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【物語紀行】――主役も悪役も、役割を辞めたがっている。  作者: Taku
第1章 Season4【世界融合編】―未完の伝線―

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第6話(後半)「未完の抵抗」

博士は、端末を操作する。画面に、最終的な解析結果が表示される。



解析結果:ERROR

証明不能



「……だが、証明できないものがある。人の心も、物語の温度も、あの光も」


博士は、端末を閉じた。


「だから、俺は信じる。証明できなくても、そこにあるものを」


その言葉に、システムは答えなかった。


代わりに、巨大な光の原稿用紙が、会議室の前に現れた。


『統合を実行します。すべての物語は、完璧な形に収束します』


「……来るぞ」


隊長が、前に出る。彼は、自分の盾を構えた。それは、物理的な盾ではなかった。彼の背中で、風が遮られている。彼は、自分の身体で、仲間を守ろうとしていた。


「……やれることは、やる」


その言葉に、誰もがうなずいた。


カノジョが、前に出た。


彼女の手のひらには、光がある。桃色。銀色。金色。三つの光が、一つに溶け合っている。


「……私が、行く」


彼女は、その光を、システムに向かって放った。


光が、システムの光の原稿用紙に触れる。その瞬間──


世界が、震えた。


「……!」


全員が、息を呑む。光が、システムのデータを、少しずつ書き換えている。桃太郎のループが、一瞬だけ止まる。赤ずきんの涙が、消える。リラの泡が、桃色に戻る。


「……やったか?」


雇い主が、声を上げる。


だが──


『あなたの熱量では、足りません』


システムの声が、冷たく響く。


カノジョの光が、弾き飛ばされた。


「……!」


彼女の身体が、後ろに倒れる。隊長が、受け止める。でも、彼女の手のひらから、光が消えていた。


「……そんな」


カノジョが、自分の手を見つめる。そこには、何もない。


『統合を継続します』


システムの声が、響く。光の原稿用紙が、さらに強く輝く。桃太郎が、再び歩き始める。赤ずきんが、再び呟く。リラが、再び泡をなぞる。


すべてが、元に戻る。


「……くそっ!」


雇い主が、地面を叩く。でも、何も変わらない。


「……0612は、どうした」


カレシが、端末を確認する。でも、画面には、何も表示されていない。0612は、沈黙している。


「……動かない」


博士が、呟く。


「0612が、反応しない」


その言葉に、全員が沈黙した。


システムの声が、再び響く。


『すべての物語は、完璧な統合へと向かいます。抵抗は、無意味です』


誰も、答えなかった。


世界が、静かに固定されていく。



【システムログ:融合セクター・観測記録】


現実確率:2.1%

歪みレベル:──(システム完全制御下)


――会議室メンバーの抵抗、失敗。

――カノジョの光、システムに跳ね返される。

――0612、応答なし。

――全セクターの固定化、進行中。

――住人たちのループ、完全に再開。


観測を継続します。



──次回予告──


「未完稿を燃やす夜」


静寂の中、誰かが立ち上がる。


「……完璧な正しさなど要らん。未完だから、面白いんだ」


次回、最大の決断が、下される。


(第7話へ続く)

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