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50 信じがたい事実 【side アルタイル】

「クレアの様子をもっと詳しく教えていただけますか?」


 オレはクレアが幸せな生活を送っていないと想像するだけで、胸が締め付けられる。

 どう過ごしているのか知りたいと逸る気持ちを押さえながらやっと振り絞って出た声だった。


 そんなオレの気持ちも表情から読み取ってくれているのか、ヴィクトル王太子殿下は落ち着いた声音で、実際に見て感じた話を一通り包み隠さず教えてくれる。


 話を聞いている途中で、怒りがこみ上げてくるがそれを堪えて、全ての状況を把握することに集中する。


「そうですか……以前と変わらずガラス瓶の中にいたのですね」


「えぇ、でもウィンザルト国の貴族の方にお話しを伺ったのだけれど、最近、ガラス瓶に移し替えて招待客向けにガラス瓶の展示を増やしたそうなの。玄関ホールに飾ってある絵画にも精霊を貼り付けているらしいのだけれど、その精霊たちをはがしてガラス瓶の中に展示させたようだと言っていたわ」


 だとすると、ウィンザルト国に行ってからずっとガラス瓶の中にいたわけではなく、絵画の絵に融け込むように精霊たちを貼り付けていたのなら、クレアは絵画の中で過ごしていたのかもしれない。


「アルタイル。我々の叔母がウィンザルト国に嫁いでいるのは知っているか? ウィンザルト国のサーマン公爵家に四十年ほど前に嫁いだのだが、その後、レクナ王国に来たことはないんだ。……それで、国王陛下と数年前から手紙のやり取りをしていたんだが、今回、サーマン公爵夫人が嫁がれてから初めてお会いすることができたんだ」


 オレはウィンザルト国のサーマン公爵家に嫁いでいた女性がいたことは、知らなかった。ひょっとしたら、家庭教師に教えてもらっていたかもしれないけれど、他国へ嫁いだ時点でレクナ王国と関わることがないからとあまり意識して記憶しなかったのだと思う。


 ヴィクトル王太子殿下は、そのままサーマン公爵夫人について話を進める。


「サーマン公爵夫人のご厚意で今回、公爵家に二日間滞在させてもらったんだ。理由は、アルタイルも想像がついているとは思うが、ウィンザルト国における精霊についての情報収集をしたかったからだ」


 オレは、なるほどと頷く。


「そこであることを教えてもらった。どうやら限られた高位貴族しか知りえない情報らしいが、まず王城にいる……精霊はガラス瓶の中で二年ほど過ごすらしい。卵から孵化した直後に何も世の中のことがわからない状態でガラス瓶に入れられる精霊も多いそうだ」


 そこまで、話すとヴィクトル王太子殿下は一度、水の入ったコップを飲み干す。言いにくい内容なのかもしれない。


 何も声を発することなく、オレはただ耳を傾け続ける。


「ここから先に話すことは……正直、嘘だと思いたいし、俄かに信じがたいのだが……ガラス瓶で二年過ごした精霊はそれから、一度、行き先を分類されるらしい。中には、精霊王にお渡しして、自然界に必要となる精霊として生きていくことになる精霊も多いらしい。ただウィンザルト国には緑が少ないし、精霊の力が弱いらしいから力尽きて、消滅してしまう精霊も後を絶たないようだ。それから、先ほど話した王城にある絵画に精霊を貼り付かせて、一つの絵として鑑賞させるための精霊にも分類されることもあるとのことだ。それから……どうやら、精霊を人間化させる液体があって、それを飲ませて人間にしてしまうらしい」


「はっ?!」


 尊い精霊様に液体を飲ませて人間にしてしまう薬があるとは、信じられず思わず大きな声を出す。


「あぁ、アルタイルの気持ちも理解できる。私だって信じられなかったんだよ。そんなことができるなんてね」


「ちなみに人間化された精霊様はどうなるのですか?」


「あぁ、それについての情報も得てきた。王城の侍女にしたり、騎士にする場合もあるし、精霊の卵を作り出す『卵工場』と呼ばれている工場があるらしく、その工場で昼夜問わず働かせて、卵を生産する仕事を割り振られることもあるらしい。その他では、高位貴族が人手を欲していたら、人間化した精霊様を売る事もあるし、見目の美しい女性は王族や、高位貴族の愛妾や慰み者として買うこともできるらしい」


「まるで人身売買ですね。いや、それよりもひどいのか。次々に卵で精霊を生産できるからこそ使い捨てるという流れができているのかもしれないな」


「あぁ、ウィンザルト国がいつも強気でいるのも、万が一、戦争になっても最前線に人間化した精霊様を送りこめば、工場で卵が生産できる限り戦力は減らないと計算しているからなのだろう」


 厄介だ。

 自国の高位貴族が国を守る為に戦争に行く必要はなく、精霊さえ生み出せれば人間は傷つくことなく永遠に戦況を見ているだけでいいのだ。


「まずは卵の生産を止めないと、戦争になったとしても我が国は負けてしまうでしょうね」


 オレは、クレアを奪い返したいと考えてはいるが、だからといってレクナ王国から無謀な戦争を始めて、仲間たちの命を不必要に失いたくはない。まずは精霊を生み出すことができなくなるように、ウィンザルト国の王城の中に仕掛けていく必要がある。


(精霊を生み出す工場をまず使えない状態にすること。それが戦況を左右する)


 オレは、ウィンザルト国の王城の把握から手をつけることにした。

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