36.娘登場
母の想いを聞き複雑な気持ちになった香里に、また衝撃的な話が…
母が重い病を患い手術までしていただけでも衝撃的なのに、母が再婚するとまで言い出した。
『その上、まだ先だと思っていた夫の故郷への転移話まで急浮上するなんて.』
“寝耳に水”どころか”寝耳に熱湯”だ。追いつかない気持ちに気持ち悪くなってきた。母は困惑する私にずっと謝っている。母が悪い訳じゃないのに…
“コンコン”
誰か来た様で井鷺氏が応対している。誰が来たなんて気にする気力もなく俯いていると、井鷺氏が母の元に来て何か言った。すると母は席を立ち扉へ。そして先に戻った井鷺氏が
「先月香里さんの田舎に行き笹川先生にお会いした際に事情を聞きました。先生はお母様がお盆に自分で話すと言っている為、私に口止めしたのです」
井鷺氏は事前に状況を知っており、部外者が口を出すべきでないと思い、上層部を説得し今日まで隠してくれていたのだ。もちろん夫にも話していないらしい。
「すみません。いつも…」
「我々は貴女と家族に無理を言っているのです」
井鷺氏はそう言いいつもの様に気にしない様に言った。そう私が夫の伴侶に選ばれた事でこの国は利を得ている。だが希少な鉱物の取引は私がクラトスカに行っても変わる事なく得れることから、できれば早く移転したもらいたいのが本音。ウチの家族の警護と監視は大変でその上、息子まで能力を開花させつつある。
また遣らかす度に隠蔽に奔走しなければならないのだ。希少な鉱物の取引があるから大きな声では言えないが、早く帰って欲しいのが本音だろう。
先延ばしにしていた決断がすぐ目の前に来て焦る私。どうしていいか分からず呆然としていたら、母が扉から戻り私に視線を合わせて
「急な事で困惑しているのは分かる。でも会う機会が少ないから会って欲しいの」
「会う?」
これ以上のカミングアウトは勘弁してほしいと思っていたら、母は笹川先生の娘さんが来ていると言い、先方が話をさせて欲しいと扉前で待っている様だ。思わず黙ると母は無理しなくていいと言い、また扉の方へ歩いていく。咄嗟に母を呼び止め
「ごめん。まだ困惑しているから失礼な事言ってしまうかもしれない。それでもいいなら…」
そう返事すると母は嬉しそうな顔をし、扉に駆け寄り扉を開けて笹川先生と娘さんを招き入れた。入室した娘さんは先日母と駅まで母と待ち合わせしていた女性だった。そして娘さんは私に近づき
「急な話して困惑してらっしゃるのに、会わせて欲しいなんて勝手な願いを受けたいただき、ありがとうございます」
そう言い深々と頭を下げた。どう応えていいか分からない。固まる私に井鷺氏が声を掛けてくれ取りあえず着席する。
そして母は永人の様子を見て来ると言い退席。私は笹川親子と残されてしまった。
視線をどこに置いていいのか分からず視線が泳いでいたら、笹川先生が娘さんを紹介してくれた。娘さんは亡くなられた奥様との子で眞理子さんと言い、とても品がよく綺麗な女性だ。同じ年くらいかと思っていたら、8歳も年上だと知り驚いていると、
眞理子さんは落ち着いた口調で
「聞きにくい事でもなんでも聞いて下さい。そして言いたい事も仰って下さい」
そう言い真っ直ぐ見据えた。少し躊躇したがいいと言ってくれたから遠慮せず色々聞いてやる!
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