第44話 魔王討伐へ
パダラは魔王撃退により、戦勝ムードになっていた。
「いつになく不機嫌ですね」
「当然です。精肉王に引き渡すはずの魔人に逃げられてしまいましたからね」
「あの話本当だったんですか?」
「嘘は言いませんよ?」
「師匠の発言に対する信頼度は0ですよ。今更、何言っても無駄です。それで、魔王討伐はどうするんですか?」
「もちろんします」
「え? 自分で聞いといて、あれですけど、本当に協力するんですか?」
「はい。なめ腐った魔王軍に手痛い一撃を入れて滅ぼします」
「それは手痛い一撃というよりも止めの一撃だと思いますよ?」
「あとは勇者に一筆頂くだけです」
「一筆?」
「はい。勇者さんが魔王領を占拠した場合は私に領有権があるそうですから」
「でも、利用価値のない土地なんですよね?」
「これだから、イラリアは三流と言われるんですよ」
「言われてないです」
「良いですか。戦争するには口実が必要なんです。あの憎き星教会を滅ぼすのにも大義名分が必要なんです。魔王領の領有は勇者の独断専行、絶対に星教会は認めません。そこで私たちは大義名分を得て、星教会を力でひねりつぶします」
「そんなことだけなら、わざわざ魔王討伐する必要ないと思いますけど」
「甘いですね。魔王討伐という難業だからこそ、意味があるんです。この難業にフライパン教上げて手伝ったのに星教会は事前に交わした約束すら守らない。これはイメージ戦略の上で大きな力を発揮します」
「まあ、師匠が魔王討伐に協力するなら、何でもいいです」
「では勇者さんに一筆を貰いに行きましょう。白紙を二枚持ってけば問題ないですね」
「やめてください。マフィアにでもなるつもりですか? ちゃんとした契約書にしてください」
勇者と契約を結び、勇者パーティーと魔王討伐に向け作戦を練った。
「砂漠越えは精神力と忍耐威力で乗り切ります。食料と水は私かほかの方のアイテムボックスを使えば問題ないと思います」
「ジーナ殿の意見に賛同する。ただ、気になるのはサンドワームだ。地中に潜る連中をどう対処するかだが……」
「それに関しては剣聖さんか勇者さんが切断すれば何とかなります。あの魔物は発見できさえすれば、特に対処に問題はありません。ただ、見た目が気持ち悪いので、気分的に斬るのは嫌ですけどね」
「押し付けられたルカさんとアブドンさんの前でよく言えましたね、師匠」
「嫌なことは人に押し付ける基本中の基本ですよ? まあ、サンドワームに関しては生息域が限られているので、遭遇することはほとんどありません。それに砂漠と言っても、ほとんどは岩や小石がメインで砂の方が少ないと言っても過言ではないような場所です。サンドワームより、寝ている間に襲撃してくる狼の方が脅威です。いずれにしても、砂漠越えまでは何とかなると思います。問題はそこからです」
「問題?」
「勇者さんはお分かりにならないのですか?」
「魔王討伐に行くのだから、魔王城の場所を調べないといけないな」
「地図という問題もありますが、それは次の問題です。活動拠点をどうされるおつもりなんです? 野宿ですか? 敵地で野宿何て、良い度胸していると思いませんか? 敵は地元ですよ? もちろん地理も把握していますし、戦力差から一日中攻撃を仕掛けるという戦い方があります。その状況で勝てる自信がおありでしたら、結構ですけど、私は抜けさせてもらいます」
「確かに、それは危ないな。じゃあ、どこかの街を落とすってことか?」
「いったい何人で都市を攻撃するつもりですか?」
「ジーナ殿の言う通りだが、魔族を敵だとすれば、砂漠の向こう側で拠点をつくるというのは不可能ではないか?」
「大賢者さん、それは違います。魔族と言ってもいくつか種族があります。魔王軍の中心的な種族である魔人族、武器生産を得意とするドワーフ、獣人族、エルフ、ダークエルフ、などなど」
「エルフって魔族なの?」
聖女が驚きの声を上げる。
「魔族の定義は国や地域、宗教で様々です。星教会の魔族の定義だとエルフとドワーフは魔族ではありませんでしたね。確か亜人と言うんでしたか? あと、妖精族も魔物ではなかったですね。商業神を信奉する商業神殿の場合は魔人族と魔物に類する種のみ。獣人、ドワーフなどは亜人となります。彼らは自らの商売が成立する相手には寛容な組織なので、森にこもって商売の相手をしてくれないエルフや出会い頭に攻撃する魔人やダークエルフは基本的に敵です。フライパン教の場合は魔王軍に協力する存在はすべて敵です。なので、一部の商業神殿関係者も魔族認定を受けています」
「師匠! それ本当ですか?」
「はい。本当です」
「その人たちはどうなったんですか?」
「先の聖戦でお亡くなりになられました」
「それ、マーシを攻めたときの話ですよね? 後付けの理由じゃないですか?」
「ということで、魔王軍の中核と比較的距離があるエルフ、ドワーフの居住地に拠点を設けることをお勧めします」
「なるほど。しかし、エルフは排他的な種族だと聞いた。そう簡単に行くだろうか? ドワーフにしても気難しい種族だと聞く」
「大賢者さんの心配は理解できますが、問題ありません。種の存亡がかかれば、彼らも大人しくなりますよ?」
「師匠、何か危ないことを考えてませんか?」
「では、勇者さん。エルフとドワーフどちらにします?」
「距離的にはどちらが近いんだ?」
「距離で言うとドワーフですかね。でも、彼らは鉱山に住んでいるので行くまでが大変です。エルフはドワーフの里に比べれば、距離がありますが、森林だけで、平坦な道のりが続きます」
「なら、エルフの里の方が良いんじゃない?」
聖女さんが勇者さんに話しかける。
「聖女さんには聞いてません」
「レラがそう言うなら、エルフの里にするか」
「では、ドワーフにしましょう」
「何でですか?」
イラリアが騒ぎ始めて面倒なので、勇者さんの言う通りエルフの里に向かうことにした。




