第18話 一難去って、新たなお友達
各地の偵察を行っているコボルトからの情報を整理する定例会が開かれている。
定例会のメンバーは私、イラリア、ゴブリン、コボルトの族長、資源調達代表のゴブリン、工兵隊長のコボルト、偵察隊長のコボルト、ゴブリン軍の将軍だ。
「オーク共がこちらの同盟を察知したようですな。既に兵を整え、進軍しておりますぞ」
「こちらも、戦闘の準備を整えなくてはなりますまい」
「すみません。顔と声で識別ができないので色で識別できるようにしてくれませんか?」
「師匠、それを本人の前で言いますか?」
「あ、これ染料です」
会議に参加しているゴブリンとコボルトがそれぞれが選んだ色を額に塗り始めた。
「なぜ、一人として文句を言わないのでしょうか?」
「では、続けてください」
「陣地を構築して、防御を提唱します」
工兵隊長が声高に主張する。
将軍は反対意見を出した。
「いえ、ここは打って出るべきです。連中は我々を侮っています。奇襲をすれば、撃滅が可能です」
「籠城もありですな。敵はさほど食料の用意がないと部下から報告が来てます。無理に戦う必要などないでしょう」
偵察隊長も別意見を出す。
「いえ、ここは守るもん君の出番ですね」
「師匠、初めからそのつもりなのに、何で話を聞くみたいな空気を出したんですか?」
「教祖様? 守るもん君とは何でしょうか?」
将軍が不思議そうに言う。
「これのことです」
私は机の上に守るもん君を置く。
「触ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
工兵隊長が手に取り、隅々を見る。
「これはどういう道具なのでしょうか? 不思議な魅力がありますが」
魔力の残り香に惹かれたのか、魅力を感じるらしい。
「それは強い衝撃を与えると爆発します」
工兵部長はぎょっとした顔で守るもん君をそっと机に戻した。
「それは寝ている間に勝手に動くという機能がありますが、爆発しないので大丈夫です」
イラリアが非難する目でこちらを見ている。
「まるで、もともとあった機能のように言うのはやめてください」
「これを敵が通る道に敷き詰め、撤退に追い込みます。もちろん奇襲もセットです。オークとは友好的な関係でありたいので、あまりひどいことはしたくありません」
「地雷で友好アピールって斬新ですね。広告代理業でもやったらどうですか?」
「私に適性はあるかもしれませんが,今は結構です」
「大丈夫です。適性はありません」
会議の結果に従って、工兵が地雷を設置、また、敵部隊を左右で挟む形で伏兵を展開した。
オークの軍勢は偵察部隊の情報通りの行動をした。
オークは攻撃を受けることを察知していないため、縦列行軍を行っていた。
先頭が地雷原に到達し、地雷が爆発したことにより、行軍が停止。
そこに左右からの矢の雨により、混乱状態になり、集団としての能力は完全に消失した。
その後は最後まで戦おうとその場に踏みとどまったオークを包囲して殲滅。
結果、多大なる犠牲を出して、散り散りになって逃げるというオークにとっては散々足る結果となった。
ゴブリン、コボルト連合の初勝利かつオーク相手に圧勝ということもあり、お祭り状態になっていた。
「師匠は宴会に参加しないんですか?」
「魔物の宴会に参加して楽しいと思う?」
「もう少し打ち解けたらいいと思うんですけど」
「私としてはオークも同盟に迎え入れるつもりだから、今後が心配です」
「確かに、今回のことを根に持たれると同盟は難しくなりますからね」
「それに、ハーピーとウルフも傘下に入れられてないのにここでオークと戦端を開いてしまったことが痛いですね」
「師匠が真面目に話していると寝ているんじゃないかって疑う自分がいます」
「寝た方がよかったですか?」
「やめてください」
大勝利から2日後、偵察部隊がウルフの一団に襲撃された。
大規模な群れだったことから、大物の可能性がある。
そのため、詳しい調査をした結果、ウルフの王を発見した。
ウルフは群れ単位で行動している。
そして、定住をすることはないが、すべてのウルフを統べる王だけはそれほど移動はしない。
傘下のウルフからの上納を受け取るためだ。
ウルフの王は最強でなくてはならない。
つまり、ウルフを支配するには王と一騎打ちで勝てばいい。
勝てば、種の支配者として認められ、私はウルフを統べる女王として君臨することになる。
ということで、私はウルフの王と対峙している。
「ガルルルル」
「グルルルル」
「何で師匠までウルフ流の威嚇をするんですか?」
「イラリア、空気を読みなさい」
「師匠にだけは言われたくないです」
私とウルフの王を取り囲むウルフたちが遠吠えをする。
開戦の合図だ。
ウルフの王が飛び込んできた。
私はそれを避けつつ、横腹をフライパンで流れるように、かつ全力で殴る。
ウルフの王は見事な放物線を描いて、森のどこかに消えた。
王を目で追うウルフたちの首の動きが揃っていて面白かった。
「雑魚い」
「師匠、人語が理解できなくても悪意は伝わりますよ」
こうして、史上まれにみる早さで王の座が入れ替わることになった。
一応、ウルフの王を探索したが、発見できなかった……と公式では伝えてあるが、私が誰よりも早く発見して、しっかりと息の根を止めておいた。
何故か弟子にはこの動きがバレてしまった。
おかしい。
完全犯罪になるはずだったのに、私は手に付着した血液をぬぐいながら、失敗の原因を考えていた。
あとはハーピーを手中に収めれば、第一段階は達成したことになる。




