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第46話 好きな方を選んでいいですよ

エルフに案内していただけることになったので、非常に楽に里の前まで来れた。

でも、まっすぐ道を歩くだけだったので、幻術に惑わされなければ、まったく問題なかった。

交渉する必要性が無かったというわけだ。

労力を返して欲しい。

里の前ではエルフの戦士が臨戦態勢で待ち構えていた。


「リノ! よそ者を里に案内するとは何を考えておる!」


里長だろうか? 魔力量が他のエルフに比べて多い。


「お、お前は……」


「あの偉そうなエルフの人、師匠を見て震えてませんか? 今度は何をしたんですか?」


「さあ? 会ったこともないと思うのですが」


「師匠の記憶ほど怪しいものはないって最近よく思います」


「武器を下ろしなさい」


里長がエルフの戦士に武器を下ろすように言う。

そして、私の前まで来て、土下座した。


「すみません。ここを追い出された居場所が無いんです。帰ってください」


「師匠、この人に何をしたんですか?」


「何でもかんでも私を疑わないでください。すみません。どこかでお会いしましたか?」


里長は頭を上げて驚きの表情をしていた。


「覚えてないのですか? パダラの森のエルフを……」


「パダラの森? パダラの森……、パダラの森……」


「師匠、覚えてないんですか?」


「パダラを作るときに魔王の手先と揉めたのは覚えてるんですよね。あ、思い出しました。森の木を全部伐採した時のエルフさんですね」


「師匠、その話詳しく聞いていいですか?」


「確かですね。パダラの街を造るときに木が足りなくなって、エルフの森にある木を使わせてもらおうと交渉しようとしたら、彼らに幻術を掛けられて、何人かの信者が行方不明になったんですね。そこで私、自ら乗り込んで、交渉したのですが、全然相手にされなかったので、森の木を一晩で全部伐採したって話ですね」


「師匠は何を考えてるんですか? というよりも、幻術は大丈夫なんですか?」


「森の木を外側から全部伐採したので、幻術はかかったとしても、軽い靄がかかる程度です。それに私は魔法耐性が極まっているのでエルフ程度の幻術では何ともありません」


「それで、帰って頂けますか?」


「それは無理な話です。拠点を提供してください」


「しかし、里の掟でよそ者を中に入れるには……」


「里が無くなるのと掟を破るのどちらが良いですか?」


「どうぞ中にお入りください」


「長!」


「この方には敵わない。余計なことをするでないぞ」


「ありがとうございます。では、皆さん、高圧的な態度でくつろがせてもらいましょう」


「せめて低姿勢でお願いします。師匠の好感度が急降下してますよ?」


「問題ありません。今の私は勇者パーティーの一員です。そして、世間一般では私よりも勇者の方が知名度があります。私の悪行は勇者の悪行として名が残ります。なので、私が悪行を積めば積むほど私の利益となります」


「逆に師匠が善行を積んだことってありましたっけ?」


「魔物の広域殲滅?」


「積んでないってことですね」




エルフは木の上での生活が基本だ。

エルフ家はすべてがツリーハウスで見る分にはいいが、住むとなるとその不便さは尋常じゃない。


「地図が無いってどういうことですか?」


「ジーナ様もご存じの通り、エルフは外界と一切の繋がりを絶つ種族です」


エルフとはここまで使えない種族なのか。

一番有能だと思わしき長ですらこの程度。

あの時、滅ぼすべきだったかもしれない。


「面倒ですね。少しはダークエルフを見習ったら如何ですか?」


「奴らはエルフである誇りを捨てた者どもです。森を捨てた挙句、魔王に与するなど言語道断です」


「長の怒りはわかりましたけど、私が欲しいのは地図です。本当に無いんですか?」


「だから、我々は外界との関りを断つ種族です。なので、外界のことは分かりません」


「では、森を切り開いて差し上げましょうか? 多少は外が見えるようになるのでは?」


「それだけは勘弁してください」


「では、地図の用意をお願いします」


エルフの若者が走ってくる。


「長! 森の外に魔王軍が!」


「何!」


「魔王軍だと!」


大賢者さんが強く反応した。


「魔王領ですよ? 魔王軍がいても別に不思議ではないと思うのですが」


「奴らは滅多に軍を編成しない。しかも、こんな人間領の近くまで来ること自体も異常だ。本格的な侵攻が近いってことか?」


「エドアルド! そんなことよりも、討伐するぞ」


勇者さんが聖剣を手に持ち、森の外へ走っていった。


「ちょっと待って! ルカ! 一人は危ないって」


聖女さんや剣聖さん、盗賊さんも後に続いた。


「師匠、行きますよ」


「え? 勇者がやるならよくないですか?」


「いいから行きますよ」




森を抜けるとざっと千ほどの魔物がいた。

ゴブリンやオークが中核を占めてるが、ワイバーンやウルフなどもいる。


「エドアルドは飛んでいる奴を頼む」


「分かった」


「レラ、皆に強化魔法をかけてくれ。あと広域の対魔物結界も頼む」


「分かったわ」


聖女さんが私たちに強化魔法を施すと急に体が軽くなった。

対魔物結界が展開されると魔物たちが苦しげな表情を浮かべる。

聖女としては残念だが、サポート役としての聖女さんはかなり優秀なようだ。


「パオラは弓で危なさそうな奴を補助、アブドンはレラを守ってくれ」


「任して」


「了解した」


「よし、皆い……」


「ヒャッハー! 久しぶりの狩りだー」


私はダッシュして、目の前のゴブリンの顔面を殴打する。

迫る棍棒を避け、次々と魔物を殴っていく。


「ジーナに続くぞ!」


勇者がそう言うと、エドアルドは広域爆破魔法を展開して、ワイバーンの群れを撃ち落とした。

ゴブリンでは話にならないと判断したのかオークが槍を持って、私を包囲した。

そして、一斉に槍を突き出し、串刺しにしようとする。

私は跳躍して、包囲を抜け、一匹ずつ頭を殴打して制圧する。

今度はウルフが飛び掛ってきたが、そのまま、ボールを打つようにウルフを打ち返した。

次は背後からウルフが飛び掛ってきた。

私は一歩横に移動して避け、私のいた場所を飛ぶウルフにフライパンを振り下ろす。

私の多大なる活躍のおかげもあってか、魔物の数がかなり減ったようだ。

そう思った矢先、巨大な魔力反応が急に現れた。

その方向を見ると、そこには巨大なスライムがいた。

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