帰り道3
「リーフ…起きてるか?」
「はい…」
「ヤツか…」
(ドキドキ)
グルルルルル…
のしっ…のしっ…
「俺には音しか聞こえないが…警戒してこちらを見ている気がするな…」
「おい、リーフ下を見るのをやめろ。視線で気づかれる」
「は”ぃ“…」
「もう寝ろ。寝れないかもしれないが静かに目を閉じて寝ろ」
「…」
(姿を見ちまったか…リーフが怯えてるしこの足音と唸り声からすると…思った通りグレートハウンドベアか…)
(厄介な奴に出会ったな…まさかこんな都市の近くにいるなんてな…)
(偉大なる狩猟熊か…いい名前してるぜ…)
「うっ…」
「うん…」
「ん?ソウ先生?」
「あぁ…ようやく起きたか…」
(顔近い!?)スッ…
ゴンッ!
「いったーーーい!」
「おはよう。お姫様。人間ベットの寝心地はいかがでした?」
「男臭いけどあったかかった」
「…」
「おはようございますミキさん…」
「おはよう…リーフさんどこ?」
「あははは…今はちょっと下の方に…」
「と言うか何?この状況」
「どこまで覚えてる?」
「ツリーハウスを創造して…魔力尽きて意識を失った」
「あの後この姿勢で固定されてそのままみんなでご就寝だ」
「なるほど…ところでなんか光が差し込んでるんだけど…」
「あぁ…今日は晴れみたいだな…最も今は昼頃だろうけど…リーフ下に何かいないか見てくれ」
「…」
「大丈夫だ奴の気配はしない。奴がどう思っているかは知らないが今は近くにいないはずだ」
「はい。」
(?)
「今のところ何もいません…後ろの方は見えませんが…進む方向には何も…」
「そうか…それじゃあそろそろこれを解除してもらって…出発するか…」
「ミキちゃん。解除頼む」
「わかった。みんな鼻と口塞いでててね」
「あ、まって!俺の鼻塞いでく…!?」
ドサッァァァァ…
「ぷはあああ!」
「ゲホゲホ…」
「ヒヒーン…」
グラグラグラ…「ん?」
「重いわ!早くどけ!」ハァハァ…
「上に女の子乗せといて重いはひどい!そこは泣いて感謝の言葉を述べて土下座するところだよ!」
「誰がドmだ誰が」
「…」
(それにしても…足跡が思ったより多いな…それだけ執着してると言うことか?まだ諦めてないのか…)
「あれ?おっちゃんは?」
「あ、そういえば…」
「…」
「しっ…死んでる!?」
「冗談はいいから早く起こしてやれ!死ぬぞ!」
「う…う〜ん…!?グハッ…」
「ぺっおえっペッペッ!なんじゃこりゃああ」
「起きたか。起きたんだったら早く出かけるぞ。」
「俺のねーちゃん達は!?ムチムチ生パイの俺専用のねーちゃん達は!?」
(このおっさん何言ってるんだ…)
「夢は終わりだ。行くぞ」
「…」
「人が苦労して…一夜過ごしてたと言うのに…」
ぐぅ〜
「お腹すいた。」
「そういえば何も食べてないな」
「よし。交代で飯を食うぞ」
「えぇ〜座ってみんなで食べようよ〜」
「ダメだ。一人づつ歩きながら警戒しながら食うんだ」
「ぶーぶー」
「それでいいな?リーフ」
「はい…」
(?)
「じゃあミキちゃんが御者をやってリーフが飯を食え。おっさんは海側ミキちゃんは前俺は草原と後ろを見る」
「えぇ〜レディファーストでしょ」
「…」
「…」
(何この空気?)
「先に確認しておくが…ミキちゃんは魔力全快してるのか?」
「いや〜7割ぐらいかな?」トボトボ
(限界まで使った後の反動か?)
