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第91話 私、褒められることしか、してないと思います

さらに、2日経った。

帝都は私たちの手によって、完全に平和を取り戻した。


「カーショさん、太陽、月神殿はどうなっていますか?」


「聖戦士の管理下の下、封鎖しています」


「では、今日中、最悪でも明日中には更地に戻しておいてください」


「かしこまりました」


カーショさんが退出する。


「それ、絶対に反乱が起こりますよね?」


イラリアが心配そうに言う。


「それに関しては問題ありません。既に帝都の住民には絵踏みをしてもらい、両神殿とは決別してもらいました。ちなみに、抵抗もしくは一瞬でも躊躇した人間は即座に全財産没収の上、帝都から追放されました。素晴らしい臨時収入でした。半分は帝国の国庫に……、2割……1、……気が向いたら国庫に送ります」


「問題しかないと思うのですが? 師匠は帝国の人から相当恨まれていますね」


「そんなことはありません。疑わしきは罰せよの理論で追放された旧帝都民のうち、反乱軍と合流する素振りを見せた人はこっそりと始末しておきました。私を恨む人間は文字通りこの世に存在しません」


「否定するなら、せめて、それに見合う根拠を持ってきてください」


「何言ってるんですか? ある偉い人が言ってました。恨まれないようにするには恨む気力が湧かない程、徹底的に攻撃しろって」


「おそらく、その偉人は師匠のような行動は想定してないと思います」


「まあ、そんなことしなくても、帝都民は私の姿を見ると涙をしながら、私を崇めます。私の神々しさがそうさせてしまうようです」


「それ、崇めてるんじゃなくて、命乞いですよね?」


「後光がさしているようです。私の隠し切れない人徳が溢れてしまいましたね」


「殺人光線でも使ったんですか? あと、少しぐらい隠しているはずの人徳を見せて欲しい」


「イラリア? ツッコミと称して、私に悪口をぶつけ続けていますけど、いい加減にしないと寝床を爆破しますよ?」


「やめてください。って、何で爆破なんですか?」


「以前、イラリアに魔導砲を食らわせると約束してしまったので、どこかのタイミングで実行しないと私が噓つきになってしまうからです」


「そんな約束はしていません。あと師匠はすでに嘘つ……黙ります」


私は振り上げたフライパンをゆっくりと下ろす。


「私の怒りが伝わったようで何よりです。フライパンが血を噴きそうでした」


「何ですか、血を噴くって?」


「火を噴くの間違いでした」


「フライパンが火を噴くって何ですか?」


「そんなことより、これどうしましょうね」


私は机の上にクシャクシャになっている紙を親指と中指で摘まみ上げる。


「持ち方を考えてくれませんか? それで、この紙は何ですか?」


「宮廷への召喚状です」


「保管方法をしっかりしてください!」


「まあ、存在価値がごみと同じレベルなので管理が適当になっても仕方ないですよね?」


「仕方ない要素が全くないのですが? 何で召喚ですか?」


「今回の鎮圧と正規軍の武装解除をしたことに関する査問だそうです。査問委員会の提唱者はヴァンニ宰相だそうです」


「完全に殺る気じゃないですか? 師匠、行くんですか?」


「はい。行かないと法に触れますからね」


「あれだけ好き勝手にやっておいて法に触れないなんて思ってるんですか?」


「それに、私は宰相にやられるほどやわではありませんから」




召喚状に従い、私は宮殿の一室に設けられた査問委員会の部屋に入った。

宮殿の内部は今のところ帝国の衛兵が警備しているが、城門やその周辺は聖戦士が警備しているので、私は拘束されることはなかった。

聖戦士が宮殿内部に攻め寄せるのを恐れたのだろう。

既に部屋には委員の全員が着席していた。

委員は全員で7人。

この7人は私が座る椅子の周りを囲むように配置されている。

私は部屋の真ん中にある椅子に座る。


「ネビオロ殿、今日は何で呼ばれたか、理解しているな?」


