第五十六話 変態黒幕、愉悦に浸る
「……まだ罪状が必要ですか?」
そう告げると愛しの少女は項垂れて肩の落とす。
……ああ、たまらないっ。
君の、その悲しみの表情。
怒りを含み、尚言い訳しようのない状況に絶望する様。
最高だ!!
今すぐ落ち込んでいる君を抱きしめて
「すべて僕が仕組んだことなんだ。愛する君の絶望が見たかったんだ。ごめんね。こんな僕でごめんね、でも愛しているんだ」
そう告げたい。
そしてその細い首に手をかけて絞め殺してしまいたいっ!!
だが、ダメだ。まだ茶番は終わってない。
それに自分でやっちゃナンセンスだ。
なんのためにここまで積み木を積み上げたと思ってる。
勃起が収まらぬ下半身。
全身巡る血が熱湯に変わったように感じるほど燃え上がる体の熱が僕を駆り立てるが、平静を装いながら彼女の最後の時、その第二章を楽しむためにじっと耐える。
「こんなの出鱈目です!!捏造ですわ!!メッセルリンクさまはそんなにあの女がいいのですかっ!!!」
彼女はキッと顔を上げ、怒りの形相で力いっぱい左手を振り、壁際にいる桃毛の少女を指さす。
ああ、さすがだ。期待通りだ。
最後まで足掻くんだね。いいよ、いい。最高のショーだ。
その言葉に俺の後ろにいるクズが動揺する。
「彼女と今回のことは関係ないっ!!」
そう叫ぶ。
ああ、どうでもいいよ。お前は。
クズがしゃしゃりでて僕の前にでる。
ああ、前にでなくていいよ。
……邪魔だな。
一気に殺意が沸き上がる。
「……ああ、そうだ。私は彼女、アイレーン・ドミリニオを……愛しているっ!!!」
クズが熱の入った茶番を演じる。
もっと劇的な表現はないのか。このクズは
まぁいい。
僕以外のすべての視線がどうでもいい壁女に集まる。
愛しのラフィリアも彼女を見る。
大丈夫、大丈夫だラフィリア。
彼女の答えも決まっている、YESだ。
さぁ、その時、もっと絶望してくれ!!
僕は絶望の第二幕で彼女の顔がさらに歪むその瞬間が待ち遠しくて待ち遠しくて表情を消し切れず、口の端が自然に上がる。
「わ、私は……」
桃毛が言葉に詰まる。
ラフィリアは絶望で顔を背けて俯く。
だめだ、こっちを見てくれ。その絶望で歪んだ顔を俺に見せてくれ!!
俺は彼女に駆け寄りたくて一歩前にでた。
「私は、殿下とご一緒になることはできません。ラフィリアと、ラフィリアと共に生きると決めていたのです」
……
え?
ここにいる誰もが呆気にとられた。
俺は桃毛を見る。彼女は晴れやかな顔で頬を赤らめてラフィリアを見る。
は?
俺はその視線の先のラフィリアを見て
彼女が桃毛の言葉で顔を上げて、嬉しそうに頬を赤く染めてニコリを笑い
「……ありがとう」
そう呟いたのが見えた。
は???
え???
僕の計画は?
なんだこの茶番は?
「そこまでだ!!全員動くな!!」
突然少し高い男性の声が会場に鳴り響き、
武装したドローン兵が室内にたくさん入ってきて、僕と皇子を取り囲む。
ツカツカと前に出たのは宇宙銀河帝国対象、ライヴァーンであった。
「な、なにごとだ!!」
そう叫ぶ僕ことリバルトは、急激に状況がレッドゾーンに転じたことを心の中で理解した。
プロローグの補填です。
別に意味はない。
視点が変わるのでここで一話とさせてもらいました。