閑話:傷痕
「…ばけもの、かぁ」
自分で言ったその言葉を、ホテルのベッドの中で再び呟く。
「…」
旧題を知っている古参からはタイトル詐欺かよ、と言われたかもしれないけど。私たちは厳密には怪異ではない。怪異発生、及びホモ・サピエンス以外の人類登場が数十年前。私は、それより前から生きている。
「………っ」
不意に、嫌な事を思い出す。こないだの事、昔の事。うるさい、うるさい、いやだ、
「………はぁ、はぁ」
過呼吸気味になりながら、半分無意識的にスマホを握っていた。
プルルルル…
「…くるしい…あい、応答して…たすけて…」
最初と最後の一言は、言った自覚はなかった。
『くろのす様!?大丈夫ですか?』
応答したのは、しずだった。何とかなった…
『今すぐあいを起こしてきます。少々お待ち下さい…』
「ぇ…ぃゃ、ぃぃょ…」
『今この状況でどうやって貴女を放置しろと!?』
「あゔっ…ごめ、怒鳴り声…ゃめて…」
『あっ…ごめんなさい…とりあえず、あいに代わります』
『…くろのす、おちついて。ゆっくり、いきをすって、はいて』
「…」
『…だいじょうぶ。わたしがいるよ』
「…」
『…いやなこと、ぜんぶ、はきだして』
「…ぅん」