「理解できませんね、ヴァンニ宰相。私は閣下の依頼に基づいて、行動したまでなんですけど?」


「宰相、それは事実なのですか?」


委員の一人が宰相に聞く。


「確かに、わしはネビオロ殿に太陽神殿と月神殿の暴動の鎮圧にご助力を願いたいと伝えたが、正規軍の武装を解除しろという話は一切していない」


「では、このような暴挙はネビオロ殿の独断と言う事かな?」


「いえ、閣下がおっしゃる発言には一部虚偽が入っております」


私が発言する。


「貴様! 閣下が嘘をついていると申すのか!」


宰相の息がかかった委員が怒鳴る。


「はい」


「このような女など、査問は不要。死罪にすべきです」


「いや、宰相が虚偽を申していると断言したのだ。聞くだけ聞いてみればいいではないか?」


「しかし!」


ヴァンニ宰相が手で止める。


「わしが虚偽を申しておると言うのだ。聞いてみようではないか」


「私は閣下に帝都の治安回復をお願いされたのです。ですから、それに従い行動しました」


「何を言っている? それが正規軍の武装解除に何の関係がある?」


ヴァンニ宰相は余裕そうな表情を浮かべ聞いてくる。


「我々は帝国の人間ではありません。では、どうやって私たちが暴徒と正規軍を見分けるのでしょうか?」


「その様な理由でそんな暴挙に出ていいわけがないだろ?」


宰相派の委員がそう言う。

私は反論する。


「しかし、この短期間で治安を回復させたのは事実。帝国の正規軍が鎮圧できなかった事態を我々が独力で鎮圧しました。この功績を無視し、一方的に攻め立てるのは納得がいきません」


「確かに、ネビオロ殿の功績は大きい。帝都を放棄しなくてはならないほどの、反乱であった。それをわずかな期間で治めた功績は非常に大きい。今も、こうして査問委員会を開けているのも、ネビオロ殿の功績ではないか?」


「何を言っている? この女は帝国の兵、つまりは陛下に仇名したのだぞ?」


「それは拡大解釈だ!」


委員同士で口論を始め、委員会が紛糾し始めた。


「このままでは埒が明かない。ネビオロ殿を懲罰するか否かを採決する!」


宰相は紛糾したこの事態を収拾し、私に懲罰をするという方向にもっていくために採決を訴えた。

宰相は事前の根回しで、私を懲罰することができると信じているのだ。

すると、委員は静かになった。


「では、懲罰に反対の方は挙手を」


4人が手を上げた。


「なっ」


宰相が驚きのあまりに声を漏らしてしまった。


「……」


「宰相、議事の進行を」


反対派の委員が言う。


「くっ、帝国において陛下に仇名す者は死罪である。この女は陛下の御所である宮殿に刃を向けた。これは反逆罪に該当する。よって宰相の権限でジーナ・ネビオロを逮捕する!」


やけくそになった宰相が叫ぶ。

委員の背後に立っていた衛兵たちが私に槍を構える。


「宰相! これは委員会に対する冒とくだ!」


「そうだ! 委員会の決定を捻じ曲げるなど、言語道断! 見損なったぞ!」


議員が次々と怒鳴り声を上げる。

私も流れに乗って、声を上げる。


「宰相、あなたは法に則って行動するということもできないのでしょうか?」


「戯言を。 衛兵! 捕らえよ!」


背後のドアが破られる音がした。


「何だ!」


背後で兵士が突入する音が聞こえた。


「全員、武器を下ろし、頭に腕を組め! 抵抗する者はこの場で斬る!」


宰相が用意した衛兵たちが武器を下ろし、頭に腕を組み始めた。

後ろを振り向くと聖戦士たちが宰相の衛兵の倍の人数がいた。

隊長が片膝をついた。


「お迎えに上がりました、教祖様」


私はゆっくりと立ち上がる。


「宰相、今日の暴挙はしかるべき場所でお話させて頂きます。あなたたち、宰相の屋敷周辺の警備を厳重に」


「はっ」


「では、失礼いたします」


宰相は拳を力強く握りしめている。


「ネビオロ、このようなことが許されると思うなよ」


私はこの場を後にした。

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