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第49話 新たなる称号

私たちはひとまずエルフの里に戻り、情報を共有する。


「師匠、手に持っているその球体なんですか?」


「魔王軍幹部の核です」


「「「え?」」」


「皆さん、綺麗にハモリましたね」


「ねえ? もしかしてだけど、この前のスライムじゃないよね?」


「聖女さんは目までおかしくなったんですか?」


「目までってどういうことよ!」


「魔王軍幹部のスライムの核ですよ」


「おい! 捨ててこい」


「勇者さん、聖女さんの下品さに影響されてんですか? 叫ばなくても聞こえてます」


「待って、下品さに影響されるって何? それに私は下品じゃない!」


うるさい聖女さんを無視して話を進める。


「まあ、そんなことより」


「師匠、魔王軍幹部ですよね? 大丈夫ですか?」


「はい。大丈夫です。平原でブレイクアンドビルドを繰り返した結果、従順になりました。例えば、聖女を拘束して」


「え?」


聖女がマヌケな声を上げると同時に核から液体のボディが現れ、聖女をスライムで縛り上げ、空中に持ち上げる。


「解放して」


スライムは聖女をゆっくりと床に下ろし、拘束を解除する。

液状の体は核に戻り消えた。


「何で私を実験に使うのよ。びっくりしたんだけど」


「このように、このスライムは完全に私の支配下にあります」


私は膝の上に載せているスライムの核を撫でる。


「ジーナ殿は私の理解を大きく超えてくるな」


大賢者さんはあきらめたように言う。


「私にテイマーの才能がここまであるとは思っていませんでした。自分が怖いぐらいです」


「暴力的な支配をテイムって言うんですか?」


イラリアが言う。


「私たちには友情があるんですよ? 余計なことを言うとスライムに消化してもらいますよ」


「やめてください」


「私の称号が増えすぎてしまいますね。教祖にしてフライパニストにして会社経営者にしてテイムマスター」


「テイムマスター? そんな称号師匠に就くわけないですよね?」


「魔王軍幹部をテイムしたんですよ?」


「過程が考慮されないっておかしいと思います」


「では、本題の情報共有をしましょう。まず、ここに魔王軍が来ることはある程度は想定していました。予想より少し早かったですが」


「どういうことだ?」


「これはある魔王軍の上層部にいる魔人を尋問した時の話ですが」


「当然のように魔人を尋問するのやめてもらえますか?」


私はイラリアを無視して話を続ける。


「魔王は勇者と聖女を討伐する、もしくは自分を除いたすべての魔王を討伐する必要があります。しかし、後者は圧倒的に難易度が高いです。ですので、通常の魔王は勇者と聖女を討伐しようとします」


「何故、勇者と聖女を討伐する必要がある? 別に奴らは命令されているわけではないのだろ?」


大賢者さんが質問する。


「私が尋問した魔人は分からないと答えていました。その質問は何で生きてるんですか? と言われるぐらい難しい質問だそうです。そして通常、勇者を狩るには魔王が直々にやってきます」


「部下ではダメなのか?」


勇者さんが不思議そうに言う。


「いえ、別に魔王軍の誰かであれば良いそうです。ただ、勇者または聖女を倒した場合は勇者殺し、聖女殺しのスキルがもらえるようで、討伐者が魔王にそのスキルを譲渡すれば、なにも問題ありません。しかし、討伐者がスキルの譲渡を拒否した場合、魔王は討伐者を倒して、スキルを強奪しないといけません。そのスキルは魔物に対しての攻撃に補正がかかるようなので、勇者を殺せるほどの実力者である場合、魔王にも大きなリスクが発生します。なので、通常は魔王が直々に討伐します」


「じゃあ、今回は異常ってことですか?」


「イラリアの言う通りです。今回のケースは何かしらの異常が発生しています。魔王が討伐できない状況が起きている可能性があるということです」


「それなら、魔王城に攻撃しに行けばいいだけの話じゃない?」


「聖女さん、頭沸いてるんですか?」


「ちょっと! この流れで何で私にだけ悪口なのよ!」


「常識的に考えてください。魔王城周辺は魔王のお膝元。私たちにとっては敵地です。そんなところで戦闘すれば、24時間耐久もしくはそれ以上、継続して戦闘しなくてはならない可能性があります。ローテーションをしても厳しいものがあるでしょう。魔王がこちらに出向く場合は比較的安全な場所で出迎えることが出来ます。リスクを考えれば、どちらが安全かなど、いくらあの聖女さんでも分かりますよね?」


「いくら、とか。あの、とか。私に対して失礼すぎるでしょ!」


「ジーナ殿一つよろしいか?」


「何でしょうか、大賢者さん?」


「魔王にとっては自らの城が最も安全なはずだ。なら我々のところに出向く必要性が全くないではないと思うのだが……」


「通常はそうです。しかし、魔族の方々は反骨マンと戦闘狂しかいないので、ビビっている魔王は基本的になめられて、軽蔑されます。その後、大規模な反乱が起こり、自分が魔王にとって代わろうとします。もしくは自分で勇者を討ち取ろうとします」


「じゃあ、そのスライムも反骨した魔物ってことですか?」


イラリアはスライムを見ている。


「いえ、このスライムは魔王に忠誠を誓っているようです。しかも、勇者と聖女を生け捕るように命令されていたようです。なので、勇者さんと盗賊さんが拘束されたのにも拘らず、無事だったということです」


「魔王が俺を生け捕るように? 何か目的があるのか?」


「分かりません。しかし、魔王は積極的に戦う意思はないということは言えますね」


「じゃあ、魔王を討伐する必要はないんじゃ……」


「甘いですよ、勇者さん。魔王は存在が悪です。絶対に滅ぼさないといけません。あと、信者に魔王軍に代償を払わせると約束してしまったので、私の体面的に何かしらのダメージを与えないといけません」


「それ完全に師匠の都合ですよね? それに師匠は前に、口約束何てあってないようなものじゃないって言ってたじゃないですか?」


「人間との約束は守りますよ」


「約束を交わした勇者さんは人間ですよ?」


「フライパン教徒にあらずんば人間にあらず、そう言うことです」


「どういうことですか?」


「まあ、とりあえず魔王を引きずり出すために少しだけ暴れてみましょう」

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