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蒼空のレガリア  作者:
1章 蒼空の継承者編
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1/31

プロローグ 空から落ちてきた少女

 夢を見た。


 何度も繰り返している夢だ。


 燃える空。


 崩れ落ちる世界。


 剣を握る誰か。


 泣いている少女。


 そして――。


『未来を託す』


 男の声が響く。


 聞いたこともないはずなのに、なぜか懐かしい声だった。


『走れ』


『振り返るな』


『お前だけが希望だ』


 そこでいつも夢は終わる。


 ⸻


「……またか」


 アークは目を覚ました。


 見慣れた木造の天井が視界に入る。


 最近、この夢ばかり見ている。


 内容は少しずつ違う。


 だが最後だけは変わらない。


 泣いている少女。


 そして世界の終わり。


「変な夢だな」


 そう呟いてベッドから起き上がる。


 考えても答えは出ない。


 どうせ夢だ。


 深く考えるだけ無駄だった。


 ⸻


 窓を開ける。


 爽やかな風が吹き込んできた。


 深い蒼色の髪が揺れる。


 遠くには雲海。


 さらにその向こうを一隻の空船が飛んでいた。


 ここはアルカディア。


 無数の浮遊島からなる世界。


 アークが暮らすフィオラ島も、その一つだった。


 ⸻


「アークー!」


 一階から母親の声が飛んでくる。


「朝ご飯できてるよ!」


「今行く!」


 元気よく返事をして階段を降りる。


 焼きたてのパンの香りが漂っていた。


 いつも通りの朝。


 いつも通りの日常。


 何も変わらない一日の始まり。


 そのはずだった。


 ⸻


 朝食を終えたアークは、村外れの丘へ向かった。


 お気に入りの場所だ。


 空が一番綺麗に見える。


 暇な時も。


 考え事をしたい時も。


 いつもここへ来る。


 ⸻


 草原へ寝転ぶ。


 青空を見上げる。


 風が気持ちいい。


「平和だなぁ」


 思わず笑みがこぼれる。


 世界は今日も穏やかだった。


 ⸻


 だから。


 その異変はあまりにも突然だった。


 ⸻


 空が光った。


 ⸻


「……は?」


 思わず声が漏れる。


 太陽じゃない。


 雷でもない。


 空そのものが輝いていた。


 ⸻


 次の瞬間。


 光の中から何かが落ちてきた。


 一直線に。


 流星のように。


 アークのいる丘へ向かって。


 ⸻


 轟音。


 地面が揺れる。


 爆風が吹き抜ける。


 土煙が舞い上がった。


 ⸻


「な、なんだよ!?」


 アークは慌てて立ち上がる。


 心臓が激しく鳴っていた。


 怖い。


 でも気になる。


 結局、好奇心が勝った。


 ⸻


 土煙の中心へ駆け寄る。


 そこには大きなクレーターができていた。


 そして――。


 人がいた。


 ⸻


 少女だった。


 銀色の長い髪。


 白い衣装。


 透き通るような肌。


 まるで物語の中から飛び出してきたような少女。


 ⸻


「お、おい……大丈夫か?」


 恐る恐る声をかける。


 少女の瞼がゆっくり開いた。


 蒼い瞳。


 空よりも綺麗だと、アークは思った。


 ⸻


 少女はじっとアークを見つめる。


 数秒。


 いや。


 もっと長く感じた。


 ⸻


 そして。


 少女の瞳から涙が零れ落ちた。


 ⸻


「え?」


 会ったこともない。


 見たこともない。


 そんな相手に泣かれても困る。


 ⸻


 だが少女は震える声で言った。


 ⸻


「……やっと」


 ⸻


 涙を流しながら。


 小さく微笑んで。


 ⸻


「やっと会えた」


 ⸻


 その瞬間。


 アークの胸の奥で何かが脈打った。


 知らないはずなのに。


 初めて会ったはずなのに。


 なぜかその言葉だけが、妙に心へ響いた。


 ⸻


 後にアークは知ることになる。


 この少女との出会いが。


 七つのレガリアを巡る戦いの始まりであり。


 世界アルカディアの運命を変える最初の一歩だったことを。

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