「休んでたら回復するとかか?」
「う〜ん…?多分?寝ればまぁ回復には繋がると思うけど…休んでるだけだとどうかな?なんで?」
「いや…今後は昨日みたいなツリーハウスで寝たいなと思ってな…」
「エロいこと考えてたでしょ?」
「考えてません」
「昨日だってお互いお腹くっつけあって寝てたわけだしもう溜まってるもの弾けそうだった?」
「溜まってません」
「ぬぅ…」
「…」
「ワン太出そうかな〜」
「ダメだ。これからは極力魔力温存で行く」
「えぇ…レーダー無くなるから索敵範囲狭くなるよ!?」
「それでも構わない。そのかわり何かあったらすぐにツリーハウスできるように準備しておいてくれ」
「すぐにって…道濡れてるのに?」
「…」
「…」
(何この反応?)
「昨日私が寝てる時なんかあった?」
「いや。何もない。ウミウシを見かけたぐらいだ」
(嘘ついてる)
(だってソウ先生の表情がここにはいない何かを警戒しる顔だもん…)
(そしてその存在をリーフさんも知ってる…)
「リーフさん昨日なにがあったの?」
「何もなかったですよ」
(微笑みも無し…振り返りもしない…これは…)
「俺は昨日美女に囲まれて最高のスイートルームで…「うるさい」
「はい…」
(いつも楽観的なソウ先生が今ここにいない何かを警戒してる…一体何を?昨日あったことといえば…ウミウシと…小屋が破壊されてた事…)
「今日も小走り進めるだけ進むぞ」
「”えぇ…!?また走るの!?“」
「おっさんは痩せろ。」
「えぇ!?」
「ミキちゃんは昔言ってたよな?魔力の消費と筋力の消費は関係ないと…」
「ミキちゃんはスタミナがない。体力づくりだ」
「えぇ〜!こんなに天気良いんだしのんびり行きたいなぁ〜」
「リーフみんなが付いてこれる程度に速度出してくれ今日は天気がいいし距離を稼ぎたい」
コクッ…
「一人だけ行き過ぎるなよ…カバーができないからな」
「そろそろ…休憩…きぼ…」
「ゼェハァ…ゼェハァ…この歳で走りはきつ過ぎる…」
「…」
「…」
「ねー!いい加減何があったのか教えてよ!」
「なんの話だ?」
「リーフさんとソウ先生がなんか隠してる!」
「…」
「…」
「それ教えてくれるまでもうここから動かない!疲れた!」
「そうだそうだー!」ゼェハァ…
「はぁ…」
「仕方ない…隠すのもこれまでか…」
「ほーらやっぱりなんか隠してた!」
「なんだ?昨日なんかあったのか?」ゼェハァ…
「サキュバスの群れでも襲ってきたってか!?がははは!」
「グレートハウンドベアが現れた」
「…」
「ベア?熊?」
「熊?じゃあ今夜は熊鍋パーティか〜」
「話聞いてたか?グレートハウンドベアだ」
「普通の熊と何が違うの?」
「それについては…長くなるから歩きながら話そう」
「さ、行きますよミキさん」ハッ…ヒヒーン
「あぁ!ちょっと待ってー!」
「えぇ!?もう行くのか…」
「でグレートハウンドベアって?」
「熊の中でも最大種の奴だ。大きさは2m立ち上がるとその倍以上あるとも言われる」
「えぇ…」
「そいつが昨日小屋を壊した犯人だ」
「あぁ〜あの柱が真ん中から壊されてたやつ?」
「そうだ」
「そして俺の予想通り昨日奴が来やがった。」
「もしかして夜に?」
「そうだ。そして奴の姿を俺は見えなかったがリーフが見た」
(リーフさんの沈黙はそういうことか…)
「倒せないの?」
「今の…というか準備万端のBランクでも無理だな。最低でもAランクはないと…」
「ひえぇぇ…」
「Aランクでも森で奇襲を受けたら壊滅するかもしれない」
(どんだけ強いんだよ…)
