転機
次の日は雨で、地味に寒い。
体に雨が当たり冷えて来て目が覚めた
飢えと寒さと教会の裏手の軒下でガタガタ震えながら一日を過ごして、気がつくと寝てた
翌日朝露に濡れながらもう起き上がる気がしない
寒いし冷えてお腹痛いし服も濡れて気持ち悪いし
井戸行っても水しかないし
異世界転移…厳しすぎませんかね?
私が思ってた異世界転移とだいぶ違うけど私らしいといえば私らしいな…
そして意識を失った。
(眠りの中で)
なんかあったかい。
あーこれが死ぬという事か…
そういえば悲惨な感じで死ぬと事切れる前に暖かくなるらしいね
本当かどうか知らないけど。
「うっ…」
うん?どこの天井?
石畳だ。
ベットにいる。
「暖炉の前であったかいなー」
ガチャ
ビクッ…
(年配の教会の服を着た優しそうなお爺さん)
「〜〜〜〜〜〜!」
「相変わらず何言ってるかわかんない。」
「ということはここは死後の世界ではなく現実世界か…。」
「〜〜〜〜〜〜?」
「あーすいません言葉がわかりません」
「もう逆らう体力も気力もないので煮るなり焼くなり好きにしてくだされ。」
「できれば苦しまないような殺し方でお願いします」
「〜〜〜〜」
何かをいうとおじいさんは部屋を出て行った。
しばらくすると
温かそうなスープと黒くて硬いパンと茹でた芋をお盆に乗せて着た。
すごくいい匂いがする…
ソレをガン見しながらヨダレが溢れて来る。
おじいさんがにこやかに小さいテーブルに置いて部屋から出て行った
食べていいよと言わんばかりの笑顔だった
断る理由も体力もないので久々に温かい食事を食べた。
「美味しい」
塩もかかってないけど豆が入った…ソレと獣の骨だろうか?ダシが出てるからほんのり味がする
茹でたジャガイモのようなものもホクホクで口の中で溶けるように美味しい
黒いパンは…
「歯が立たない」
でも浸して食べろって事かな?
無事に柔らかくして美味しくいただきました
うまい。
美味しい。
自然と涙が出てくる
今日で異世界転移5日目。
まさか温かい部屋と硬いけど清潔なベットそしてささやかながら美味しい食事をすることができた。
あの時神さま助けてくださいという願いがこんなところで叶うとは思っても見なかった。
その後朝晩おじいさんが食事を持って来てくれて3日ほどで元気を取り戻した。
とりあえずジェスチャーで深いお辞儀をした
にこやかなおじいさんは私の両手を持って
「〜〜〜〜。」
「行くところがないならここにいても良いんだよ?」
と行ってくれた気がした。
私は孤独な異世界で言葉も通じず食べるものもなく野生動物に怯えて生きる生活だったせいか。
なんて言ってるかわからないけどその場で泣き崩れた。
そして2日ほどたったある日、昼間におじいさんがやって来て木に何かを書いてあるものを見せて来た
どうやら文字を教えてくれるらしい
一つ一つ指で指しながら発音の練習
挨拶から始まり日本でいう、あいうえおを毎日練習するようになった
一日1時間ほどの手ほどきと部屋に文字板を置いていてくれたおかげで
早い段階で挨拶と簡単な言葉がわかるようになった。
そのあたりからおじいさんの日常の仕事を少し手伝うことにした。
働かざる者食うべからずだったんだけど、挨拶ができるまでは私が何かやろうとしても部屋に戻りなさいと促す形だったので部屋でおとなしく文字を覚えてた
まずは教会内の掃除
箒の単語を教えてもらい玄関口を掃除する
村の人がたまに挨拶してくれるから挨拶を返す。
主に主婦の人が話しかけてくれたり子供たちが挨拶してくれるけど
挨拶以外はまだわからないので曖昧に微笑む
教会内を拭き掃除して、
おじいさんが大変そうにしてた井戸からの水汲みを代わりにやるようになった。
だんだんとやれることや文字、言葉を知り、薪拾い、薪割り、畑の手伝い、日々の生活の雑務をこなしながら朝晩のささやかなご飯に幸せを感じて何不自由なく生活をしていた。
ある日のこと
「そろそろ名前を聞いてもいいかね?」
「名前は…ミキと言います」
「ミキか、あまりこのあたりでは聞かない名前だね」
お互いを知る会話程度を文字板を見ながら会話してた。
そのうち文字の書き方を教えてくれることになり教会横の土に書き方を教わる
村の子供たちと一緒に授業を受けた。
子供達よりも書き方ができなかったけど
それも時間とともにできるようになった。
日別に教えていることが違うらしく毎日参加してた私が必然的に学習スピードも早く
文字板を見なくても不自由なく会話や文字を書くことができるようになっていた。
その頃には村の人とも滞りなく会話できるようになり…
結構、楽しく過ごしていた。