公開演習、二日目②
案内の通りすがりに、透明なプラスチックで挟まれたメニューを手に取りつつ空いている二人席へ案内します。
「こちらの席へどうぞ」
そう、『セン』と名乗る女性に促します。
センは淑女らしく椅子に座ります。育ちが良さそうです。
まあ、ミニドレスを着ていますし。
「こちらがメニューになります。お決まりでしたらこちらのベルをお鳴らしください」
メニューのプレートを渡してベルを指してから一礼してその場を立ち去ります。
―――服装がミニドレスと場違いですから、恐らく基地にある迎賓館(聞くに総合演習の時に連合加盟国や非加盟国の要人を招いているそうです)から来た人かもしれません。そちらのほうで何か食べていそうですし、注文するならお茶とデザートでしょう。
意外とすぐにベルを鳴らすかもしれませんね。
そう思いながらも、出来上がった料理を運んでいく。
食べている人達の表情から、その料理は彼等を満足させているのは間違いないでしょう。―――一部の人達は意外そうな顔をしていますが。
そうして。
「うん。これと紅茶にしよ」
先ほどの女性―――セン様の後ろを通り過ぎようとした所で、彼女がベルを手に取りました。
「お決まりですね。お伺いいたします」
聞こえていれば、見えていればすぐに対応出来ます。
「うわっ。―――ま、まだベルを鳴らしてないわよ?」
驚きつつも、ベルを鳴らすセン様。さすがに後ろから声をかけられるとは思っていなかったようです。
「一名様なのと、お客様はサンドイッチ等の軽食よりもデザートを選ぶと思っていましたので。それと声が聞こえてましたから」
一人なら複数で来るよりも注文で何にするかの相談はありませんし、悩んでもそんなに時間はかかりません。
あとは私が対応出来るか、ですけど。
さて、注文を伺わなければ。メモを取り出して訊こうとしましたら、セン様が目尻を摘まんで困った表情を浮かべてました。
「……どうかされました?」
「あ、いえ。なんでもないわ。知り合いの執事やメイドより家事で有能な人を思い出しただけ。その人、人に任せればいいものを自分でやっちゃうのよ?」
おや、私と似たような人が。
「私と同じような人がいるのですね。今日はお許しを得て接客していますが、普段は私もメイドさん達の仕事の何かを無断でやってますから」
その返事にクスクスと静かに笑いながら、普段やっていることを口にしてしまいました。
「……はい?―――今日はお許しを得て?」
―――あっ……。
「あっ……」
心の声が口から出ました。どう、はぐらかしましょうか。まあ無理ですけど。
「本職、メイドさんでもウェイトレスでもないんですよねー……」
彼女にだけ聞こえるように、小さな声で答えます。
「まさかここのメイド。皆、本職メイドではないとか言わないよね……?」
周りを見ながら訊ねるセン様。私の一言で、全員がメイドではないと考えたのでしょう。
「私だけですよ? あと、この事は内緒で……」
人さし指を口元に当ててお願いします。
もっと言えば、私の性別も違うのですけれど。
「お話はこれぐらいにしまして……。ご注文は?」
早く切り上げないとボロが出ますし。
「そ、そうね。イチゴのパフェ、とやらと紅茶を一つ」
「イチゴのパフェと紅茶ですね。かしこまりました」
そう言ってメモに書き込み頭を下げて、厨房へ向かおうとして。
「あの……」
セン様に呼び止められてしまいました。何か注文し忘れたのでしょうか?
「はい。何でしょうか?」
当然のように笑顔で応対します。
「お名前、お訊きしても?」
おや、と意外な言葉が。気に入られたのでしょうか?
