第23話 開発
この階層の統一が完了した。
私はかねてからの計画を実行している。
「師匠、どういうことですか?」
私は金の延べ棒が敷き詰められたベッドから起き上がる。
「何かありましたか?」
「何かなければ、金の延べ棒を敷き詰めないでしょう!」
「そうですか? 少しリッチになったので、贅沢をしているだけですけど」
「そんなに環境破壊は楽しいですか? そんなに鉱山開発が楽しいですか?」
「はい。おいしいです」
「もう! 師匠!! 最近、木が枯れ始めてるって」
「私たち冒険者は迷宮に対して、魔物討伐を除き破壊的な行為は禁じられています。御存知ですね?」
「はい……まさか!」
「この状況は明らかな違反行為です。魔物の支配。鉱山開発。その一切合切を隠ぺいする方法をご存じですか?」
「殺してうやむやに……」
「その通り、文字通り鉱山の件を墓場に持って行ってもらいます」
「そういうことですか、道理でアンデッドの殲滅に師匠がやる気を見せていたわけですね」
「アンデッドは毒入りの水や食料を口にしません。半永久的に使える労働力としては魅力的でも殲滅のコストが高いため、証拠隠滅には適しません。なので絶滅してもらいました」
「ヤバすぎます。しかも、まだ、何かを仕掛けてますね?」
「迷宮の山岳地帯はまだ、下に何層かあります。オークキングさんにはそこを征伐してもらっています。殲滅後、鉱山開発し、貴金属を採掘します。討伐に時間がかかると彼らの体に毒が回りお墓へ近づきます」
「クズ過ぎる」
「あなたは墓穴に埋められるフレンズですか? それとも、私と一緒に墓穴を掘りに行くフレンズですか?」
「……分かりました。師匠についていきます。でも、これ以上はダメです」
「そうですね。まあ、100トンほど金を手に入れられたので良しとしますか」
「私の分け前ありますか?」
「まともアピールをしたのが台無しになっていますよ」
「師匠、銀も掘れましたよね?」
「2000トンほど、これから荒稼ぎできると思うと震えが止まりません」
「それは教団の資産ですか? 個人資産ですか?」
「結果的には同じことになりますよ? 答える意味ありますか?」
「ですよねー」
この階層まで冒険者がたどり着くことは多くない。
無意味に長いうえに、それまでにも十分お金になる魔物はいる。
お金目当てならば、ここまで来る冒険者はいない。
しかし、迷宮踏破者という称号と名誉を求めて迷宮に旅立つ者がいる。
そう言った者たちの内、運悪くこの時期にこの階層に入ったものは命を失うことになる。
「とうとう人殺しにまで手を染めましたか?」
「いえ、ゴブリンやオーク、ウルフの頑張りによって、大概のパーティーは全滅です。連携を学んだ彼らはぽっと出の冒険者では太刀打ち不可能です。とは言え、やりすぎると冒険者ギルドに嗅ぎつかれますから、何個かのパーティーはこうして偽の記憶を入れています」
「放せ!」
5人の冒険者が椅子で拘束されている。
私は次々と殴り気絶させていく。
私は一番左の椅子で寝ている冒険者を起こした。
「おはようございます」
「ここは……」
「ここは迷宮の第12階層です」
「そうだ! 皆は?」
「無事です。今は疲れているようなので寝てもらっています」
「俺は確か、フライパンを持った女が上から降ってきて……」
「違いますよ? ゴブリンの軍団があなたたちを取り囲んだんですよ」
「ゴブリンが? いや、でも」
私は冒険者の肩に手を当て、顔を近づける。
そして、ゆっくりと穏やかな声で囁く。
「もう一度、思い出してみてください。あなたは山の斜面からゴブリンが突撃してきたのを見ていましたね?」
「……はい」
「あなたはそれをパーティーメンバーに伝えようとしたけど、それよりも早くゴブリンが攻撃してきた。そうですね?」
「……はい」
「その後、あなたたちはゴブリンに襲撃されたのにも拘らず無事だった。奇跡ですね。合ってますか?」
「はい……その通りです」
「お疲れのようですね。私が見張っているので、ゆっくりと休んでください」
ガクンと首が崩れ、冒険者は再び眠りについた。
「師匠、悪魔にでもなったら如何ですか?」
「私が悪魔的交渉術を持っていることは認めますが、その言い様は心外です」
「悪魔的性格の間違いでは?」
「フライパン教徒の持つ上位欲求を使用しますよ?」
「やめてください」
私は残りの冒険者にも施術を施し、帰路に就いてもらった。
「いやー、良い事をすると気分がいいですね。あんなに感謝されるなんて。それに食料までもらえました。」
施術が終わり、目が覚めた冒険者たちは私にお礼を言って、食料が尽きそうだからと言って、地上へ戻っていった。
これは余談だが、彼らは迷宮踏破するつもりなので、食料はふんだんと用意していた。
しかし、帰路に就いてもらわないと困るので、魔物が食料を狙って襲撃したことにして、私が魔物が奪ったことになっている食糧を頂くことにした。
「良い事? 人の記憶を改ざんすることが良い事ですか?」
「生きてるって素晴らしいと思いませんか?」
「師匠の基準はおかしいと思います」
「私たちも、そろそろお別れの時ですね」
「でも、まだ生き残った魔物が多くいますよ?」
「最近、彼らに起こった変わったことはありませんでしたか?」
「そう言えば、皆、ケチな師匠からプレゼントを貰ったって聞きました。嬉しそうに少し大きめのポーチを付けていました……、マジですか?」
「守るもん君の大量消費計画です。毒だけで全滅は期間的に厳しいものがあったので、計画変更です。既にカウントダウンが始まってるので急ぎますよ」
私は上の階層に向かうための出入り口へ走った。
「師匠! カウントダウンぐらい急がなくても」
「ある程度確認できないと怖いですから」
背後から爆発音がした。
ゴブリンの困惑する声が聞こえる。
「キャー」
「イラリア、今更怖がっても遅いと思いますよ」
「いや、普通に怖いですから」
「あ、始まりますね」
私は爆発を眺めながら、上の階層へ転移した。




