プロローグ 空から落ちてきた少女
夢を見た。
何度も繰り返している夢だ。
燃える空。
崩れ落ちる世界。
剣を握る誰か。
泣いている少女。
そして――。
『未来を託す』
男の声が響く。
聞いたこともないはずなのに、なぜか懐かしい声だった。
『走れ』
『振り返るな』
『お前だけが希望だ』
そこでいつも夢は終わる。
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「……またか」
アークは目を覚ました。
見慣れた木造の天井が視界に入る。
最近、この夢ばかり見ている。
内容は少しずつ違う。
だが最後だけは変わらない。
泣いている少女。
そして世界の終わり。
「変な夢だな」
そう呟いてベッドから起き上がる。
考えても答えは出ない。
どうせ夢だ。
深く考えるだけ無駄だった。
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窓を開ける。
爽やかな風が吹き込んできた。
深い蒼色の髪が揺れる。
遠くには雲海。
さらにその向こうを一隻の空船が飛んでいた。
ここはアルカディア。
無数の浮遊島からなる世界。
アークが暮らすフィオラ島も、その一つだった。
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「アークー!」
一階から母親の声が飛んでくる。
「朝ご飯できてるよ!」
「今行く!」
元気よく返事をして階段を降りる。
焼きたてのパンの香りが漂っていた。
いつも通りの朝。
いつも通りの日常。
何も変わらない一日の始まり。
そのはずだった。
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朝食を終えたアークは、村外れの丘へ向かった。
お気に入りの場所だ。
空が一番綺麗に見える。
暇な時も。
考え事をしたい時も。
いつもここへ来る。
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草原へ寝転ぶ。
青空を見上げる。
風が気持ちいい。
「平和だなぁ」
思わず笑みがこぼれる。
世界は今日も穏やかだった。
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だから。
その異変はあまりにも突然だった。
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空が光った。
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「……は?」
思わず声が漏れる。
太陽じゃない。
雷でもない。
空そのものが輝いていた。
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次の瞬間。
光の中から何かが落ちてきた。
一直線に。
流星のように。
アークのいる丘へ向かって。
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轟音。
地面が揺れる。
爆風が吹き抜ける。
土煙が舞い上がった。
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「な、なんだよ!?」
アークは慌てて立ち上がる。
心臓が激しく鳴っていた。
怖い。
でも気になる。
結局、好奇心が勝った。
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土煙の中心へ駆け寄る。
そこには大きなクレーターができていた。
そして――。
人がいた。
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少女だった。
銀色の長い髪。
白い衣装。
透き通るような肌。
まるで物語の中から飛び出してきたような少女。
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「お、おい……大丈夫か?」
恐る恐る声をかける。
少女の瞼がゆっくり開いた。
蒼い瞳。
空よりも綺麗だと、アークは思った。
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少女はじっとアークを見つめる。
数秒。
いや。
もっと長く感じた。
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そして。
少女の瞳から涙が零れ落ちた。
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「え?」
会ったこともない。
見たこともない。
そんな相手に泣かれても困る。
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だが少女は震える声で言った。
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「……やっと」
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涙を流しながら。
小さく微笑んで。
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「やっと会えた」
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その瞬間。
アークの胸の奥で何かが脈打った。
知らないはずなのに。
初めて会ったはずなのに。
なぜかその言葉だけが、妙に心へ響いた。
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後にアークは知ることになる。
この少女との出会いが。
七つのレガリアを巡る戦いの始まりであり。
世界アルカディアの運命を変える最初の一歩だったことを。




