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47 懐かしい顔ぶれ

 私がもうレクナ王国の人たちの姿はここに現れないのではないかと諦めた時。


 とても優雅な淡い草色のドレスで、髪をふんわりと結い上げた女性が入り口付近に立つのが視界に入る。

 その横には、女性よりも同じ色味だけれど濃淡をつけて濃い色で染色し、バランスのとれた正装姿の背の高い男性の姿がいる。

 彼は、腕に女性の腕をとりエスコートしながら控えの間にゆっくり足を踏み入れる。


 品が良くて素敵な男女だと思ったら、微笑んだ顔が私の知っている人物の少年少女の頃の面影を残していることに気がつく。


(ヴィクトル王太子殿下とキアナ王女殿下だわ!!)


 私は、ひときわ目を引く二人に目が釘付けになる。会わない月日の間に二人ともレクナ王国の王太子殿下として、そして王女殿下としてふさわしい自信に満ち溢れた雰囲気を醸し出している。


 私は、懐かしい二人の笑顔を見るだけで涙が出てきてしまい、慌てて手のひらで目元をこする。


(二人とも……とっても素敵……)


 遠くから眺めているだけでも二人とも華があり、ガラス瓶が整列して展示されているだけの味気ない空間なのにそれを全く感じさせない。


 ヴィクトル王太子殿下とキアナ王女殿下は一つ一つの精霊にほほ笑みかけながら、ゆっくりと見て回っている。


(どうしましょう!! お二人の成長にビックリして涙が出てしまったけれど……二人は心配しないかしら?!) 


 私はガラス瓶の壁に両手をついて、二人の様子を目に焼き付けるように見守る。

(成長したお二人の姿を覚えておけば、これからの人生だって乗り越えていけるもの)


 そして、ついに私の傍まで二人が近付いてくる。

 気が付いてくれるかとドキドキ胸が高鳴っているけれど、それよりももう一度近くで二人の笑顔が見たかった。 解毒薬を飲んで元気になった姿を今回やっと目にすることができて、それだけで私の決断は間違っていなかったのだと実感することができる。


 私と視線が交わった二人は目を(みは)る。

 ひょっとしたら、私がこの控えの間にいるとは思っていなかったのかもしれないし、ましてやガラス瓶の中に閉じ込められているとは考えていなかったのかもしれない。

 二人は、驚いた表情をした後に泣き笑いのような顔に変わる。


 キアナ王女殿下は、目にいっぱいの涙を浮かべて今にもこぼれ落ちそうになる。

(泣いたらせっかくの綺麗なお化粧が台無しになってしまうわ)


 私は、二人に向かって最高の笑顔で笑ってみせた。

(私は元気に暮らしているよ)

 そう受け取ってもらえればいいと思っていた。


 するとキアナ王女殿下が、無言で口をパクパクし始める。読唇術だとすぐに気が付く。


『私たちクレアのおかげで解毒できたの。ありがとう』

 私がレクナ王国を去る時には、王女殿下は危篤状態で一番危険な状態だった。

 だから、キアナ王女殿下はわざわざ私に元気な姿を見せてくれたのだと理解する。


『元気な姿を見せてくれてありがとう!』

 私は二人が快復したことが、目で確認できてとても嬉しくなる。

 すると、キアナ王女殿下は気になっていたことを教えてくれる。


『あなたのアルタイルも元気よ! 今はね、騎士団の副団長を務めているわ』

『本当!? 頑張ってって伝えてくれる?』

『えぇ、もちろんよ!』


 短い会話だったけれど、ヴィクトル王太子殿下がキアナ王女殿下の腕をポンポンと触ると二人はまたガラス瓶に入れられた精霊を順番に見て回って行った。


 どうやら、私のガラス瓶の前で立ち止まったから警備員が不審に思ったようだ。

 それをごまかすかのように、他の精霊の前でも足を止めて、ゆっくり精霊たちの様子を観察しながら、軽食や飲み物が置かれている隣の部屋に移動していった。


(私と会話をしているのがバレるとよくないから、カモフラージュしてくれたのね。気を遣わせてしまったかしら)


 二人の優しい行動に触れられて、懐かしさで心が満たされる。

 アルタイルの事情を聴けたのが一番の収穫だ。

(うふふふ。しかも『あなたのアルタイル』ってキアナ王女殿下はおっしゃったわ。おかしな表現をするのね)


 アルタイルは騎士団の副団長をやっているとも教えてくれた。

 十八歳にしては出世が早いような気がするけれど、それくらい頑張っているということなのだろうか。


 アルタイルがレクナ王国の平和を願って、国民が安心して暮らすことができるように夢に向かって一歩ずつ進んでいる現状を知る事ができて、思わず口元がほころんでしまう。


(アルタイルも元気に頑張っているのね……彼の今を教えてくれたから、また私のウィンザルト国で生きていく糧になりそう)


 レクナ王国からやってきて私の存在に気がついて、見つけて声をかけてくれた二人に心から感謝をした。


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