第53話 新技のお披露目です
勇者さん、大賢者さん、剣聖さんの働きにより、この里は既に壊滅状態。
それだというのにバルティガと言う魔人は出てこない。
「日和って逃げましたかね?」
「いや、相手は四天王だろ? そんなことはないと思うが……」
勇者さんはそう言うが、ここまで反応がないとそう思わざるを得ない。
わざわざ、こんな場所まで来たというのに下っ端しか屠れないというのは残念過ぎる。
「ん? 巨大な魔力反応が急速接近している?」
大賢者さんが何かを捕らえたようだ。
本当だ。
かなり早い。
この感じだと飛行能力を持っているのか?
遠くで、何かが光を放つ。
「伏せて!」
私はイラリアの頭を掴み、下に押し付ける。
他の皆も、しゃがんだようだ。
私たちの頭があった場所にはビームが通った。
ビームが着地した場所は大爆発が起きた。
聖女さんが結界を展開して、熱風を防ぐ。
「やってくれたな。勇者」
上空から声がする。
飛行魔法の常時展開とは恐れ入る。
しかし、空を飛ぶ敵となると厄介だ。
「貴様が四天王バルティガか?」
勇者は臨戦態勢に入った。
「まさか、ここまで早くこの里に来るとは。こんなことならば、ルグドを連れてこれば良かったが、今からでは遅いな」
バルティガは勇者さんに手を向け、ビームを放つ。
聖剣が強い光を放ち、勇者はバルティガのビームを斬る。
バルティガはそれを皮切りに次々とビームを放つ。
勇者はビームを聖剣で断ち、直撃を避けている。
大賢者さんは爆撃魔法や、雷撃などで狙撃しているが、縦横無尽に動く、バルティガを捕らえることはできていない。
聖剣が一際強い光を放つ。
「食らえぇぇぇぇ!!!!」
勇者さんが聖剣を大きく振ると、聖剣から巨大な斬撃が飛ぶ。
バルティガは避けられないと悟ると、多重結界を展開。
結界を収束させ、防御力を高めた。
結界が斬撃によって削られる。
結界が爆発した。
周囲には煙が立ち込める。
「この程度か? この程度の勇者にランベルトが負けるとは思えないが……」
煙が晴れると、片腕とが無くなり、足が膝あたりから無くなってボロボロのバルティガが現れた。
「ねえ? 聞いた? イラリア? あんなボロボロの雑巾みたいな見た目なのに偉そうな態度してるよ」
「師匠、空気を壊さないでください」
「そこの女、うるさいぞ」
バルティガの腕が再生し、欠損部位や傷もすぐに修復される。
魔王領は魔力濃度が高い。
魔人は常に補給を受けながら、戦える環境だ。
しかも、ここは高濃度の魔力だまりがある場所。
補正は凄まじいことになっているだろう。
「あの攻撃でも、仕留めきれないか」
「勇者さん、今まで何をしてきたんですか? あの程度の魔人すら屠れないなんて」
「あの程度って……四天王ですよ?」
「これだからイラリアは能無しって言われるんです。魔王含め魔族は雑魚です」
「言われてません」
「魔王様を雑魚だと! 人間風情が! 侵略だけでなく、陛下を侮辱までするとは、貴様だけは許さんぞ!!」
バルティガの怒りにより、周囲の魔力が活発に動き始める。
怒りを表現するかのように、周囲には雷撃が落ちる。
私に迫る雷撃をフライパンで弾く。
「仕方ありませんね。私の力の一端を見せる時が来たようですね。ヌル!」
私の目の前に球体が現れる。
球体が粘液な物を放出し始めた。
雷撃が私に迫る。
球体から放出される粘液が動き、雷撃を受け止めた。
球体は雷撃を受け止めたが、ダメージはなさそうだ。
球体はなおも粘液を放出し続ける。
「これは……ランベルト?」
巨大なスライムが私の目の前に現れた。
「ヌル、そこ魔人を捕らえなさい。余裕があったら捕食していいですよ」
ヌルは触手を放ち、飛行するバルティガを捕らえようとする。
「ランベルト! 何をしている!」
バルティガは今のところ触手を全部飼わせているが、徐々に増える職種にだんだんと押されている。
「くっ、仕方ない」
バルティガはビームで触手を焼き払う。
しかし、無限に増殖する触手を減らしたところで時間稼ぎにしかならない。
バルティガは私を集中的に攻撃しているが、ヌルの触手が私を保護するためダメージを与えることが出来ないでいた。
再び、ビームで触手を焼き払い、スライムの本体にビームを直撃させるが、効果はないようだ。
「クソッ、ランベルトの魔法耐性が邪魔だ」
バルティガは火炎を放射し、スライムの水分を蒸発しようと試みる。
「くっ、はああああ!!」
スライムの触手と炎が拮抗している。
私は跳躍して、バルティガをフライパンで殴り、地面に落とす。
「グッ、この私を地面に落とすとは」
バルティガは起き上がり、飛ぼうと試みるが、待ち構えていた触手により、手足を捕らえられていた。
触手が力強く引っ張り、捕食しようとする。
バルティガは自らの手足をビームで焼き切り、脱出して、飛んで逃げようとする。
しかし、長時間の戦闘で魔力を大きく消費したため、スピードがそれほど出ていない。
そのため、予備の触手が先回りして、バルティガを捕らえた。
「やめろ! 放せ! 放せ!」
バルティガはもがいて触手から逃れようとするが、脱出できていない。
苦し紛れのビームも出力が無いため、触手に軽いダメージを与える程度で、次々と新しい触手が迫る今となっては何の意味もないかった。
バルティガはスライムの本体に取り込まれると急速に消化され、消滅した。
「良くできました」
私はスライムを撫でる。
「大きいと邪魔なので、小さくなってください」
スライムは30センチほどの大きさまで縮んだ。




