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原点回帰
「これで…良し、と」
新しくした吊り下げ看板には、今までに無い文字が刻まれていた。
『宝石・鍛冶 オブシディアン』
『時計屋 クロニクル』
「…ふぅ」
脚立から降り、額の汗を拭うくろのす。
指先にはペン型ドライバーの痕がまだ残っている。
「やっぱり楽しいものだねぇ、時計をイチから作るのも」
随分と前の話になるが、くろのすはかつてオブシディアンを始めるよりも前に時計屋を営んでいた。途中から戦争で使う兵器の製造に参加させられそうになったので、一度手放して以降、暫く触れていなかったのだ。
「………」
ち、ち、ち、ち、ち。
微かな音を立てて、秒針が廻る。60は1、3600も1。3600が24で、1。
「…っはは、久々に変なこと考えた」
時計は動き続ける。龍頭を回し忘れぬ限り。
時は刻まれ続ける。
「…そろそろ、かな」
不変なものなど無い。自分が一番よく知っている事だ。




