閑話① 幼なじみの記憶(★イラスト有)
「タケルってさ。」
放課後、ベンチに腰掛けた姫乃が、懐かしそうに笑った。
「保育園のころから、ずっと優しかったよね。」
「そうだったっけ?」
「私、あのころはおとなしくて、すっごく内気だったから。」
タケルは首をかしげた。
「……ん?」
内気?
おとなしい?
そんな姫乃、いたっけ?
---
タケルの脳裏に、保育園時代の記憶がよみがえる。
友達と鬼ごっこをしていたときだった。
「わー!」
勢い余って、姫乃が何時間もかけて作っていた巨大な泥団子を踏みつぶしてしまった。
「あ……ご、ごめ――」
謝ろうと口を開いた瞬間。
ドゴォッ!!
姫乃の飛び蹴りがタケルのみぞおちに炸裂。
「私の泥団子ぉぉぉーーっ!!」
吹き飛ぶタケル。
先生が飛んできた。
「姫乃ちゃん!?」
「タケルくん!?」
ベンチで現在に戻る。
「……内気?」
「うん♪」
「……おとなしい?」
「そうだよ?」
(絶対違う。)
---
「あとね。」
姫乃は少し照れくさそうに笑った。
「保育園のころ、いじめっ子にいじめられてた私を助けてくれたよね。」
「もうタケルは私の命の恩人だよ。」
「…………。」
タケルはまた首をかしげた。
そんなことあったっけ。
思い返す。
うーん、確かに、いじめっ子三人組がいたことはいた。
しかし。
「ぎゃーーっ!」
「ご、ごめんなさいーー!」
「もうしませんーー!」
泣きながら逃げ回る三人。
その後ろを鬼の形相で追いかける姫乃。
返り討ちどころではない。
完全に狩りだった。そう。これは狩り。まるでライオンに狩られる子鹿3匹。
翌日。
その三人が、半泣きでタケルのところへ来た。姫乃との仲直りの仲介をしてほしいらしい。
「お願いだから仲直りさせて……。」
「もう姫乃さんには逆らいません……。」
「姫乃様の下僕になりたいです。」
結局、タケルが間に入り、三人に頭を下げさせて和解したのだった。
現在。
「あの時は助けてくれてありがとう。」
「……いや。気にすることないよ。」
(ボソッ)「ボクが助けたのは……たぶん、あいつらの方だよね?」
「え?」
「いや、なんでもないなんでもない。あはははは。」
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「でも、一番楽しかったのはネズミーランドかな。」
姫乃が目を細めた。
「私、ずーっとタケルの手を引いてあげてたよね。」
「タケル、方向音痴だから。私が道案内してあげたんだよね。」
「ああ、それは覚えてる。」
朝から晩まで。
「次これ!」「タケル早く!」「ほらほら!」
「ひいいいい。ちょ、ちょっと待って、休ませてよおおおおおお。」「手が。手がちぎれるううううう。」
姫乃に腕を強引に引っ張られ続けた。
またもタケルが大変な思い出で終わりそうだった。
ところが。
「氷姫のアトラクション!」
その看板を見つけた瞬間だった。
「!!」
タケルの目が大きくキラキラと輝く。
「姫乃! 早く行こう!」
「えっ!?」
今度はタケルが姫乃の手をつかみ、全力疾走。
「ちょ、ちょっと待ってぇーー!きゃあああああああああ。」
その日初めて、姫乃が引っ張られる側になった。
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「ふふっ。」
姫乃は笑う。
「懐かしいわね。」
「そうだね。」
「……でもさ。」
「ん?」
「姫乃。」
「なに?」
「ボクたち、同じ思い出の話してるんだよね?」
「もちろん。」
「……なんか細かい記憶のところで、だいぶ違わない?」
姫乃はきょとんとしたあと、
「そんなことないわよ。だいたい一緒だよ。細かいことは気にしない気にしない♪」
と笑ってごまかした。
「そっか。そうだよね。あはははははは。」
(絶対、自分に都合よく美化してるよおおお……。)
タケルは心の中だけでツッコミを入れる。
まあ、それも。
昔から変わらない、姫乃らしさだった。
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