発見文書 No.038
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発見文書 No.038
種別:夏休み日記(本文■)
担当:黒田達也
日付:昭和62年8月28日
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【以下は「祢古小学校 夏休み日記」原本より。 黒田達也の担当日記は、4枚の原稿用紙に分かれている。 本文はすべて■で埋め尽くされているが、 2枚目の■の中に、断片的に文字が残っている。 3枚目にも、わずかな言葉の残骸がある。 4枚目の最後に、一文だけ、完全な形で読める文が残っていた】
原稿用紙1枚目(全面■)
原稿用紙2枚目(■の中に、次の文字が浮かんでいる)
……もうすぐ……
……そっちに……
……いく……
……たすけて……
……くらい……
原稿用紙3枚目(■の中に)
……だれか……
……きいて……
……ここに いる……
……みんな……
……おかあさん……
原稿用紙4枚目(全面■。ただし最終行のみ判読可能)
ぼくの名前は黒田達也です。
担任教師の赤ペンコメント:
(コメントなし)
【浅川静・編集注】
黒田達也の日記について。
他の日記とは質が異なる。大野正志の日記(No.036)では■に変わっていく過程が描かれていたが、黒田の日記は最初からほぼ全面が■である。
2枚目に残った「たすけて」「ここに いる」。
3枚目の「おかあさん」。
そして4枚目の最終行。「ぼくの名前は黒田達也です」。
全面が■に覆われた中で、最後に残ったのが自分の名前だった。均質化が進む中で、名前だけが——この子だけの言葉が——最後まで消えなかった。
大野正志は名前が■■■になった。黒田達也は、名前だけを残した。
その違いが何を意味するのか、判断できなかった。
そのまま掲載する。




