第48話 スライムの叩き心地
「レラ! 集中しろ!」
大賢者さんが叫ぶ。
「え?」
聖女さんは勇者さんに気を取られ、結界が甘くなり、結界に穴を開けられ、触手が結界内に侵入する。
触手は聖女さんを掴んだ。
ジタバタして触手から逃れようとするが、効果はない。
「きゃっ」
剣聖さんが触手を斬り、聖女さんを解放する。
「大丈夫か?」
「うん。ありがとう」
「油断するな。あのスライムはルカとパオラを取り込んでいる。早く助け出さねば窒息してしまう」
大賢者さんが注意を引き締めるように忠告する。
「エドアルドさん! 師匠を使うんです。スライムに硬い部位は無いんですか?」
「硬い部位? 硬い……硬い……、スライムの核だ! 特殊な素材らしく、何とも言えない触り心地をしているそうだ」
「師匠! スライムの核は叩き心地が良いそうですよ!」
私はすっと立ち上がる。
「その話本当?」
「おい、貴様どこから現れた?」
スライムが何か言っているが気にしない。
私はイラリアの肩を掴む。
「ねえ? あのスライムの核は良い感じなの? 本当に?」
「本当です。だから、顔を近づけないで、怖いです!」
私はスライムの核を捕捉して、スライムに飛び掛り、核を掴み、地面に着地する。
核を取り除かれたスライムの体は崩れ、勇者さんと盗賊さんは解放される。
二人は咳き込むが、特に異常はなさそうだ。
あれだけ時間があって、勇者を仕留められないとは思えない。
殺意はなかったのか?
まあ、そんなことよりもスライムの核だ。
さあ、どんな叩き心地なのだろうか。
「ヒヒヒッヒヒッヒヒヒイヒヒヒヒヒ。さあ、私を楽しませてくださいね」
スライムの核を地面に埋め込み、フライパンを何回か振り下ろす。
ガラスのようなものが砕ける感触。
これは、今までに味わったことのない感覚だ。
素晴らしい。
「良い。素晴らしい。とっても良い!!」
私はスライムンお角を叩き続ける。
スライムの核が念話で交渉を試みようとしているようだ。
「何? 助けて欲しい? そんなの許すわけないでしょ? 大人しく叩かれてくださいよ」
フライパンで叩き続けると核にひびが入ったようだ。
念話の出力が強くなり、頭にスライムの命乞いがガンガン響く。
仕方ないので、叩くのを中断した。
スライムが感謝の念を述べる。
徐々に再生し、ひびが消えた。
そして、再び叩き始める。
何故だ。
許してくれたのだろう?
そんな念話が私に届く。
「どうして? そんなのずっと楽しむためじゃない。バカなの? 考えればわかることでしょ? ヒヒヒヒッヒヒヒヒヒッヒヒヒ」
再びスライムの核にヒビが入る。
「ほら、早く再生して? 壊しますよ?」
ゆっくりと修復される。
私はフライパンで殴る。
「私は早くって言いましたよね?」
急速にスライムの核が修復される。
ブレイクアンドビルドを数百回以上繰り返すとスライムの核から応答が無くなった。
「魔王軍幹部を討伐完了しました。なぜ、皆さん引いているんですか?」
「師匠、あれを見て引かない人間がいるなら、連れてきて欲しいです」
「信者たちを連れてきますか?」
「信者は例外です」
「そんなことよりも。あんたがサボったせいでパオラとルカが危なかったのよ? 仲間なら助けるのが普通でしょ?」
聖女さんは私に掴みかかる。
私はフライパンで頭を殴る。
「痛! ちょっと何するのよ!」
聖女さんは私の足元でうずくまっている。
「すみません。ウザかったので、手が無意識的に。今回、私、別に悪いことしてませんよね? だって、スライムに捕まったのはドジな盗賊さんが悪いですよね? パーティー全体を危険にさらしたのは熱くなって周りが見えなくなった勇者さんですよね? 私が悪い点どこにありますか? だいたい、魔物を狩っておいて、自分たちが殺されるのは許せないって言うのは都合が良過ぎるのでは?」
「そうは言っても俺らは仲間だろ? さすがに見捨てるのは酷くないか?」
勇者さんがそう言う。
「え?」
「え? 仲間……じゃないのか?」
「逆に仲間なんですか? あなた方はパダラで一体何を見てたんですか? そんなことよりも、想定外の動きがあったので、協議をしましょう」
「そんなことよりって、師匠、今パーティーが空中分解しかけてますよ?」
「私は構いませんよ? 約束さえ守って頂ければ」
「ルカさん。師匠はあきらめましょう」
「……」
勇者さん以外はあきらめた目をしていた。