まあ、私なんてここらでは珍しい―――もっと言えば全く居ない黒髪の持ち主ですし、華奢な体格と可愛らしい顔立ちともあって目立つといえば目立ちます。お客様の中でも男性陣の視線が刺さるのが悲しいところ。運よくか偶然か、テキパキ動いているからか、まだ名前を訊ねられたり話し掛けられていません。
―――しかし、名前を訊ねられたりしたらどうするか考えてないんですよね。
まあ、別に本名でも問題ないですよね。セン様、どうやら軍属ではないようですし。
「チハヤユウキと申します」
優雅に笑顔を作って軽く会釈しました。
それ以降、対した出来事もなく――――――とはいかず。
「――――――!」
男の怒鳴り声が聞こえてきました。結構な早口でよくききとれませんでしたが。
方向からして入口の方ですね。
実際、その方へ視線を向けると軍服を着た金髪の男性がメイドに何か怒鳴りつけていました。男の後ろには三人。どうやら連れのよう。
対するメイドさんは―――サラさんはペコペコと頭を下げて何か説得しています。
ああ、やっぱり出ましたね。
そんな人が現れるのは私の中では予想済みで想定内です。
とりあえず片付け最中なのでそれを置いてすぐに向かうとしましょう。
「だ か ら ! 早く案内しろと言っているんだ!」
はい、予想通りです。
立て看板に書かれた『名簿に記入してお待ち下さい』という順番待ちが出来ない人です。
「ですから……」
対するサラさんは今にも泣きそうです。早く助けてあげないと。
「どうされましたか?」
自然に聞こえて、されどやや大きい声で訊ねました。サラさんは振り返って私の姿を見て少し安堵の表情を浮かべます。
「あ、チハヤさん。その……」
「だいたい把握しております。―――サラさんは九番へ向かって下さい」
口ごもりながらも説明しようとする彼女を制して、次の指示を出します。
『九番』。業界用語でいうところの休憩です。このまま他の仕事をさせてはお客様に心配をかけるでしょうし、この事が尾を引いて支障が来してはいけません。
「大丈夫ですよ。その分、私が働けばいいだけです」
実際は二、三人欠けても大丈夫なように人員を配置しているのですが。
通りかかったクララさんにサラさんの付き添いをお願いして、
「……それで、何かありましたか?」
営業スマイルで後ろで待つ軍服の男性四人組へと振り返ります。
四人ともがっちりとした体型ですがそこまで偉丈夫というほどでもありません。軍人らしい、といえばらしい体格です。背も私より高い人達です。まあフィオナさん(185センチ)よりは低いですが。
左から丸眼鏡で地味めな、されど目付きは剃刀のように鋭い目の男。中央に金髪碧眼の色男。さっきから怒鳴りこんでいる人ですね。右にくすんだ赤髪を刈り上げた男。後ろには茶髪で厳つい顔の男。
「ああ、早く私達を案内したまえ」
中央の色男が偉そうに言いました。
「お名前をお聞きしても?」
名簿を手に取りつつ訊ねます。多分ですが、書いてないでしょう。
その言葉に、色男は険しい顔がさらに険しくなりました。何故でしょう?
「貴様……。私の事がわからないのか?」
「はい。会った事もなければ写真つきの書類でも新聞でも見たことはありませんので」
そんな事を言われても困ります。
「……ヴィーヴォ・シェーンフィルダーだ」
不機嫌そうに答えました。案の定、名簿には書いてありません。―――というか、その名字。アルペジオの親族の方ですか。
「え……?」
「殿下じゃないか……」
待っている方のヒソヒソとした声が耳に入りました。やはりアルペジオの親族―――つまりはシェーンフィルダー王家の方のようです。まあここでは関係ありませんが。
「―――申し訳ありません。こちらに―――」
「君も彼女と同じ事を言うのか?!」
御名前が書かれておりません、と続けようとしたらヴィーヴォ殿下に怒鳴られました。
「名簿に記入して、順番が来るまで待てと? ふざけるな! いいから案内しろ! 我々を待たせるな!」
「出来ません。これはルールです」
キッパリと答えます。この程度で動じません。
