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第99話 真面目モードに切り替えます

「お遊びは終わりです。真面目に攻略します」


「師匠、お遊びで記憶を消された人の身になってください。と言うか、師匠。真面目って言葉知ってたんですね」


「イラリアは私たちが今後どのように動くか知ってますか?」


「綺麗に無視しましたね。教わってないので、知りません」


「では、仕方ないので、連絡します。まず、ガダレッラ領には主要な都市が5つあります。ガダレッラ家は領都ザランドムと残りの4都市のネットワークにより、領国を支配しています。ザランドムは4都市の中心に位置するようになっているので、外敵には面していません。では、イラリアに聞きます。この場合、どこから攻めるのが正解だと思いますか?」


「4つの都市をそれぞれ落として、4方向からの同時攻撃……ですか?」


「テストなら、それで正解にしましたが、今回は不正解です。正解はザランドムを最初に落とします。ザランドムはネットワークの中心です。ここを失えば、敵は大きく混乱します。イラリアは頭が斬り落とされたらどうなりますか?」


「死にます」


「違います。頭を失った衝撃で混乱します」


「私はアンデッドか何かですか? そんなことされたら即死です」


「え? でも、私の辞書には致命傷までは気合で治るって書いてありましたよ?」


「その辞書早く燃やしてください。ついでに出版社も教えてください、クレームを入れます」


「まあ、つまりはザランドムを攻撃することが最も有効な打撃になるという事です」


「でも、ザランドムは敵地のど真ん中ですよね? そんなところに侵入して、挟撃されたら大変じゃないですか?」


「考えてみてください。私たちが何のために敵主力を全滅させたかを。良いですか? ガダレッラ家の戦略は主力でガット軍に大打撃を与えることで、ガット家の軍事行動をしばらくの間、大人しくさせます。その後、攻撃してくる帝国軍を都市ネットワークを駆使して防御し、撤退に追い込むというのが戦略です。しかし、私たちはガダレッラを出し抜き、敵主力の全滅に成功しました。つまり、敵にはほとんど戦力がありません。残っていたとしても、都市を守るために残しておいた各都市の守備隊だけです」


「でも、ザランドムの守備隊と4都市の守備隊を動かせば挟撃できますよね?」


「守備隊は本当に守備するだけのお粗末な物です。ガダレッラのドクトリンは守備隊が防戦し、時間稼ぎをしている間に主力が準備を整えて撃破すると言う物です。つまり、主力が存在しなければ守備隊は機能をしません。そのドクトリンを採用しているため、守備隊には野戦と言う物を期待していませんし、準備もないので出来ません。それを理解している指揮官は動かさないはずです」


「ザランドムを攻略できることは分かりましたけど、どうやって補給をしつつ、ザランドムに行くんですか? 敵地のど真ん中ですよ?」


「ザランドムに行くためのルートはいくつかあります。もちろん4都市を経由する物もありますし、ないものもあります。今回は経由しない物を使います。当然ですよね? そのうえで、どのルートを通ったとしても、小規模、中規模砦があり、そこを落とす必要がありますが、脅威は低めです。また、補給に関しては敵主力の置き土産が大量にあるので大丈夫です」


「敵地に入ったら引き返せませんよ? 良いんですか?」


「この選択肢以外はありません。将軍!」


「はっ」


将軍がイラリアの背後から現れる。


「え? どこにいました、この人? 気配が全く無かったんですけど?」


「キャラが薄いからじゃないですか?」


「よく、本人の目の前で言えますね。他人への思いやりが無いんですか?」


「将軍、5分後に進軍を開始します。準備の間に合わない兵士はなで斬りにしてください」


「かしこまりました」


「拒否するという事を覚えて欲しいですね」




私たちは軍をまとめ、一番近くの砦を襲撃した。

当然のことながら、猛烈な抵抗があったが、何とか砦を制圧できた。


「主力がいないのに、抵抗が激しかったですね。てっきり既に心が折れているかと」


「何言ってるんですか? 私たちの情報封鎖は凄まじいんですよ。おそらく、主力を失ったことは知りません。それどころか、私たちがガダレッラ領に侵入した事も、今、初めて知ったんだと思いますよ」


「え? 何でですか? 主力を失ったという話を聞いたら、抵抗をやめて早く降伏しそうじゃないですか?」


「そのビックニュースはザランドムを包囲している時に使いたいのと、ガダレッラ家の当主は地方で新たな拠点を作るのに忙しく、ザランドムにいません。この隙を突きたいので、あえて、危機的ではないという風に演出しています。危機的状況だったら、引き返してきますからね」


「まあ、何となく理解できましたけど、今後も砦をいくつか制圧しないといけないんですよね?」


「はい」


「既に気が重いんですけど」


「イラリアは仕事をしていないのに気が重いんですか? 将軍なんて、ストレスで胃が89カ所ほど穴が開いてますよ?」


「そんな状況で働かせるなんて鬼ですね」


「労働は至上の喜びですから」


「そういうことは自分が働いてから言ったらどうですか?」


「私は資産家であり教祖なので、お金と信者に働かせているので大丈夫です」


「何が大丈夫なのか分からないんですけど?」


「教祖様、捕虜はどうしましょうか?」


将軍が話しかけてきた。


「薪は足りてますか?」


「師匠、何を考えたらその質問が出るんですか?」


「仕方ないですね。蒸し焼き法で記憶を消したのち、解放してください」


「調整が甘くなっているので、名前も飛びますがよろしいですか?」


「将軍さん、それのどこがよろしいのか教えて欲しいんですけど?」


イラリアが将軍に言う。


「イラリア、割り込まないでください。耳障りです。情報が漏れないのなら、それで構いません」


「いや、普通に構うんですけど?」


「では、そのように」


「私の言葉は無視ですか?」

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