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第71話 解き放て

布陣後、大規模な戦闘に発展したが、聖戦士の精強さにより圧勝した。

この野戦に勝利したことにより、イノシシ族は一時的に動けなくなった。

その隙をついて、私たちはイノシシ族を包囲した。

しかし、彼らのあきらめの悪さは凄まじいものがあった。


「牡丹……あ、間違いました。イノシシ族は今日も奇襲ですか? 懲りないですね。いい加減、降伏すればいいのに」


「イノシシ族を食べようとしてませんか?」


「イノシシ族はなかなか気骨がありますから。昼行性、夜行性に分け、攻撃を継続し続けるというのは流石としか言いようがありませんね。兵の士気も少しずつ下がっています」


グリッロさんは感心している。


「聖戦士の方は問題ありません。彼らのM値を信じましょう。それより肉食獣人の動きが気になりますね。普段なら、奇襲を仕掛けてきてもいいはずなのですが……」


「どうやら、トラ族では族長決めで動けないようです」


グリッロさんが言う。


「族長決め?」


「イラリアはトラ族の族長がどのように決められているのかご存じないのですか?」


「師匠、世間一般ではそれほど獣人に関しての情報は入ってこないんですよ? 知っていて当然かのような対応をするのやめてくれませんか?」


「トラ族の族長は立候補者が一斉に闘技場で殺し合いをして最後の一人が族長となります」


「何ですか? その血なまぐさい族長決めは?」


「ついでにですが、無力化ではダメです。闘技場にいる立候補者は一人を除けば例外なく絶命させないといけません」


「なおのこと最悪ですね。でも、そんな状況なら攻撃できなくても納得ですね」


「そうですか? 彼らなら族長決めにあぶれた戦士がノリと勢いで攻めてきそうですけどね」


「ノリと勢いで戦争を吹っ掛けるって何ですか?」


「まあ、トラ族ですから」


「それで納得すると思っているんですか?」


再び、外が騒がしくなってきた。


「今度は何ですか? また酔っ払いですか?」


「またって何ですか? 酔っ払いはまだ一度も出現していませんよ?」


「縊り殺しましょうか」


「酔っ払っただけで縊り殺しは酷いと思いますよ?」


「でも、陣中で酔っ払いが全裸で騒ぐなんて、ふざけすぎてませんか?」


「何で全裸が確定しているんですか?」


兵士が天幕に入ってくる。


「教祖様、ウマ族の襲撃です」


「嫌なタイミングですね。でもイラリアの勉強のために外に出てみましょうか」


私たちは天幕の外に出る。

ウマが二足歩行かつ、ランニングウェアで全力疾走している。


「何ですか! 前衛的なビジュアルすぎでしょ。あれは大胸筋ですか?」


「そうですよ。トルソーでフィニッシュ判定がされますので、大胸筋を発達させ、リーチを稼ごうとしているのかもしれません」


「止まれないのにフィニッシュ判定を意識する必要ありますか?」


ウマ族の戦士が振り向きざまにこちらに矢を放ってきた。

私は飛んできた矢をフライパンで払う。


「あれがパルティアンショットです」


「あれで何で撃てるんですかね?」


「それはウマ族に聞いてみないと分かりませんね。まあ、ウマ族に質問するには同じスピードで並走しないといけませんけどね」


「走った状態でぐるぐる回れば止まれますよね?」


「彼らの三半規管の弱さを舐めてはいけませんよ?」


「本当に変な生き物ですね」




「ふざけるな!」


「どうかしましたか? おかしい頭がさらにおかしくなったんですか、師匠?」


「イラリアと私の立場が逆転してませんか?」


「で、どうしたんですか?」


「包囲して1カ月も経っています」


「籠城戦を1カ月で片づける方がおかしいと思いますよ」


「グリッロさん」


「何でしょうか」


「地下で拘束していたプラシドさんを解放してください。突撃させます」


「師匠、何してるんですか?」


「包囲中に数人のイノシシ族を猪鍋にしていたので、拘束して、鎖をぐるぐるに巻いて、地下に封印してました」


「いつの間にそんなことを……」


「もう2週間ぐらい前の話ですよ」


「確かに、ここ最近見ていなかった気がします」


「では、地下に行きましょうか」




ろうそくが不気味な雰囲気を生み出している。


「お久しぶりですね、プラシドさん」


私は鎖にまかれて、地面に転がっているプラシドさんに話しかける。


「フヒャヒャヒャヒャ、ヒヒヒヒヒ」


「師匠、やり過ぎたんじゃないですか? 会話が成立してませんよ」


「すみません。彼を椅子に座らせてあげてください」


「かしこまりました」


看守が椅子を持ってきて、プラシドさんを座らせる。


「アヒャヒャッヒャ」


私は彼に近づく。

両肩に手を添えて、耳元に口を寄せる。

ねっとりと、そして病的な優しさで囁く。


「肉に刃物を入れる感触を思い出しませんか?」


プラシドさんの笑い声が止まり、つぶらな瞳をこちらに向ける。


「ほら、前を向いて、想像してください。刃物が肉を裂き、血が噴き出して、血の匂いが鼻にまとわりつく。懐かしいでしょ?」


プラシドさんが震え始める。

私は追い打ちを掛ける。


「サイコロステーキ、猪鍋、サイコロステーキ、猪鍋、サイコロステーキ」


「師匠、呪文ですか?」


「お、お願いだ! 斬らせてくれ! 肉を斬りたいんだ!! お願いです、教祖様!!」


「イノシシ族をどうすればいいか分かりますね?」


「教祖様! 教祖様!」


兵士が布に包まれたプラシドさんの愛刀を持ってくる。

私は鎖を掴み、ボロボロにしてプラシドさんを解放する。


「師匠! どうやったんですか?」


「アハハハハハハハ!!」


プラシドさんはブランクを感じさせない全力疾走で愛刀を回収して、外へと走っていった。


「ウマ族を凌駕する走り方でしたね。いえ、鬼気迫ってましたから、上回っているかもしれません」


「それよりも、師匠の洗脳の方が怖かったんですけど」


「面白い冗談ですね」


「プラシドさん、キャラ濃過ぎませんか? 師匠よりも濃いんじゃないですか?」


「私は平均的なので、私を基準にキャラの濃さを判断するのは誤りですよ?」


「師匠のキャラが平均的だったら、そんな世界はすぐに滅亡しますよ」


「その冗談は傑作ですね」


「傑作なら、棒読みぐらいは何とかできませんか?」

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