「正直今出会っていい相手じゃないんだよ」
「でも昨日一晩だけだったんでしょ?」
「だがあの場に残されたやつの足跡の多さから言って最悪目をつけられいるかもしれない」
「無理無理無理!Aランクでも勝てない相手を私たちで倒すのとか無理!」
「そうだ。無理だ。だから奴から逃げるしかない。逃げるにしても寝込みを襲われる確率が高い。だからこそミキちゃんにツリーハウスとやらを作って貰う必要がある」
「…」
「このままいなくなってくれればよし。文句言うことはない。もし目をつけられてこのまま追いかけ回されたらいずれ村までついてしまう。」
「そうなれば村ごと滅ぶ」
「…」
「最悪!まじやばいじゃん!」
「そうだ。最悪だ。俺たちには頼れる援軍もいなければ次の村はルフ村…あの村長と取り巻きは正直死んでもいいが罪のない村人は殺させるわけにはいかない」
「もし目をつけられてたらどうするの?」
「考え中だ」
「…」
「勝率は?」
「考え中」
「…」
「胃が痛い…」
「だから話したくなったんだ。」
「ツリーハウスがあれば安全!?」
「どうだろうな…今魔力7割と言っていたが最悪この先魔力が回復せずに高さが下がって行くと…」
「じ、えんど、と…」
「…」
「荷物捨てて速攻逃げるとかは!?」
「ダメだ奴には鼻がある。もし目をつけられていたらたとえ数十キロ離れてても一夜で追いつくだろう…」
「そんな…」
「昨日は針山を警戒してみている様子だったが…今夜は針山を攻略しにくるかもしれない…」
「…」
「あぁ…頭も胃も痛い…」
「何か手ない!?」
「ミキちゃんも考えてくれ。生き残る方法を…」
「…」
「いやだ!俺はまだ死にたくない!!!」
「おいおっさん!静かにしろ!騒ぐと奴が来る!」
「ぐっ…うっ…クソッ…」
「まだ死んだと決まったわけじゃないみんなで考えるんだ」
「そこまで強いんだったらヒドラに殺してもらうとかは?」
「おぉ、それなら確かに!」
「ルフ村はどうする?あそこを通らないとヒドラの領域まで行けないぞ?」
「それに下手するとベアがテリトリーに先に気づいてルフ村付近で留まれば村人は確実に死ぬ」
「ルフ村付近で手傷を負わせて標的を私たちにすれば?」
「俺は反対だ!そんなことできるか!」
「もしそうなったとして、ヒドラ領域に入ったとして、ヒドラが現れなかったらどうする?」
「…」
「死ぬしかないじゃない!」
「おっさんうるさい。熊くるから黙って」
「…」
「先にも言ったが一番いいのは俺たちから興味を失せてくれることだ」
「そうなれば最高だけど…」
「そうなる可能性は低いがな…」
「熊って獣だよね?獣除けの香は?」
「発見されている状態で使ってもここにいますよと言っているだけで意味はない」
「…」
「どうしようもないね」
「あぁ…」
「行くときはあんなに楽しかったのに帰るときは地獄だなんて…」
「本来旅とはこう言うもんだ」
「先生が実力がつくまでは村の外に出たらいけないと言ってた理由がよくわかる…」
「この辺で熊に勝てるやつもしくは互角のモンスターってどれ?」
「行くときに見かけた牙のあるあの魚…」
「あぁ…大きさ半端じゃないし魚の方が圧勝しそうだね…」
「カニとゴカイは?」
「あいつら程度じゃ相手にならないな」
「ぬぅ…」
「あ、ルフ村近くの大型の蜂は?数で押せばあるいは…」
「蜂ならいけるかもしれないが…森こそやつのテリトリーだぞ。蜂の領域まで無事にたどり着けるとは思えん」
「そもそも奴が潜んでいられるところ…森…今回俺たちは海沿いで来たが奴が何かの拍子で俺たちを見つけて俺たちの居た漁師小屋を追いかけて潰したのだとしたら…」
