傷がある。いつできたか覚えていない。赤ペンを持つと、指先が赤く滲む。洗っても落ちない。
2025年8月12日(水)
明日は8月13日。
近藤あやが「明日、何かが起きる気がします」と書いた日。
同じことを思っている。
何が起きるかは書かない。書くと、起きる気がする。書かなくても、起きる気はする。
今日の日誌の最後に、いつものように一行加わるかもしれない。加わっても、今日は確認しない。
(欄外)明日が楽しみですよ
——「楽しみ」。怖いのではなく、楽しみ。
それが一番怖い。




