第24話 迷宮とは仲良くなれる気がしません
地上に戻って、はや1週間。
一部の信者を呼んでいたが、ようやく到着した。
私たちは暗い部屋で密談をしている。
「ずいぶん長くかかりましたね」
「申し訳ありません。部門の人間を集めるのに時間がかかりまして」
「では早速始めましょうか」
私はアイテムボックスから金の延べ棒が入った箱を出す。
もちろん、全部ではない。
「こちらが金です」
「おお、これは素晴らしいですね。手に取っても?」
「どうぞ」
信者の一人が金の延べ棒を触る。
「質、量、ともに素晴らしい」
「確認は終わりましたか?」
「はい。ありがとうございます」
「金相場を暴落させてください」
「かしこまりました」
暗くしていた室内に強烈な光が入る。
ドアが開けられたようだ。
「師匠! 今度は何を企んでいるのですか!!」
「教祖様、始末しますか?」
「大丈夫です。私の弟子ですから。あと、あの子に手を出したら、始末した後に、お前の家族と近所に幼女に手を出して殺されたっていう噂を流しますよ」
「失礼しました。以後、気を付けます」
「師匠、こんな暗い部屋で何してるんですか?」
「教団の経理部門の方々をお呼びして、今後の話をしてました」
「へぇ~、そうなんですか。で、本当は何をしてたんですか?」
「本当は? 今後について話してるだけですよ。いろいろと」
「いろいろの内容を教えてください。どうせ、お金の話ですよね?」
「何で分かったんですか?」
「金の延べ棒が大量にそこにあって何で分かんないと思うんですか?」
「あ、これはやられましたね。実は、金相場を暴落させて、多くの資産家が金を手放した時に買い占めて、金をより多く回収しようかなと。では、よろしくお願いします」
「かしこまりました」
「あ、横領したら、建物の柱になってもらいます」
「教団を犯罪組織に変えるつもりですか?」
「正当な商売ですよ?」
「金の入手先を聞いていいですか?」
「正当な商売ですよ?」
しばらくすると、迷宮都市の金相場が暴落。
同時多発的に各地の金相場が暴落した。
このニュースはさらなる混乱を生み、金を保有していた者の一部が手放したことにより、さらに下落。
教団の金庫が金で満たされる日は近そうだ。
私がそんなことを考えていると警報音が外から聞こえてきた。
イラリアが、扉を勢い良く開ける。
「慌ててどうしましたか?」
「スタンピードです」
「スタンピード? 迷宮は私に何の恨みがあるんでしょうか? 私が来るたびにスタンピードを起こすなんて。逃げる準備をしてください」
「恨みが無い方が不思議だと思いますけど……、って何言ってるんですか? スタンピードは緊急招集ですよ?」
「大丈夫です。出国日の日にちはいじっておくので、私たちはここにいなかったことになります」
「そういう問題じゃありません」
「え? じゃあ、死んだことにしますか? スタンピード発生時に運悪く迷宮にいて、運悪く」
「隠蔽方法について話してるわけじゃありません! スタンピードを食い止めますよ」
「え~、嫌」
「なんでそこまで頑なに嫌がるんですか?」
「考えてみて、緊急招集ですよ? 報酬がいくらかご存じですか?」
「知りませんよ、そんなこと。お金の問題じゃなくて、これは冒険者の義務です」
「大銅貨1枚です。銅貨10枚分、一食分のお金で、何でこんな危険なことをしないといけないわけ? 割に合わないじゃないですか!」
「いや、でも……」
「でも、何? 私の時給はそんなに安くない!」
「あの、そろそろ、真面目モードになってもらっていいですか? じゃあ、嫌がってる師匠に、一つだけ私の話を良いですか?」
「話?」
「スタンピードの原因です。守るもん君を知ってますよね?」
「馬鹿にしないでください。いくら私でも、あれを忘れるなんて不可能です」
「守るもん君の魔力は魔物を引き寄せるということは知ってますよね?」
「もちろん。身をもって知っています」
「師匠、迷宮であれを何個使いました?」
「数万個は使ってるとおもいますよ?」
「あの魔力に惹かれて他の階層から魔物が押し寄せたらどうなるか分かりますよね?」
私がかつて提唱した。
階層主、野に解き放つ作戦と同じ現象が迷宮規模で……
「面白い推測ですね。推理小説家にでもなったら如何ですか?」
「師匠、気付いてますよね? おそらく、今回のスタンピードの原因。犯人はあなたです。師匠」
「で、そんなことはどうでもいいから、逃げる準備して」
私は身近にある物から、アイテムボックスに入れる。
「いや、師匠、何も感じないんですか?」
「私悪くないじゃないですか。スタンピードは自然発生する物ですよ? もし、私が原因だったとして、確たる証拠はありません。証拠不十分で即釈放だと思います」
「師匠がどうしようもないクズだということを忘れてました。」
私は結局、イラリアに引きずられるように冒険者ギルドに連れてかれた。
私が冒険者ギルドに入ると既に大勢の冒険者がいた。
皆、冒険者の視覚が剥奪されたくないのだろう。
「遅いぞ!」
強そうな見た目をしている冒険者に怒られた。
「すみません」
「あいつの記憶消していいですか?」
「師匠、お願いですから、黙っててください」
自称ベテラン冒険者の長くて涙が出るようなありがたいお話を延々と聞かされたらしい。
私はそのほとんどを目を開けて寝た状態で聞いたので、知らない。
まあ、スタンピードで生き残るなんて言うのは私にとっては朝飯前。
注意なんて不必要なものだ。
その状態で迷宮に入ったので、勇者が冒険者たちを鼓舞しているのを見て、驚愕と共にフライパンを構えてしまった。




