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第五話 悪役令嬢、婚約者と遭い思考する。

 振り返ると明るい水色の髪の青年がこちらに走ってくるのが見えた。

俺はわざとらしく大きくため息をつく。


「やっと見つけた。ご、ごめんよ。混乱を避けるために東門の方からはいったから正門がわからなくってさ。??どうした?顔色がわるいようだが……」


 息を切らせつつ青年は優しくはにかむように笑って、俺を見て話しかけてきた、


「……なんともございませんわ。ごきげんよう、殿下。わざわざお探しにならずとも入学式の講堂で待っていてくださればわたくしもそちらに向かいますのに」


 身体がすっと条件反射のように動き、俺は礼儀正しくお辞儀をしながそう答える。


 メッセルリンク・シュナッフバウワー。

宇宙銀河帝国の第三皇子であり俺、ラフィリアの婚約者だ。

皇族にしては素直で優しい人物であり、少々人が良すぎるのが問題で面倒ごとに首を突っ込む役立た……失礼、人畜無害で少し手のかかるお方だ。


 このゲームのメインキャラであり、唯一最初から主人公と接点のあるキャラでハッピーエンドは簡単、トゥルーエンドの条件が鬼めんどくさい、俺たち攻略プレイヤー泣かせのキャラだ。


ちなみにこのゲームは各キャラ3つのエンディングがあり、

相手から告白されるハッピーエンド

自分から告白してOKをもらうノーマルエンド

真のキャラエピソードを見てのクリアとなるトゥルーエンド

とあり、エンディング難易度は各キャラごとに違い、トゥルーエンドだけはどのキャラもいやらしいギミックが施されていた。


当然どのエンディングでもラフィリアは死亡する。


「そうか、よかった。君も長旅で疲れただろう。僕も疲れた……。一週間ずっとリバルトがあれやこれやとうるさくってさ」


聞いてもない苦労話をやれやれと言った顔で語ろうとする目の前の青年。感もよく頭もいいがやや破天荒な性格はよく選択肢を間違えてイラッとしたものだ。

俺はそんな嫌な気持ちを思い出して眉間にしわが寄る。その時、


「誰のせいでうるさかったかはラフィリア様は分かってくださりますから、それ以上は言わない方がよろしいかと」


突然赤毛の青年、メッセルリンクの付き人兼目付け役のリバルト・ジニアムが湧いて出たかのように彼の後ろにたち、そう冷たく言い放つ。

メッセルリンクは青ざめた顔で飛び上がりそうなほど身体をビクッと震わせ


「うわっ、びっくりした!!」


皇子とは思えぬ顔で顔のメリハリがはっきりとしている赤毛の青年の方を振り返る。


「新入生挨拶のリハーサルで少し早く講堂に入らねばならぬといったでしょう?さ、早く参りましょう。良ければラフィリア様もご一緒に」


リバルトはそう言ってメッセルリンクの襟首を掴み引っ張ろうとする。


「ちょ、ちょっとまて。私は久々に婚約者と再会したなのだ、少しくらいゆっくり話をさせろ」


「先生方もあなたがいないと話が進まぬし、なにより学院の中とはいえ、あなたの姿が見えないといろいろな人の胃に穴があくことをご自覚してください」


「それはわかるがな……」


 尚も食い下がろうとしたメッセルリンクに


「殿下っ!!リバルト様の言う通りです。多くの人に迷惑がかかりますのでお早くお行きください」


 俺は大きな声を出して子供を説教するように言う。

正直俺はコイツがあまり好きになれないタイプだった。

私に拒絶されたと思ったのだろう、棄てられた子犬のような顔になり


「……そうか、そうだな。ではラフィリアも一緒に……」


「殿下ッ!!私はもう少し院内を散歩してから行動へ参ろうと思います」


大きな声で制した後、ニッコリと笑ってそう告げる。……ああ、めんどくせぇ


「……わかった。ではまた入学式後、教室で会おう」


 そう言うとあからさまに肩を落としてリバルトに見守られながらとぼとぼと歩いて行った。


「ハァ……」


 俺はどっと疲れた。

あんなのと付き合わされるのはいい迷惑だな。

リバルトはすげーや。

俺は去っていく2人を見る。

するとリバルトが振り返り、会釈をする。

よくできた付き人だ。


 残念ながら彼は攻略対象ではなかったが、人気は高かった。冷たいクールな演技が売りの人気声優のおかげだと聞いた。

攻略対象でなかったことに切れてゲーム会社前に座り込みをしたファンもいたとかいないとか。

俺的にはゲーム中あまり印象のあるキャラではなかった。


 彼らが去り、俺はやっと一息つく。

ここで彼らと一緒に行動するわけにはいかなかった。

なぜならこの後、講堂に行く途中でメッセルリンクが困っているアイレーンを助ける、そういうイベントでこのゲームの学園生活は始まるのだ。


 俺は少し歩いて周りに人のいないベンチに腰掛ける。


「ハァ……疲れた」


 まだ初手からこの怒涛の展開。

こちらとら自分のまぬけの尻ぬぐいの方法を考えねばならんというのに。


 俺はだらしなくベンチに座って空を見上げる。

まず、一番困ったことはアイレーンの状況だ。

Cランクということは領地経営に失敗してるということだ。

これに手を入れることはこちらからはできないはず。


ではどうする?


 このまま学校を追放された先というのはどうなるんだったか?

BADend時はラフィリアの話題は出ない。そのままendと出るはずだ。


ん?まてよ?


ならラフィリアは死なないんじゃないのか?

もしくは死なずにリトライでまた3月24日に戻されるとか?

それはそれで御の字だ、もう一度作戦を考え直せる。

その案に賭けてみるのはどうだろう?


だが、リスクもある。もしリトライできなかったら?世界は続くのか?続いた場合はどうなる?

決まってる、ラフィリアは破滅するんじゃないのか?

ダメだ、持ってる知識から逸れることは即アウトだと思った方がいい。


「とにかく、アイレーンと会ってから考えるか……」


俺が腹を括ったその時


「すまない、そこのレディ。道を尋ねたいのだが……」


 ……もう慣れたよ。そうだよな。まだいるもんな。

俺は目を瞑って次の行動に出る前に心の準備をした。

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