「ルールを守れないのであれば、退去をお願いします。他のお客様の迷惑です」
その言葉にどよめきが広がります。まさかの一言だったのでしょう。
悪質なクレーマーは追い出すに限ります。誰であれ。
「私が育った場所では『お客様は神様』という言葉があります。―――が、それはあくまでこちらが提示したルールを守れるマナーのよい人に対してです。マナーの悪い人が他の方に迷惑をかければ、それはとても気分の悪いことでしょう。食事を提供する側として、それは許しません」
目を細めて、睨み付けます。そして躊躇いなく言い放ちます。
「お客様が今日の昼食をここにと選んでくるように、私達もお客様を選ぶ権利があります。―――貴方達は、この食事処に相応しくありません。今すぐ立ち去って下さい」
僅かな静寂。まさか王族相手に『出ていけ』と言うとは思わないでしょう。というか普通は言えません。
「……黙って聞いてりゃ言いたいだけ言いやがって!」
後ろに立っていた厳つい顔の男が掴みかかってきました。意外にも短気なようです。
右手に持ったボードをスナップを効かせつつ上に、それなりの力で放り投げます。
掴もうとした相手の右手を左手で掴み、右手を相手の胸ぐらへ。左足を後ろへずりつつ体を左へ捻って振り返る。
あとは相手を背負いつつ引っ張って――――つまりは。
「……!」
つまりは、背負い投げ。
相手が背中から離れたところを見計らって両手を手放します。こうすると気持ちよく飛んでいきます。伊達に神父やマフィアのナイフ使いに投げられていませんし、壁に叩きつけられていません。
男は驚愕からか受け身をすることなくみっともなく地面に落ちます。しばらくは動けないでしょう。
周りも驚嘆の声が上がります。華奢な女の子が大男一人軽々と投げたのだからでしょう。
回転しながら落ちてきたボードを左手でキャッチ。グッドタイミングです。手に持っていても邪魔なので元の場所に戻します。
「危ないですね。女の子に乱暴はしてはいけないと学びませんでしたか?」
振り返りつつ微笑で訊ねました。
「貴様!」
今度はくすんだ赤髪の男が右腕を振りかぶっていました。
今の言葉、聞こえなかったのでしょうか?
ため息しつつ、右手を前に、素早く、相手の右拳へと合わせて、タイミングよく腕を退いて。
「…………!」
自分でも見事、と思うぐらいタイミングよくその拳を掴みました。
あとは近付きつつその腕を捻りながら下へ。もちろん相手が痛がるように、です。
「あがっ!」
苦悶の音。
あとは左の掌底で顎を殴ります。掌底だと大怪我させない上に頭を狙えば脳震盪からの昏倒が狙えます。
そして思い通りに赤髪の男はその場にどさりと倒れました。
起こす時は鳩尾から蹴り上げて起こすとしましょう。
「さて、それでは……」
と、言いかけたところで今度は眼鏡をかけた男が何も言わずに仕掛けてきました。ボクシングのような構えです。
仲間想いもいいですけどねぇ……。
とりあえず相手のストレート、フックの連打を両手で捌きます。
次の右のストレートは左へ避けて、右手を下から振ってその腕を上に挙げさせます。
そして足払いで相手を尻もちをつかせます。
そしてトドメは。
「……ひぎゅ……!」
股間への踏みつけ。急所攻撃。もちろん捻りを加えて。
見ていた男性の方々は仲良く目を反らします。一部には股間を押さえる人も。
追撃も同じく股間へ。
「うわぁ……。えっぐい……」
聞き覚えのある、お腹を空かせてそうな王女様の同情の声。
んー。あともう一撃加えてあげますか。
そう判断してもう一度踏んで捻っておきます。気絶しない程度には手加減しています。これでこの人はしばらくは動けないでしょう。
案の定、股間を抑えて悶絶しています。
「さて、お引き取り願えますか?」
口をあんぐりと空けて呆然としている残り一人へそう言います。
「……な、何者だ君は……」
ヴィーヴォ殿下の問い。男三人を難なく無力化したからでしょう。
「そうですね……。よくいるメイドさんです」
『おどけて言わないでください。男三人を軽々と叩きのめすメイドがいるわけがないかと。もはや戦闘メイド』
