第0話 最悪のダンジョン
ゴォォォォッ!!
巨大な手裏剣が通路いっぱいを埋め尽くした。
「伏せろ!」
眼鏡の少年が叫ぶ。四人は同時に床へ飛び込む。頭上を直径三メートルはある手裏剣が通り過ぎ、背後の壁を粉々に吹き飛ばした。
「なんて意地の悪いダンジョンだよ!」
茶髪の少年――タケルが立ち上がる。ここまで、まだほとんど無傷である。
「右三歩!」
眼鏡の少年は壁を見たまま言う。
「OK」
「次左四歩!」
タケルは何も聞かずに従った。次の瞬間。
ドゴォン!!
さっきまで立っていた床が崩れ落ちる。
「また落とし穴かよ!」
槍を持った大柄な少年が叫ぶ。
「いったい何個あるのよ!」
「二百二十三個目だ。」
眼鏡の少年が即答した。
「数えとる場合か!」
◇
黒装束の忍者オーク四十体が通路を埋め尽くす。タケルが指示をだす。
「ダイ!」
眼鏡の少年が小瓶を放る。
「ほら。後は任せた。」
「了解。」
タケルは風を操る。白い粉が敵集団へ流れる。一秒。二秒。三秒。
ドサッ。ドサッ。ドサッ。ドサドサドサッ。
敵全員が眠った。槍の少年が固まる。
「……。」
「……。なにやったん?」
「あれ?戦わへんの?」
「省エネ戦法だよ。」
「これってありなの?」
◇
最上階。
黒装束の青年が静かに印を結ぶ。
「忍法・影縫い。」
タケルたちの足元から黒い影が伸びた。
「避けろ!」
四人が散開。しかし影はさらに増える。校舎全体が佐助の術式だった。
「さすが猿飛佐助……。」
タケルが歯を食いしばる。
「強い。だが!」
◇
「姫!!」
「任せて!」
姫乃が水弓を連射。50発の水弓が佐助を襲う。辺りは爆散し、霧が立ちこめたように視界が悪くなる。何本かは佐助に命中、そのため一瞬だが、佐助の行動に隙が生じる。
と、その時。タケルが突然、地面を蹴る。
「風脚!」
轟ッ!!
風が爆発する。
タケルの体が一瞬で十メートル、二十メートル、三十メートルと空へ舞い上がり、風に流されるように縦横無尽の動きを見せつつ佐助に迫る。
「むっ?」
佐助が初めて目を見開く。
「何?風脚だと!?」
空中から草薙剣が振り下ろされる。
「草薙斬!!」
ドォォォォン!!
佐助が初めて吹き飛んだ。
◇
静寂。
佐助の動く気配はない。
その時。
カツ……カツ……
通路の奥から、下駄の音が響いた。赤と白の平安装束。九本の尾。狐耳。妖艶な美女。その姿を見た瞬間。四人全員の表情が変わる。凄まじいまでの圧力。魔力。間違いない。この美女が魔王。
「……。」
「……。」
「貴様が魔王か。」
女は妖しく微笑んだ。
「佐助、ここまでじゃ。やるのう勇者ども。どれ、ここからは私が相手になってやろう。」
その一言だけで。空気そのものが凍り付いた。
「来る!」
◇
――話は約一か月前にさかのぼる。
戦国魔王学園。
全ては一人の少女が空から降ってきた日に始まった。




