第三十話 蒼空の継承者
空が蒼く染まる。
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アークは飛んでいた。
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誰よりも速く。
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誰よりも高く。
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蒼い翼が風を裂く。
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黒竜グラドスの額。
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露出した核へ一直線。
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時間が遅く感じた。
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下では仲間たちが見上げている。
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アイリス。
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セレス。
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フィン。
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グレン。
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リリア。
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ヴァイス。
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全員が託していた。
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この一撃に。
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グラドスも気付く。
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黄金の瞳が細くなる。
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「見事だ」
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その声は静かだった。
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もはや敵を見る目ではない。
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試練を越えた者を見る目。
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そして。
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黒炎が放たれる。
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巨大な奔流。
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世界を焼き尽くす黒。
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アークは止まらない。
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蒼空のレガリアが輝く。
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風が集まる。
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翼がさらに大きく広がる。
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その瞬間。
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蒼い光が剣へ収束した。
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風。
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空。
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希望。
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全てが刃へ集まる。
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アークは叫ぶ。
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「うおおおおおおっ!!」
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黒炎と蒼光が衝突する。
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轟音。
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空が揺れる。
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雲が吹き飛ぶ。
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そして。
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蒼い光が黒炎を切り裂いた。
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真っ直ぐ。
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核へ。
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グラドスは逃げない。
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避けない。
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ただ静かに見つめる。
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「そうか」
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小さな声。
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誰にも聞こえないほど。
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そして。
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アークの剣が核へ届く。
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一閃。
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赤い核が砕け散った。
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世界が白く染まる。
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轟音。
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黒竜の身体が光に包まれる。
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巨大な翼が崩れていく。
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黒い鱗が粒子へ変わる。
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誰も動けない。
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ただ見守る。
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やがて。
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グラドスは落下し始めた。
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ゆっくりと。
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静かに。
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そして。
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最後にアークを見る。
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黄金の瞳。
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そこには敵意はなかった。
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「アーク」
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初めて。
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その名を呼んだ。
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はっきりと。
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「未来を」
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言葉は途中で消える。
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身体が光になる。
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風に溶ける。
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そして。
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黒竜グラドスは消滅した。
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静寂。
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空港を覆っていた魔獣たちも次々と消えていく。
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黒竜を核としていたらしい。
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戦いは終わった。
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アークは空から落ちる。
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「うわぁぁぁぁ!?」
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締まらなかった。
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蒼い翼も消えている。
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完全に自由落下。
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フィンが叫ぶ。
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「最後だけ格好悪い!」
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「うるさい!」
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その時。
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蒼い光。
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アイリスだった。
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創世の力がアークを包む。
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落下速度が緩む。
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ふわりと着地。
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無事だった。
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全員が安堵する。
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そして。
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セレスが突然走り寄る。
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「すごいです!」
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「勝ちました!」
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かなり興奮している。
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フィンも笑う。
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グレンも珍しく口元を緩めていた。
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アイリスも。
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心から笑っていた。
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だが。
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ヴァイスだけは空を見ていた。
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遠く。
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黒い雲の向こう。
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その先を。
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アークが近付く。
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「どうした」
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ヴァイスは少し黙った。
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そして。
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静かに言った。
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「マルクトの目的は達成されつつある」
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楽観はない。
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ただ事実だけ。
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「二つのレガリアが目覚めた」
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蒼空。
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星記。
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確かに。
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それはマルクトの計画通りでもある。
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勝った。
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だが。
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敵も進んでいる。
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その現実が重くのしかかる。
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その時。
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空船の汽笛が鳴る。
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クロノス地方行き。
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出航の時間だった。
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第三のレガリア。
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永刻のレガリア。
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新たな継承者。
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そして。
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千年前に隠されたもう一つの真実。
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旅は次の章へ進む。




