第80話 帝国歴史解説3
「半グレ集団について語る前に恒例のまとめを発表しましょうか」
「一回しか、やっていないことを恒例企画みたいに言うのやめてもらえませんか? あと、まとめも大したことじゃなさそうなので、要りません。どうせ、統一、クーデター、反乱、宗教戦争とか言うんですよね?」
「驚きです。ほとんど合っています。しかし、2代目の皇帝が無能であることと皇后の不倫についての情報が抜けてますよ?」
「その情報、要らないと思います」
「まあ、イラリアが理解しているようなので、半グレ集団について話しましょうか。まず、半グレ集団を定義します。これは人によってバラつきがありますが、私は国や組織に属さない犯罪者集団と言う風に定義します」
「論文でも書くつもりですか? 何で定義から話し始めました?」
「対象を絞るためです。簡単に半グレ集団の特徴について話しましょうか。彼らは馬に乗り、弓や、魔法を使用します。ウマ族には劣りますが、パルティアンショットの命中率も素晴らしいそうです」
「何で忘れた頃にパルティアンショットが出てくるんですか? と言うか、魔法が使えるなら、弓要らなくないですか?」
「彼らは魔法は攻撃に使いません」
「じゃあ、何に使うんですか?」
「音楽を鳴らすためです」
「じゃあ、魔法必要ないですよね?」
「魔法については後で詳しく話すので、まず、成り立ちから話したいと思います」
「え? 魔法について気になるんですけど」
「待てって言ったの聞こえませんでしたか?」
私はフライパンを手に取り、構える。
「師匠、分かったのでフライパンを置きましょう」
話を進めなければいけないので、フライパンを机の上に置く。
ホルダーに仕舞わないのはいつでも叩けるぞとという脅しも兼ねている。
「半グレ集団の成立は帝国36分割時代にさかのぼります」
「歴史としては長いんですね」
「はい。既に何世代にもわたって、続いています。そして発生理由は何となくわかると思いますが、突然、国が36分割されたことにより、政府が機能を失いました。それにより、急速に治安が悪化。こういった情勢下で半グレ集団が生まれたと言われています」
「犯罪者集団ができるのは分かりますけど、何で騎兵なんですか? 馬だって安くないですよね?」
「それにはいくつかの説がありますが、半グレ集団、夜露死苦の初代総長が馬小屋を襲撃して馬を手に入れたことが始まりだと言われています」
「ちょっと待ってください。師匠、半グレ集団の名前をもう一度教えてください」
「夜露死苦です」
「もっとマシな名前は無かったんですか?」
「そこら辺のセンスは初代総長に聞かないと分かりませんね。ついでにですが、組織化された大規模な半グレ集団は夜露死苦が初だと言われています。夜露死苦が馬を手に入れたことにより、傭兵として各国から重宝されることになります。初代総長は傭兵隊長として名を馳せたそうです。しかし、総長は戦争続きで精神的に参り始めていました。そこで旅を決意します」
「そこでの意味が分からないんですけど?」
「旅をするにあたって、一つの問題にぶつかりました。部下をどうしよう、です」
「いや、普通に考えなくても分かりますよね?」
「側近に夜露死苦の総長の座を譲ることを話します。側近たちの口から末端まで、総長の引退話が広がると総長の旅に自分もついていきたいと申し出る組員が現れ始めました。最終的に残留派と旅行派で夜露死苦は二分されます」
「残留派は分かりますけど、旅行派は名前がダサいので変えてあげてください」
「少しのいざこざがあったのちに、総長は夜露死苦を暖簾分けすることを思いつきます。残留派の代表に摩武駄致という組名を与え、暖簾分けしました」
「いや、だからセンス! 何で誰も止めなかったんですか?」
「カリスマ性でないですかね? 摩武駄致は帝国で傭兵や警備を。夜露死苦は東方へと旅に出ます」
「何で東に?」
