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黒船サッカーパークへようこそ!  作者: K砂尾
シーズン1(2019)

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53/115

第51話 黒船経営会議(19/9月)

(簡易人物メモ)

糸瀬貴矢: 黒船SC 代表

矢原智一: 黒船SP 代表

細矢悠: 黒船TA 代表

真弓一平: 黒船SC 管理部長


ーーーーーーーーーー

 2019年9月末。黒船幹部がサッカーパークに集合した。参加メンバーは、黒船サッカークラブから代表の糸瀬と管理部長の真弓。黒船サッカーパークからは代表の矢原。黒船ターンアラウンドからは代表の細矢である。


 なお、従前通り本会議のダイジェストが黒船チャンネルを通じてwetubeにアップされる都合上、濱崎安郎はまさきあろうは所属元のASKグラーツに配慮して不参加。また、真田宏太の移籍に関する話題も伏せる形とする。


 打ち合わせの場所は、いつものコンテナハウス。以下は当日配られた資料と、経営会議の議事録である。



・・・・・・・・・・

黒船サッカークラブ


(実績報告)

 県リーグは4戦4勝。下位チームが潰し合っていることから早くも独走状態になりつつあり、この調子であれば10試合待たずして早々に1部昇格となる可能性も出てきている。一方で6月から開催した黒船カップは、準優勝という結果に終わった。

 8月から9月にかけて、複数の選手にオファーを打診。フットサルのチームからアディソン、紀北サッカークラブから平雄一郎と坪倉信の計3選手を獲得。また黒船カップで負傷していた真田宏太が練習に復帰しており、第5節はフルメンバーで臨める見込み。


(今後の方向性)

 まずは新加入選手をチームにフィットさせることに注力するとともに、一方で引き続き新戦力の拡充を図る。

・・・・・・・・・・



真弓「まずアディソンについて、フットサル出身ということもあり、ややリスクのある補強でありましたが、リーグ戦2試合に出場しており、彼の左サイドの突破力は武器になっています」


真弓「人柄も良いし、好青年ですよね」


矢原「もっと自己主張強い方が選手としては大成しそうだけどな」


真弓「次に、チームに加入した選手の中で最も影響力を及ぼすと思われるのが平です。ポジションはボランチですが、大西とはタイプが異なり、中盤の底からゲームを組み立てることのできる司令塔としての活躍が期待されます」


細矢「三瀬もそういったプレイヤーだと思っていたんですけど、何が違うんですか?」


真弓「今までウメスタにそういうタイプの選手がいなかったので、三瀬がゲームメイカーとしての役割を一部担っていましたが、本来の彼はよりゴールに直結するプレイや瞬間的な発想力を武器とする選手です。一方で、平選手はもっと大きな試合の流れ全体を見極めて、攻守のバランスを取ったり、起点となるパスを出したりする役目ですね」


矢原「絵を描くのが平で、そこに色を乗っけていくのが三瀬って感じか」


細矢「え、どうしたんですか矢原さん。そんな詩的な…」


矢原「たまにはいいだろ」


真弓「平がいることで三瀬が攻撃により集中できるようになるので、間違いなく攻撃力は上がりますし、ボールを支配してゲームを進めやすくなると思います」


細矢「いいですね。来てくれて嬉しいですね」


真弓「最後に坪倉ですが、弱点の強化という観点では一番有効な補強だと言えます。対人守備に優れたディフェンダーは、今までのウメスタにはいませんでしたので、黒船カップの決勝に彼がいれば、結果は変わっていたかもしれません」


糸瀬「真弓さんありがとう。交渉お疲れ様でした。今後の補強プランについても教えてください」


真弓「はい。えーと、実は他にも何人か選手にオファーを出していたのですが、断られました。そこで埋められなかった補強ポイントがFWですね。FWは先発できなくても試合の流れを変えるためのカードとして必要なポジションなので、厚めに確保しておきたいと思っています」



・・・・・・・・・・

黒船サッカーパーク


(実績報告)

 黒船カップの決勝は3,000人の観客動員があったため、入場料だけで300万円を確保。優勝賞金の50万円はキャッシュアウトしたものの、興行的には黒字で着地している。

 また黒船ホテルマネジメントについて、事業計画が確定。8月に紀南信金から6億円の融資が調達できたので、すでに工事が始まっている。竣工は2020年の6月、プレオープンを挟んで7月から営業開始の予定。

 

(今後の方向性)

 とりあえず目の前のホテル開発に注力する。またシーズンオフの冬場に関してスタジアムの活用方法を検討中。

 