遠くからのHALの指摘。言いたいことはわかりますが。軽くセントリーロボットを睨み付けるとそさくさと自分の仕事に戻って行きます。
「チハヤさん。こちらに名前を書けばよろしいのですね?」
後ろからこれまた聞き覚えのある女性の声。
「はい。混雑中なので少々お時間を頂きますがよろしいでしょうか?」
「おいっ! 私を無視して……」
振り返って応対する私に対し肩を掴むヴィーヴォ殿下。ですが、その手もすぐに力が抜けて下へと落ちます。
その原因は、私の視線の先に。
「ええ、構いませんわ。そちらが提示したルールは王族と言えど守らないと、ね?」
名簿に名前を書き終えた女性が微笑んで了承しました。
セミロングのアッシュブロンド。色白で人形かのような儚げな容姿。白を基調に所々に青を指したロングスカートに白のブラウス。その上にはデニムのジャケットを着ています。
その人は、ストラスールの王女が一人にして長女。継承権最下位。
アリア・シェーンフィルダー殿下でした。
その後ろにはアルペジオと、十二歳ぐらいのウェーブのかかった金髪年相応に可愛らしい少女―――彼女の妹のアルフィーネが。
意外な人物に、私は驚きます。表情には出しませんが。今日、お見えになられるとは聞いてませんし、どうしてここにいるのでしょう。
「それと―――お久しぶりですね。チハヤさん。お元気でしたか?」
そんな私の心の声など知るよしもなく、挨拶のお言葉をかけて下さいます。
「はい。お久しぶりでございますアリア殿下。今日はどうしてこちらに?」
アリア殿下は病弱な人です。簡単にあちらこちらへ出掛けるのは難しいはずです。各国の要人も見に来るから、彼等と話す用事のついで、でしょうか。
「フォントノア騎士団の食事が昼食として提供される、とアルペジオから聞きまして。以前、アルペジオが『チハヤが来てから三食から間食、お茶にデザートまで劇的に美味しくなった。お姉様にも食べさせたいわ』なんて言っていたので、良い機会ですし、いてもいられず」
帰ってきた答えは、予想の斜め上でした。
異母姉妹とはいえ、アルペジオの姉です。理由に血筋を感じられます。
きっと周りの人達を説得―――上手いこと理由を作って、医者からのお墨付きという理論武装して説き伏せて来たんでしょうね……。
過去に一度家出した経歴のある御方ですから、それぐらいやっているでしょう。この人、行動力はあるのです。
恐らく、シスターとの出会いもあり更に増したと思われます。きっと、を通り越して確実と思われますが。
「あなたを驚かす為にアルペジオに黙ってもらっていたのに……。少しも表情が変わらなかったのは残念です」
「シスターから『いつでも平常心を心掛けること』と言われてますので」
驚いてますよ、と付け足した所で後ろからヴィーヴォ殿下の割れた声が発せられます。
「アリア、姉さ……ん。どうしてここに……? このメイドとも知り合い……?」
軽く青ざめるヴィーヴォ殿下。彼にも意外な人物だったようです。というか、来ることを来ていることを知らなかったような口振りです。教えられてないから当然でしょうが。
「先程語った通りです。驚き過ぎて左から右へ話が流れてしまいましたか? 人の話はちゃんと聞きなさいと言っているでしょう。こういうところから駄目ではこの先が思いやられますわ」
「……はい」
叱るアリア殿下とやや小さくなったようなヴィーヴォ殿下。力関係が察せられます。
継承権最下位とはいえ、姉は姉。頭が上がらないんでしょう。行動力も家出や皆に内緒で出掛けるぐらいにはありますし。
「交友関係はともかく、人を見る目もありませんね。チハヤさんが何者かわからないなんて、身内とはいえお恥ずかしいかぎりです」
「……何者なんです? このメイドは」
その問いに意地悪そうな表情を浮かべたアルペジオが答えます。
「フォントノア騎士団における、私の部下。要するに騎士団員にしてリンクスパイロット。そして騎士団の炊事係のリーダー。今日のメニュー、調理指導、采配。ウェイトレス係の指南まで。―――今日一番の働き者ね」