「普通であれば海沿いのルートで帰ろうとするね。危険な森なんか進むよりよっぽど安全だし。坂道だけど村まですぐだし」
「もし俺が奴なら逃げる速度が落ちる坂道の茂みで待ち伏せする」
「…」
「でも森にもいる可能性もあると…」
「…」
「森に行きましょう」
「“!?”」
「もしソウさんの言う通り、坂道で待ち伏せされてたら逃げる隙なんてありません」
「もちろんそれは森でも同じことですが…」
「だとしてもやつは僕たちを見つけて小屋まで破壊して追いかけて来た。だとすれば僕たちを見逃すはずはありません」
「たしかに…」
「小屋の破壊は宣戦布告と取るべきだろう」
「…」
「しかし、森の中にも蜂以外にもいるだろう?…何がいるかは知らないが…たしか中型の蛇もいるとか言ってなかったか?」
「おそらく森の中に縄張りがあるんでしょう」
「もし奴が坂道で待ち伏せしてるとして…森には蜂の群れと蛇となんらかのモンスターがいる。」
「おいおい蜂なんて襲われた日には確実に死ぬぞ」
「それは蛇も熊もお同じでしょう…」
「やっぱり坂で熊と戦ったほうがまだいいんじゃないかな?」
「何言ってんだバカ!死ぬぞ!」
「だってどっちみち死ぬじゃないですか」
「森を進んでも蜂と蛇と最悪熊も」
「坂を進んでも熊」
「仮に逃げてもルフ村壊滅」
「何か思いついたのか?」
「思いついたわけではないですが…」
「まず坂で全速力で走り駆け抜けます」
「そのあと追いかけて来たら私が土を軟化させ沼地を作ります。」
「そうか…そこにハマれば足止めできるな…」
「いいえ。そこでやつの息の根を完全に止めます」
「どうやって?やつには矢も通らないぞ」
「沼地に嵌めたあとやつの足元の土を使い奴ごと泥のドームに閉じ込めます」
「だがそんな泥程度簡単に突破されるぞ」
「はい。なので閉じ込めたあとやつの口の中にありったけ沼の泥を喰わせます」
「そうか!それで内部破壊するわけだな!?」
フルフル
「残念ですがそこまで魔力がもたない可能性があります」
「食わせるので精一杯か…」
「食わせ続けて肺と胃に泥を詰めたところで硬化させ窒息死を狙います」
「なるほど。たしかにそれなら矢も必要ないし確実に殺せるな…」
「もし窒息するまでに生きていたら私とソウ先生で手を叩きながら熊と追いかけごっこです」
「そのぐらいは我慢しよう…」
「今日はこの辺で野営しよう」
「暗くなる前に安全なところに逃げておきたい」
「いでよ!ツリーハウス!」
「うーん…もうベアに見つかってるからとはいえ…ちょっと開放的すぎやしないか?」
「魔力温存なので仕方ないですよ」
「空から襲われたらひとたまりもないぞ?」
「そのときは(く・(ェ)・ま)さんが助けてくれますよ。」
「死骸を食べに来るの間違いでは…」
「馬が落ちないように真ん中に。後海側の風が厳しいから荷台と荷物で少しでも風に当たらないようにしよう」
「今日は保存食を食べてそのまま寝よう。奴が来れば矢で応戦だ」
「了解」
「少しでも多く寝て決戦のための体力を養うぞ」
「うぃーす」
「なんでお前らそんなん気楽なの?」
「だって失敗したらどうせ死ぬし」
「狩人とは森の中で生きる者…狩をしてばかりが狩人ではない。たまに自分が狩られる側になることもあるだけだ…」ミシッ…
「俺はそういうのが嫌だから商人になったのに…結局最後はこの有様か…」
「まだ死ぬのが決まったわけではないんだしそういうのは死んでから考えればいいよ」
「死んでからか…」




