第97話 私は感動のあまり涙が止まりません
私たちが到着すると既にガダレッラの主力とガット家の兵士が衝突していた。
なので、私たちは計画していた進軍路を変更して、ガダレッラの主力の背後に布陣した。
「あの様子を見る限り、ガット家の方がかなり押されている様子。将軍、今すぐに攻撃を開始してください」
「かしこまりました」
将軍が伝令の兵士に目をやると伝令の兵が走り、どこかに消えた。
笛の音が聞こえた。
突撃の合図だ。
私たちの勇敢な戦士がガダレッラの主力に向かって攻撃を開始した。
ガダレッラは前後の挟撃と言う形になり形勢が不利になった。
しかし、主力と言う事もあり撤退はせず、2部隊に分け、片方をガット家にもう片方を私たちに向けた。
ただ、ガット家の方に向けた兵の方が多いようだ。
おそらく、ガット家の兵を壊滅させ、その後に私たちを攻撃する予定なのだろう。
半数以下の兵士で時間稼ぎしようだなんて、私たちも甘く見られたものだ。
「砲兵隊に敵をいつでも砲撃できるように伝令を」
「かしこまりました」
「師匠? この敵味方が入り乱れる状況で砲撃は無理だと思うんですけど?」
「問題ありません。私たちが用意している魔導砲は5門ほど、本格的な砲撃をするつもりはありません」
「じゃあ、何のための魔導砲なんですか?」
「それは、時間が経てば分かります」
兵士が走ってきた。
「報告! 敵、前線を突破。敵本陣に攻撃を開始します」
案の定、殺る気満々の聖戦士相手では敵の主力の半数ではもたなかったようだ
「分かりました。引き続き、攻撃を継続してください」
「はっ」
伝令の兵士は走って陣から出て行った。
私がお茶を楽しみながら、結果を待っていると、再び伝令の兵が来た。
「敵軍が白旗を上げています」
「砲兵隊の出番ですね。白旗を持つ兵士を白旗と一緒に爆破してください」
「はっ」
また、兵士が走って出て行った。
「は? 師匠、何を考えているんですか?」
「何か変なことがありましたか?」
「敵は白旗を揚げてるんですよ?」
「イラリアは分かってませんね。私たちは敵の主力をここで殲滅しないといけません。生き残られると後々が面倒なことになります。つまり、ここで一人残らずおさらばです。私たちも、陣から出て目視しましょう」
私たちは陣地から出て、敵の主力を視認する。
砲撃の音が聞こえると白旗を振る兵士が白旗と主に爆散した。
「敵の兵士は勇敢ですね。この状況で降伏しないなんて、ああ! なんて立派なんでしょう! 私は非常に感動しています。後世の歴史で彼らは勇敢な兵として讃えられることでしょう。ああ! なんと素晴らしい。あ、記録をお願いします」
書紀の兵士に命令して、ガダレッラの兵士の勇敢さを讃える文章を書かせる。
そして、彼らの勇敢さを見て、私が感動のあまり、涙していると書かせた。
「前回は魔王領だったので情報封鎖が出来ましたけど、今回はどう考えても、隠蔽は無理ですよね?」
「そこに関しては大丈夫です。良い策があります」
「師匠の策で良かったと思えたことなんて一度もないような気がしますけど」
再び敵が白旗を掲げる。
再び白旗と兵士が爆散した。
「おい! さすがに二回目はダメでしょう!」
「何言ってるんですか、イラリア? 敵は勇敢なんですよ? 白旗なんて揚げるわけがないじゃないですか」
「いやいや、今見てましたよね?」
「え? 白旗なんてありましたか?」
私は近くの護衛の兵士に聞く。
「自分には見えませんでした、教祖様」
「ほらね。イラリアは長旅で疲れているんですね、休みますか?」
「いやいや、どう見ても白旗が見えましたよね?」
イラリアが護衛の兵士に聞く。
「自分には見えませんでした」
「絶対におかしい」
「待って? お茶が冷めているんですけど? 何で冷め終わる前に敵が全滅してないんですか? 将軍に檄を飛ばしてください。あと、スピードは命だという事、私が期待している事を改めて教えてきてあげてください」
「脅迫ですか?」
「応援です。早くしてください」
私は伝令兵に命令する。
「かしこまりました!」
伝令の兵士が馬に乗り、前線の将軍の所へ向かった。
「いつまでティーカップを持っているんですか? 本陣に置いてこれば良かったじゃないですか?」
「私は戦地でも生活スタイルを曲げる気はありません。私の優雅さの維持のためにも、これは必須です。ちなみに、どれだけ矢が飛び交っていても、どんだけ敵兵がなだれ込んできても、私は3時のおやつを欠かしたことがありません」
「何の自慢ですか? あと、今は午後の3時でもないんですけど? 何よりも、優雅さを語る前に、その性格を何とかしたらどうなんですか?」
「あ、攻勢が強まりましたね。私の応援が将軍の力になったようですね」
「粛清の恐ろしさが強さに変わりましたね」
「何言ってるんですか? 私が応援と言ったら応援です。異論は認めません。時間がかかりそうなので本陣で休んでいましょう」
「師匠が何しに来たのか分からないんですけど?」
私たちが本陣に戻り、戦闘が終了するまでの間に何回か砲撃が行われる音がした。
敵は砲弾にも負けず、最後の一兵になっても、戦い続けたようだ。