えぇ?! という声が周りから発せられました。メイド服着た少女の素性が意外すぎたようです。もっと驚きの事実はあるのですが。
それにしても、とよろよろと立ち上がった三人―――若干一名は股間を押さえながら内股でしたが―――を見ながら棘のある事を続けて言います。
「この人達軍人として大丈夫かしら? いくらなんでも見た目で油断したとはいえ無様にやられすぎじゃない? 普段の訓練温いんじゃないの?」
「「「……ごもっともです」」」
三人揃って情けない言葉が返ってきました。
「あと、付け足すならフランの教え子、ですね」
その一言が、さらにヴィーヴォ殿下を青ざめさせます。
「フラン? まさかフランチェスカ・フィオラヴァンティの事か?!」
この人もどうやらシスターことフランチェスカ・フィオラヴァンティの事を知っていたようです。
「そうですよ。彼女はその教え子の一人です」
実際はちょっと複雑なんですけどね。
「あ、あんな奴のなんて構ったら……」
そのアリア殿下の言葉を聞いた瞬間、彼はそう言って踵を返そうとしましたが。
「今、な ん と 言 い ま し た か ?」
「今、な ん と 言 い ま し た か ?」
見事なぐらいに、アリア殿下と声がハモりました。
とても聞き捨てられない台詞を吐きましたね、この人。
逃げ出す寸前でその顔面を左のアイアンクローで捕らえます。
「あんな奴? 故人とはいえ、私の恩師をそんな風に言うとはいただけませんね……?」
私が言おうとした台詞そのままが、アリア殿下の口から出ました。
「あ、が……。離…………」
「安心してください。利き手じゃないほうですよ。これなら痛くないですね?」
と言いつつ力を加えます。割りと痛いらしいく、抗議のつもりか腕をポンポンと叩きます。
「あ、懐かしい。フランと同じ台詞まわし」
「よくシスターのアイアンクローを受けたり見たりしてましたから。―――ところでアリア殿下。この無礼者をどう処分しましょうか?」
「そうですねぇ……。十字架に張り付けてロープで逆さまに吊って火炙りですね」
「よく言っていましたね、その台詞も。実際はロープでベランダから宙吊りなんですけど」
「それ、存命中、フランはよくやっていましたね。主に姉妹を泣かしたり悪戯した王子達への制裁で」
とても剣呑な会話。全部笑顔で進んでいるのだから余計恐ろしく聞こえます。
今からやりますか? という、とてもいい笑顔のアリア殿下の言葉が引き金でした。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!」
私の手を振りほどいて、ヴィーヴォ殿下は脱兎の如く逃げて行きました。余程のトラウマがあるようです。
まあ、実際はトラウマになるレベルの制裁をするのがシスターなのですけど。
「殿下! お待ちを!」
厳つい顔の男がそう言って彼の後を追いかけて行きました。残りの二人も続いていきます。若干一名は走りずらそうでしたが。
「最初からチハヤさんの言う事を聞けば、みっともない恥を晒すことなく美味しい昼食を食べることができたのに」
ふう、とため息をつくアリア殿下。この口振りからして最初の方から見ていたようです。
「いつから見ていましたか?」
そう訊ねると、アリア殿下は顎に指を当てて見上げます。
「んーと……。ヴィーヴォが『君も彼女と同じ事を』と言ったあたりからですね」
ほとんど最初からじゃないですか。
早く割って入ってくれればもっと楽に出来たのに、と思っているとアルペジオが教えてくれました。
「すぐに割って入るのもよかったのだけれど、アリアお姉様が『成り行きを見たい』って」
いい性格してますよ、ホント。
「まあ、追い払えましたし、私は仕事に戻るとしましょう」
ふう、と一息ついてテーブルを見渡します。
さっきの間に二つほどテーブルが空いたようです。入り口で言い合っていたから、お客様を案内することが出来なかったようです。これは早く埋めていかなくては。
「三名でお待ちのローリー様」
名簿を眺めて、チェックされていない名前を読み上げるのでした。