・・・・・・・・・・



矢原「ホテルの客室数は、旧海楽荘の約半分の75室の計画としました。これは旧ホテル海楽荘から移転してから従業員の数や接客クオリティ、さらにホテル完成までの工期を総合的に考えて設計しています。その代わり一室あたりの広さは余裕を持たせて単価は上げに行く想定。ホテルの年間売上は約4.5億円、GOP…いわゆる営業利益は1.5億円弱を目指す計画です」


細矢「売上で月4,000万円くらいってことですよね…すごいな。ホテルの営業が始まったら、黒船全体の事業構造が完全に変わっちゃいますね」


糸瀬「現状で考えられるリスクはある?」


矢原「スケジュールっすね。営業開始月の7月から本格的に観光シーズンに突入するので、オープン時期がもしずれたりすると、えぐい機会損失が出ると思います。さっき細矢が言った月次売上4,000万円っていうのは単純平均だけど、実際は繁忙期の8月だけで1億円くらいの売上を想定してるから…」


糸瀬「なるほど。もしオープンが9月とかになったら、4ヶ月分くらいの売上が吹っ飛ぶかもしれないってことやんな」


矢原「そうです。ここはもう田辺組に頑張ってもらうしかないです。あとはてるてる坊主作って、工事中止になる日を減らしに行くしか」


細矢「俺めっちゃ作りますよ」


糸瀬「俺も作るわ。事務所全部てるてる坊主で埋め尽くそうぜ」



・・・・・・・・・・

黒船ターンアラウンド


(実績報告)

 wetubeは登録者数5,000人を突破。月次広告収入はまだ10万円にも満たないが、この調子で伸ばせれば、年間売上100万円くらいは見えてくる。

 トロングジムの運営は3店舗となり、賃料収入は月次900万円。運営に支障なし。

 黒船食品の新商品、黒梅袖の売上は順調に伸びている。すでに月次売上高100万円を上回っており、毎日西野農園内の工場で社員パートがフル稼働で製造中。


(今後の方向性)

 wetubeについては来年を目処に有料チャンネルの開設を予定。

 また黒梅袖の製造に関しては予想を超える売上の伸びを見せているため、年内で製造キャパを超えてしまう可能性が高い。外部工場への製造委託を検討中。

・・・・・・・・・・



糸瀬「有料チャンネルっていうのはどういうイメージになるんだ?」


細矢「今まではビジネスの透明性という観点で、基本的には全て不特定多数に公開していましたが、今後は企業秘密と言えるような情報やノウハウはクローズドな場で共有しようと思っています。例えばこの会議の内容とか、有料化した後は会員限定の動画になると思います」


矢原「wetubeの仕様としてそういうことができるってことだよな? 会費はいくらくらいになるんだ?」


細矢「自由に決められるんですが、とりあえず月1,000円くらいかなと思ってます。ウメスタのサポーターになってくれてる人達が負担なく入ってくれる程度のレベルでまずはスタートしたいですね」


糸瀬「了解。黒船食品については正直、大当たりと言っていいんじゃないか」


細矢「ですね。福島さん頑張ってくれました。いまEC以外ではウォンキットホテルでしか販売していないので、これを拡大していけば、わりとスケールさせるのは簡単に思います。ただ製造キャパの問題があるので、本格的に売上作れるのは来年以降かなと思ってます」



・・・・・・・・・・

グループ業績報告


(19/04〜19/09)

売上 52,347,730円

利益 16,864,063円

収支 ▲33,015,120円


※売上の内訳

トロングジム : 42,000,000円

スタジアム関連: 4,990,000円

黒船食品   : 3,848,000円

グッズ売上  : 1,855,000円

wetube    : 254,730円


(参考: 進行期の事業計画)

売上 300,000,000円

利益 100,000,000円

・・・・・・・・・・


 引き続きトロングジムの賃貸収入が売上を牽引しているが、第2四半期については、黒船カップによるチケット売上と黒船食品の売上が計上されたことから、四半期単位では増収での着地となった。コストはスタジアムの維持費用と人件費が主な支出項目であるもコントロールはされており、利益ベースでも増益にて進捗。


 収支については、ホテル開発に伴う田辺組宛の着手金6億円の支出はあったものの、紀南信金による同額の融資調達ができたことから、四半期ベースでは1,000万円程度ではあるが、初の黒字着地となった。



糸瀬「順調だな」


細矢「でも事業計画達成はまだ遠いです。一年の半分終わったのに売上計画3億円に対して、まだ5,000万円ですよ」


矢原「そんなに単年の事業計画に固執する必要ないんじゃないか?」


糸瀬「本質的にはその通りだけど、せっかくなら達成したいよね。約束守る会社だと思われたい」


細矢「そうなると、やっぱスポンサー様の力を借りたいところですね」


糸瀬「そうなるなぁ…。だとすると、ぐるりと話が戻って、クラブのパフォーマンスを維持するのが最優先になるってことだね」





 

以上。

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