「帝国の東には遊牧民族がいて、彼らと接触を図ったという説がありますが、詳しくは不明です。夜露死苦は旅の途中で出会った遊牧民と仲良くなり、馬の乗り方、弓の使い方を学び、遊牧民族顔負けの戦闘能力を手に入れます。ちなみに、この頃に旅の癒しの一環で魔法を使って音楽を鳴らし始めたようです。どうやら、音楽によって気分が上がり、馬のスピードが上昇するらしいです」
「馬の走力に音楽が関係ありますか? それより、総長は戦争に疲れて、旅に出たんですよね?」
「その通りです」
「私には殺る気満々のように見えるのですが」
「現存する総長の手記からは戦争に疲れたという弱音が記述されているのですが、その後の行動を追うと、遊牧民から戦闘技術を手に入れるための研修に行ったようにしか見えません。そのため、この手記は別人のものではないかという歴史学者もいるようですが、まだ、証拠不十分なので、何とも言えません」
「その後、夜露死苦はどうなりました?」
「何故か、帝国に戻ってきました」
「じゃあ、摩武駄致と合流ですか?」
「いえ、夜露死苦が東方研修をしていたころに、摩武駄致は組織の規模が大きくなり、馬の手配が間に合わなくなったため、歩兵を中心とする武装集団に変化しました。そのことで、夜露死苦の総長と摩武駄致の総長が衝突します。結果、夜露死苦が遊牧民の戦闘技術と音楽による威圧によって、摩武駄致を圧倒しました。この時に音楽が必須のものになったそうです。余談ですが、夜露死苦の組員は音楽魔法を使い続けたことにより、魔力量が異常に多いです。しかし、攻撃魔法や治癒魔法など、音楽に関連しない魔法は一切使えません」
「使えない能力ですね」
「夜露死苦が摩武駄致を圧倒したことにより、帝国にいる摩武駄致傘下のならず者が夜露死苦に集結することになり、構成員が10倍以上に膨れ上がりました。しかし、夜露死苦の組織力ではこの数を統率することは不可能でした。そこで、再び暖簾分けをします。側近たちに愛死天流、愛羅武勇を与えます」
「いや、だから名前!」
「暖簾分けの数年後に総長は亡くなります」
「組の抗争ですか?」
「いえ、天寿を全うしたそうです。墓石には愛してるぜ、兄貴と彫ってあるそうです」
「何か慕われてたんですね」
「しかし、偉大なカリスマ指導者が死亡したことで、鳴りを潜めていた摩武駄致の残党が現れました。走死走愛という組名だそうです」
「名前のダサさだけは似てしまったんですね」
「彼らは歩兵戦術ではダメだと言う事を先の戦闘で学習しています。しかし、夜露死苦のように弓術を習得しているわけではありません。そこで、馬を使った体当たり作戦を実施することにしました」
「普通に馬が可哀そうなんですが?」
「騎手は体に爆発物を巻き付け、馬と一緒に敵に衝突します。彼らのスローガンはスピードに愛され、スピードを愛そう、だそうです」
「スピードに愛されるって何ですか? 完全に一方通行ですよね?」
「要はスピード狂というわけです」
「それで、走死走愛はどうなりましたか?」
「自爆攻撃により知名度は上げましたが、最初から自爆攻撃と言う最終戦法を使ったため、次第に勢力が衰えました。急速に組織が小さくなる様子から、スピードに愛されたことが確認できますね」
「それは愛でも何でもないと思います。あの師匠? この話まだ、続くんですか?」
「何言ってるんですか? まだ、36分割時代の話ですよ?」
「帝国の歴史の本編を忘れるぐらいキャラが濃いんですが?」
「忘れたら、机の上にあるフライパンを熱して焼きごてのように使いますよ?」
「やめてください。と言うか、何で急に新しいフライパンの使い方を出してきたんですか?」
「最近キャラの濃い人が多くて、メインのフライパンが薄まっていたので、ここらで思い出してもらおうかと。余談ですが、料理直後のフライパンが最も攻撃力が高まります。理由は熱による攻撃力上昇と油汚れによる精神攻撃ができるからです」
「……フライパンの影が薄くなっているのは師匠のせいだと思いますよ?」
「何言ってるんですか? 私はフライパン教の教祖ですよ? 私が目立てばフライパンがもっと光るに決まってるじゃないですか!」
「いや、師匠の場合は目立つというよりは出しゃばりすぎって感じです」




