第90話 私が正義です
1週間後、宰相から聖戦士の入国許可が貰えた。
それに伴い、帝都国境付近に待機していた聖戦士5千人が帝都に進軍。
進路上にあった軍閥や有力者が邪魔した場合は見せしめに殲滅したが、何もしない場合は放置した。
「ようやくですね。まったく、宰相の判断の遅さには驚かされました」
「究極の二択ですね。暴徒に帝都を荒らされるか、師匠に屈服するか」
「何を言ってるんですか? 私はこれから、帝都の平和を取り戻す活動するんですよ? 宰相は私に泣いて感謝するべきだと思うんですけど?」
「平和を名目に敵を殲滅しようとしている人が何を言ってるんですか?」
「今のは傷つきかけました。慈愛の心を込めたアッパーが飛び出しそうです」
「やめてください。あと、慈愛の心があったらアッパー何て出てこないと思います」
「あ、そろそろ時間ですね。カーショさん、準備はよろしいですか?」
「問題ありません。各部隊準備完了しています」
「では、平和を取り戻すため、帝都のすべての勢力の武装解除をお願いします」
「かしこまりました」
こうして、帝都の治安維持を回復させるという名目の下、フライパン教が武力により、各勢力を鎮圧。
太陽神殿や月神神殿の信徒たちは奮戦したものの、聖戦士の驚異的な戦闘能力には遠く及ばなかったようだ。
帝都に平和が訪れて2日目、帝都には外出禁止令が発令されている。
まだ、一部では反抗勢力が残っているそうだが、消滅も時間の問題だろう。
「何で、こんなに圧勝なんですか? 数の差がありましたよね?」
「イラリアは分かってないですね。いいですか? 聖戦士の戦闘力は凄まじいんです。そして、太陽神殿や月神殿は動員数こそ多いですが、その実態はド素人のただの民衆です。殺る気が極限まで高まった聖戦士相手では数だけが取り柄のド素人集団では相手になりません」
「でも、師匠。前にやり過ぎては恐怖されて、活動の許可が貰えなくなるって言ってませんでしたか?」
「やりすぎ? でも、今回は異教徒を殲滅しませんでしたよね?」
「ん? やりすぎの定義がおかしくないですか? それはやりすぎと言うよりも完全にアウトですよね? もう、終わってますね。絶対に活動の許可とかもらえないですね。帰り支度してきます」
「何言ってるんですか? 絶対に許可は貰えますよ」
「何を根拠にそんなことを……」
「だって、帝国の正規軍の武装解除もしたので、今ここで私たちが撤退したら、帝都は本物の無法地帯になりますよ?」
「何で、正規軍の武装を解除しちゃうんですか?」
「だって、私言いましたよね? 帝都にいるすべての勢力の武装を解除しろって」
「いや、言ってましたけど……、普通は正規軍は対象外だと思うんですけど」
「まあ、貧弱な帝国軍よりも屈強な聖戦士に警備してもらった方が帝都の人たちにとって幸せでしょうから」
「いや、どう考えても不幸の始まりですよね? そんなことして、宰相は何も言ってないんですか?」
「帝国政府のいろんな部署から抗議文が寄せられています」
「でしょうね」
「でも、抗議文を出した人たちをおはよう、からおやすみ、そして寝顔まで監視し続けていたら、抗議の声は聞こえなくなりました」
「恐怖政治じゃないですか!」
「宰相も怒りの声を上げていましたが、宮殿の城門を制圧してからは大人しくなりました」
「もう、やりたい放題ですね」
「私たちは宮殿の出入り口と帝都を完全に守っています。ちなみにですが、私たちフライパン教徒は宮殿への出入りが自由になりました。なので、宮殿の見学ツアーで一稼ぎしようかと考えています」
「見学ツアー? 正気ですか? 警備上の問題とか考えないんですか?」
「まあ、多少何かが盗られても、帝国の備品なんで」
「最低ですね。でも、今なら師匠の最初の目標だった宰相の追放ができるんじゃないですか?」
「いえ、今ではありません」
「何でですか? 絶対に今が好機ですよね?」
「今このタイミングで宰相を追放すれば、私たちが武力によって圧政を敷いていることになってしまします」
「なってしまいます、というよりも圧政そのものですよね?」
「なので、宰相の追放は政治的な方向から行います。難しければ、物理的に消えてもらいます」
「師匠の好感度は既に終わっていましたけど、もう改善は不可能ですね」
「そんなこと言っていいんですか? 今の私は帝都の警察権を握っているんですよ?」
「本当に誰か、師匠から権力を取り上げて欲しい」




